RY66Aスタック(スタックケーブル)

次はスタックケーブルの話です。今までまじめに考えたことがなかったので、何冊かの本を
引っぱり出して読んでみました。当たり前のことですが、このケーブルの役割は一本あたり
50Ωのインピーダンスを持ったアンテナを2本パラレルに繋いで、それでもやっぱり50Ω
になるようにインピーダンス変換をするのと、2本のアンテナに50:50で電力配分すること
です。受信の場合も同様。頭を整理するためにまとめると

スタックケーブルの役割
@インピーダンス50Ωのアンテナ2本を並列接 → 50Ω に変換
A送信電力を半分ずつ2本のアンテナに供給
B2本のアンテナからの受信電力を合成し受信機へ送る

こんなとこかな。

まず、@のインピーダンスについて、
色んなやり方があるみたいですが、一番よく使われているのは「Qマッチ」という方法だそうな
受信系で表現すると

アンテナ1(50Ω) −−Qマッチ−−> 100Ω 
                               > 並列接続(50Ω) → 受信機
アンテナ2(50Ω) −−Qマッチ−−> 100Ω

とこうなる、送信系は同じ構成で信号の流れが逆になるだけ。
A、Bの電力配分は100Ωのバランスで決まるので、2本のアンテナの特性とQマッチの
バランスをよくしてやれば良いみたいです。


●Qマッチ
信号源インピーダンスと異なる特性インピーダンスの同軸ケーブルを使ってインピーダンス
変換をおこなう方法のようです(ものの本によると)。スタックケーブルでは一般的に次のような
構成でやるようです。

アンテナ50Ω(Zi) −− 75Ω(Zq)同軸 1/4λの奇数倍 −−> 100Ω(Zo) 

入出力インピーダンスの関係は、これもものの本によると

  Zo = Zq^2 / Zi

で計算できる。 この計算式にあてはめてみると

  Zo = 75^2 / 50 = 112.5Ω 

となって 100Ωから少しはずれますが問題ないでしょう。
ここで、1/4λの奇数倍というのが味噌で偶数倍とか中途半端な値にするととんでも無いことに
なるので要注意です。
とはいうものの、この1/4λというのがくせ者で、このλ(波長)は同軸の中の話で、一般に誘電体
の中を高周波信号が伝わるときは、その伝搬スピードが空気中(真空中)のそれとは異なります。

同軸には色んな種類があって、内部絶縁体の誘電率によってそれぞれ伝搬速度が異なります。
同軸を伝わる速度は普通、真空中より遅くなるので波長は短くなります。同軸ケーブルの規格には
「短縮率」という表現ででている。 はず。

教科書の受け売り説明をしててもしかたないので実践に移ります。

  (余談) Qマッチの「Q」は「Quarter Wave Transformes」のQだそうです。
         「改訂版キュビカル・クワッド」JA1AEA 鈴木氏著 より

  (余談2) 1/4λの同軸にわざと定在波をたててインピーダンス変換するのだから
        平衡不平衡変換がうまく行ってないと、同軸外皮に電流が流れてスタック
        ケーブルの配置や周辺との干渉で特性が変化するように思うんだけど
        実際のところどうなんでしょ。実用上の問題は恐らくないものと思い進めます。
  


●実際の短縮率は?

 実際に物を作るには、部品集めから始まります、カタログにある品物がすぐに手に入れば
いいのですが、これがなかなか難しいのと値段もバカにならなかったりする。ここがアマチュアの
辛いところで、車で30分以内のホームセンターで全て揃えようと思ってしまうのです。
必然的に部品の選択肢は限られる。使える部品にマッチした物作りをしないといけない。
知恵を絞る。賢くなる。とアマチュアの辛いところが功を奏して良い方向に向います。
話がそれました。戻します。

要は、75Ωの同軸って最近パーツ屋さんに行ってもあまり置いてないのです。日本橋まで行けば
問題なく手に入るでしょうけど、わざわざそれのためにポンバシまで行く気にはなれない。
よって、今回はTV受信用の5CFV(DXアンテナ)を使いました。(ホームセンターで1700円
20m巻)さてこの同軸ケーブルの波長短縮率は? webで調べてもでてこない。低損失発砲ウ
レタンタイプなので、80〜88%みたいやけど確信がない。 しゃーないから波長短縮率を実測
しましょ。ということで、次のような実験回路で実測しました。

  アンテナアナライザ ===5CFV===100Ω
 (BR-200 クラニシ)

同軸5CFVは1/4λ(真空中で計算)から少しづつ切っていって、アンテナアナライザでSWRと
インピーダンスを計ります。(このインピーダンスは|Z|のみで、R+jXは計れません)
同軸の長さが丁度、電気長で1/4λになったときSWRが最良になるはずですから、その時の
長さを元の長さで割ると、短縮率が求まるという訳です。

結果を示します。

条件: 周波数50.2MHz  1/4λ(真空中)=1494mm
     同軸ケーブル 5CFV(DXアンテナ)

長さ [mm]
短縮率 [%]
SWR
インピーダンス|Z| [Ω]
備考
1490
99.7
1.15
60

1450
97.1
1.10
60

1400
93.7
1.05
60

1350
90.4
1.05
59

1310
87.7
1.03
59

1260
84.3
1.03
58
ここいらあたりが良さそう。
1210
81.0
1.03
58

1130
75.6
1.05
60



                  測定の様子 →

やはりちゃんとR+jXのRとXを計りたいもん
ですが、測定器がないので諦めました。
まじめなアマチュアなら測定器まで作ってしまう
んでしょうね、きっと。私は不真面目なので
ここでやめです。出来合のものを買おう、
貯金が貯まったら。。。。

上の結果から短縮率は85%程度という結論
にしました。でもこの結果からみると多少ずれ
ても大きな問題にはならないだろうというのが
予測できます。

 ・・・・・という事が分かったのが、この測定の
    一番の収穫です。hi
 




●いよいよスタックケーブルの製作

スタックケーブルに必要な長さを決める必要があります。上下のアンテナの間隔は、先のビームパターンから
3.87mと決めました、これに給電点からマストまでの距離を足して、ケーブルに必要な長さは一本あたり
4.47m以上となるので、1/4λの奇数倍がこの長さ以上になる値を求めます。

1260mm(短縮率84.3%の1/4λ) x 5 = 6300mm 

となって、この長さに決めました。
あとは、同軸を切って、コネクタを付けるだけです。

写真は完成後、再度特性を確認しているところ
です。アンテナの代わりに50Ωのダミー抵抗を
付けて合成点でのSWRを測定すると1.1でした
まぁ、こんなもんでしょ。
測定周波数は50.2MHzです。
ちなみにSWRが最良となる周波数は48〜49
MHzでした。少しずれがあるみたいです。
ここでR、X成分が分かれば、同軸が長いのか
短いのかが分かるのですがしかたありません。


ジョイント部の作りです。
なんかパットしませんが、機械工作が面倒だった
もので・・・・・(言い訳)

本格的にやる場合はもう少し工夫したほうが
良さそうです。



実践状況はこちら




スタックやってみて・・・・・


今回の移動は、コンディションに恵まれず、さっぱりの結果でした。
この連休中、夜中にScが開けたりしましたが日中は全国的に今一だった模様。
スタックそのものは、やはり設営にそれなりの気合いが必要で、仮に一人でやろうと
すると、、、不可能ではないかも、でも風が強いとリスクを伴いますね。冒険は避けた方が
無難と思います。今回、シングルとスタックの聞き比べはできませんでしたので
その有意差については何とも言えませんが、やはり労力が大きいのは確かでした。

シングルとスタックの聞き比べがきちんとできる機会があれば、また報告したいと思います。

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'2002-05-02 K.Ohmae/JF3IPR