陣痛室体験

陣痛室の様子

案内された陣痛室は、以前に母親教室へ参加したときに見学していたので様子はわかっていた。 しかし、その時は3つあるベッドは全て空いていたが、今日は1つしか空いていなかった。 閉められたピンクの仕切りカーテンの隙間からは、 陣痛に耐えている出産待ちの妊婦さんがベッドに横たわっているのがチラッと見えた。
お腹を出しベッドへ横たわると、そのお腹の大きさに看護婦さんは驚いていた。 「子供が大きいのかしら?それとも脂肪なのかしら?」と言われ、私は 「子供が大きいとか言われてないんで、たぶん脂肪です。太り過ぎてしまったんです。」 と素直に自分の非を認めた。
看護婦さんが枕元へ持ってきた機械は分娩監視装置(病院関係者はモニターと言っていた)で、 機械とチューブでつながっているチャンピオンベルトのようなものをお腹に巻き付けた。 1本は陣痛を測定、もう1本は胎児の心音を測定するもので、 幅20センチほどの帯状の紙にそれぞれが波形で印字され、出力されるようになっていた。 「このまま30分間心音を図りますから、具合が悪くなったらナースコールしてください。」 とスイッチを渡されてカーテンが閉められると一人になり、 機械から印字される波形を眺め、胎児の心音表示のデジタル画面を見ていたが、 大した変化があるはずもなくすぐに退屈になった。
そうなると気になるのが隣2つのベッドにいる出産間際の妊婦さんの様子。
一番遠いベッドにいる人はお母さんが付き添っていた。 陣痛室内にあるトイレへ何回も行っては、お母さんに痛みを訴えていた。 お母さんは自分も経験しているせいか冷静に 「まだまだ、これくらいの痛がりようじゃあ、産まれないわよ。もっともっと痛くならないと、 子供なんか出てこないんだから。」と手厳しいご意見だった。 お母さんは昔に終わってしまったから他人事だけど、 当事者の痛がりようは、カーテン越しに聞いている私ですら、涙が出そうなほど可哀想であった。
隣のベッドの人はご主人が付き添っていた。話の様子から初産で若い夫婦という感じだった。 入院したばかりで、それほど痛みもないらしく、初出産を迎える奥さんはかなりのハイテンションで、 付き添いのご主人にしゃべりっぱなしだった。 家から持参してきたジュース、お菓子、雑誌などのお披露目大会をしながら、軽食を取っている様子。 そうかと思えばナースコールをし、駆け付けた看護婦さんに「だんだんお腹が悲しい痛みになってきたけど、 ウ○コしたくなってきたけど、ウ○コしてもいいですかぁ〜。 今行かないと出産中に出ちゃいそうなんですけど…」とあっけらかんと質問をしていた。 「出産の時にウ○コが出ちゃうのは仕方ないのよ。それくらいいきまなくちゃいけないから、 そんなことは気にしなくてもいいのよ。ただ、行きたいならばどうぞ。」と、 看護婦さんはその質問に驚く様子もなく答えていた。
「え?出産中に、ウ○コとかしちゃってもいいわけ?しちゃうわけ?」 と私は新事実に愕然としていた。
その後、その人はだんだんと痛みを訴えるようになり口数も減り、 ご主人に腰をマッサージしてもらっていた。その様子を見ていた看護婦さんが「あらあら、 今からそんなにマッサージしてもらって甘えていると、出産までは半日近くかかりそうだから、 ご主人の方が疲れちゃうわよ。」と冷やかされていた。
「え?初産だと半日も苦しんでないといけないの?」と私は新事実に耳を疑った。
今度は、マッサージをしていたご主人の方が腰の痛みを訴え始めた。 「○○くんは優しいから、痛みが移っちゃうんだよね〜。いっつもそうじゃん。」と、 奥さんはケラケラ笑い、心配する様子もなく、ご主人をからかっていた。 その夫婦の力関係を垣間見たような気がする。
周囲の状況が何となく分かり、ほどよい空調、規則正しいリズムの児心音、 室内のFM放送からは宇多田ヒカルの「Automatic」がかかっていて、私は気づかないうちに爆睡していた。 (いつでもどこでもすぐに眠れるマイペースな体質) 看護婦さんの「お疲れ様でした。終了ですよ。待合室に戻ってください。」という声に起こされ、 ねぼけたままフラフラと歩き待合室へと戻った。

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