モエナ誕生


1999年3月29日 13時58分

この日この時間にボクとボクのヨメのコドモ、モエナ(萌菜)が生まれた。 誕生までの経緯と誕生直後のハハの気持ちっていうのは、ボクのヨメが書いた いのちの兆しっていう とてもよく出来たページ(自画自賛だけどいいね)を見てもらえば良く分かると思う。
モエナが生まれた瞬間っていうのを、残念ながらボクは知らない。 モエナが生まれた病院は、あまり「立会い出産」っていうのに積極的ではなくて、 ボク自身は出来ることなら立ち会って見届けたいなっていう気持ちが嘘ではなくあったんだけれど、 ヨメはあまり希望していなかったし、何が何でもっていうほど強く希望していた訳ではなかった (というか、本人が見られたくないって言うんだから強制することはできないね)ので、 分娩室から少し離れたところのソファーに所在無げに座ってボーっとしていた。
陣痛室っていう、なんかちょっと嫌な感じの名前の部屋にいる時は、ずっとそばにいられたんだけれど、 分娩室へはヨメが一人で行って、ボクは廊下に追い出された。 それから2時間くらいが経過して、その朝に生まれた他の子の顔でも見てみようと思って、 新生児が並ぶガラス張りの部屋を覗いて見た。 さっきまで真中に一人でいたその子はちょっと脇によけていて、真中にはもう一人、別の子が増えていた。 名札を見たら「ニシザワヨウコ」って書いてあった。ちょっとドキドキして、 小さく「うわ」って呟いた。 それがボクのモエナとの出会い。その時はまだ名前はついていなかったけれどね。 それが14時少し過ぎ。
暫く様子を見ていて、自分が感じているなんとも言葉では表現しにくい妙な感覚を感じながら、 「生まれたんだな、女の子だな、小さいな」なんて当たり前のことを呟いている (声に出てたと思う)うちに、ヨメの様子が少し心配になって来た。 ふと顔を上げると、キヨカワさんっていう年配の助産婦さんが、 こっちを見てニコニコしながら「生まれたね。おかあさんも大丈夫、元気にしてる。」 って歩き去りながら何気なくついでっぽく教えてくれた。 その時の気持ちは、「そっか。無事か。終わったか。」っていう比較的あっさりした感覚だった。 待ってる間はずっとたくさんの不安と心配、それに少しの退屈が交代に顔を出していて、 正直なところ「待ち遠しい」って感じはほとんどなかったな。
テレビとかだと「生まれましたよ、お母さん似の元気な○の子ですよ。」とかなんとか、 廊下をうろうろしてるダンナに向かって嬉しそうに報告する看護婦さんの画を見るけれど、 あんなのは実際にはないんだなぁなってなんて考えてた。 早くヨメが出てこないかな、顔がみたいなって思いながらやっぱり同じソファーに座ったり、 コドモの顔をみたりしながら待ってたけど、随分長いこと出てこなかった。 ソファーに座ってるくらいならコドモの顔をずっと見てろよって意見もあるかもしれないけれど、 決してコドモに興味がなかったわけじゃなくって、なんかほとんど苦労してないボクが、 きっと楽ではなかっただろうヨメに先駆けて見てるのが、なんとなく申し訳ないような気がして、 それで一人でソファーに座ってた。
だけど、キヨカワさんに「元気だよ」って言われて安心したこともあって、 だんだんだんだん嬉しくなってきて、やっぱり少しニヤニヤしてたと思うけれど。
1999.6.17