ちょこっと行って来る温泉


    No.10-1   あたご山温泉  



     友人に誘われて新潟の小千谷へ四尺玉の花火を見に行く事になった。
    じゃぁ序でに道々温泉も拾いつつ、会津の蕎麦なんかも堪能できたらとても良かんべな、と言う事で、数日間地図と温泉ガイドを眺めて道筋を決めてみた。
    そんな訳で、小千谷市に最短・最速でいくつもりなら、会津坂下まで高速で行って国道252号の一本勝負が一番なのだが、それではせっかくの旅に味が出ない、と私は思った。
    結果的にはこれは間違いだったかもしれないのだが、ちゃんと行かないから旅は楽しいのであって、それで良いのです・・・まあ、人に由りけり、でしょうが。
    私は木賊温泉(とくさ)に是非とも入りたいと思っていたので、会津田島から檜枝岐へ向かう道を選んだ。
    高速は使いたく無いのだが、国道で行くには距離が有りすぎるし、南魚沼市字山奥の友人宅に午後4時着を指定されていたので、仕方なしに那須塩原まで乗った。
    東京から近いと言う事は人が多いと言う事なんですね・・・国道に出てすぐの「道の駅しおばら」は月曜日とは思えない程に混んでいました・・・田舎者には息苦しい。
    国道をつらつらと走っておりますと、突然「天然岩風呂」と大書された看板が目に飛び込んできまして、・・・おおっとぉ、これはラッキー、家を出てから3時間だ、一休みにちょうど良いと言う事で案内板に従って駐車場へ。
    バカでかい駐車場を持つドライブイン・観光土産屋の敷地の隅っこに、こじんまりと併設されていたのが「あたご山温泉」でした。
    土産物売り場の建物と温泉の場所は離れていて、最初に土産物屋で受付をして風呂へ向かうのです。
    免許証のコピーをとられ、500円なりを支払って、温泉入り口の鍵を借りて湯へ・・・帰りにまた鍵を返しに来なければならないのは面倒です。

     さて、温泉は・・・まあ、なかなか良く出来ていますし、泉質もまずまずですが、ここへ至までの手順がちょっとナニで、まあ、アレですが、湯は悪くは有りません。
    pH9.1と言うだけあってお湯はヌルヌルで、石けんはまったく泡立ちません・・・美肌系の湯と言うやつです。
    ナトリウムを含むと書かれていた通りに、舐めると十分な塩気を感じますが、雑味として渋味を少し感じました・・・この先の塩原温泉って、塩味なのかな?
    源泉の能書きに、加水・加温と有りますが、41度の源泉に加水の必要は無いはずなので湧出量は少ないのでしょう。

    あたご山温泉入り口

    あたご山温泉岩風呂・・・ここの浴槽はこれだけです


     まあ、観光地で片手間にやっているにしてはまずまず、それなりですが、しかし、ナニがアレかな、と言うのは仕方が無いかと・・・この温泉は、景気の良い時期にここの社長あたりが自分用に作って、今は小遣い稼ぎに一般に開放しているんじゃないかなぁ?
    先を急ぎますので、いつまでも感慨や憤慨に浸っている訳には行きませんので、思い切り忘れた事にして、会津田島へと進みます。
    途中の塩原温泉を通りかかると「温泉祭り」の最中で、街中を抜けられず迂回したのですが、ちょっと外れた道には、強者どもが夢の跡か、閉めてある施設も目立ちました・・・バブルの後遺症って、末端程痛々しいです。
    福島県に入ってから、かぜん田舎臭さが増してきまして、とても良い感じになってきました。

     田島の山道にぽつんと、蕎屋ののぼり旗が一本ありまして、これが何だか私の蕎心をくすぐった訳です。
    うーん・・・多くは望めないだろうが、そば粉は期待出来るかも知れない・・・本物の蕎は香りが命ですから・・・ちょうど昼飯時だし、この先何も無さそうだし。
    薄暗い店に入って眺めると・・・いや、眺める程の広さは有りませんで、客は私一人。
    腰を下ろして品書きを見ると、天ぷらがある事になっているが・・・さて、と訪ねてみれば、案の定天ぷらと鰊は無いとの返事。
    やっぱりなぁ・・・しかし、それは元から覚悟の事で、狙いの本命は茸とおろしだから問題ではない。
    私は「んじゃぁ、茸はなんだべねぇ?」と問うと、「お客さん塩漬け食べられますか?あと、茗荷は?」との答えが帰ってきました。
    「ああ、塩漬けで良いから雑茸に辛い大根で喰わしてくんねぇ?」と、私。
    「あらぁ、お客さんは東北でしょうけど、何所の方ですかぁ?」と。 「ワダスすかぁ?シェンデェーしゃぁ・・・分がりすかぁ?」・・・ぎゃはははぁ。
    「じゃぁ、茸おろしでよろしいですかねぇ?」・・・「はいはい」・・・店に置いてあった南会津の観光地図を眺めていると聞こえて来た、蕎を切る包丁の音が楽しかった。
    蕎は・・・美味かった・・・思った通り、香りのある蕎だった・・・天ぷらなんて無用・・・茸とおろしが一番でした。
    そして、蕎麦屋を後にして10分後位にコンビニ風の店に出会った・・・やっぱし少し腹に余裕が有りすぎるのでおにぎりを買って喰った・・・妙に美味かった。

    蕎屋の店内・・・和む雰囲気でしょう?

    近くの蕎畑です。


     国道400号に入って目指したのは「会津高原たかつえ温泉」でした。
    たかつえスキー場は名前だけは知っていたが、へぇーーーーこんな山奥まで、関東の人の運転で来られるもんだろうか?と言う程山の中だった。
    もっとも道路は広いので除雪が良ければスタッドレスタイヤで平気だと思うが、この辺りの雪は本気で降り出すと半端では無い・・・客は来るんだろうかねぇ?
    シーズンオフのスキー場は寂しい・・・どこも一緒で、まさかと思う程寂しいものです。
    私は人っ子一人居ない道を登ってスキー場の駐車場の一角の「しらかばの湯」に辿り着いた・・・バカーナビが案内してくれた・・・凄いぞお前、今日はドーしたんだ、と。
    で、結論から行くと、温泉はお休みで入れませんでした・・・まあ、開けておくだけ無駄なのは良く分かりますが、私の様な物好きも居ますんで、インターネットで5月〜10月は無休と言うのは訂正しておいてもらえれば、と思います・・・。

    しらかばの湯の入り口・・・準備中ですって


    No.10-2・3   湯の花温泉  



     あー、時間そんした・・・まあ、これも旅の味ですから・・・。
    次に向かったのは「湯の花温泉」でした・・・4カ所の共同浴場があるとガイドブックには記されていますが、私は時間の関係で2カ所しか入れませんでした。
    湯の花温泉共同浴場は管理人が居ませんので、村のあちこちで売っている入浴券200円なりを先に買い求めてから湯に向かわなければなりません。
    私は最初に湯端の湯に直接行って張り紙を見て近くの雑貨店まで戻り入浴券を買い求めてきました。
    その折、風呂の前に駐車禁止と書かれていたので、何所へ停めたものかと聞いてみたら「今の時間は誰も居ないので停めて良い」と・・・なんとまあ、有り難い。

    建物の外観は新しい雰囲気なのに、風呂は、古いです・・・由緒あるとか、歴史を感じると言うよりも、正直に、古くてボロです・・・しかし、掃除は行き届いて清潔です。
    お湯は素晴らしいの一言です・・・単純泉で無色透明、無味無臭ですが、100パーセント掛け流しで、一切手を加えていない温泉が流れ続けているのです。
    これは温泉としてはとても大切な事で、お湯が新鮮なので湯のあたりが違います・・・なんちゃって・・・解説書にそのように書いてありましたので・・・。
    いやいや、掛け流し・・・要するに自噴して来るお湯を湯船に垂れ流し続けているだけの温泉が最上の温泉で、その湯量が多い程鮮度は良く保たれる訳です。
    あまり熱く無いお湯は、ゆっくりと、のんびりと浸かりたいなと思う湯で有りまして、近くに沢山の民宿や湯治場がありますので、もう一度訪れたい湯でした。

    外観はなかなか雰囲気のある建物です

    建物は建て替えられたけれど、湯船は昔のままなのでしょう


    さて、一つの風呂には長くても10分も入っていません・・・脱衣から全部一式で15分もあれば十分です。
    さっそく次の弘法の湯へ移動です・・・名前を見ただけでお湯の謂れは分かりますね・・・なんであれ、弘法大師が入ったのでしょうね、きっと。
    売店の説明では、200円の入浴券で4カ所入って良いと私は解釈したのですが・・・「何所へ入っても良いですから・・・」と言われたので・・・。
    まあ、入っちまったものは仕方が無いので、次回から注意します・・・と、言う事で、弘法の湯は無賃入浴かもしれません。
    と、言うのは、先ほどの湯端の湯には現金を入れる箱が有ったのですが、入浴券を入れる箱は有りませんでした。
    しかし、弘法の湯では真っ正面の目立つ所に券の回収箱が置かれていたので、一カ所ごとに券は必要なのか?、それとも、ここが最終の回収箱設置点なのか?、と。
    ここも当然源泉掛け流し、何も加えず、何も引かず・・・ウイスキーの宣伝みたいなお湯でした。
    弘法の湯のほうが大きくて、こちらは洗い場にシャワーが設置されており、地域住民のお風呂はこちらなのかもしれません。

    最初神社かな、と思った程に立派な建物でした。

    源泉掛け流しを誇る張り紙

    湯船に村の年寄りが入っていたので脱衣場から撮りました。


    No.10-4   木賊温泉   



     さてさて、いやいや、もう既に結構な時間ですよ・・・この先はどれほど時間がかかるのか、全く把握していません・・・まあ、走ってれば着くわけだし・・・。
    と、言う事で次に目指したのは、今回の温泉巡りのメインイベント「木賊温泉」でした。
    地図ではすぐそこですが、実際に走ってみると湯の花温泉から、40分ほど掛かりました。
    そして、そしてぇ・・・本日一番の大事件勃発です・・・・・・なんとぉー、9月1日から、営業時間を午後の3時からにしましたと。
    ガイドブックに依れば、年中無休で24時間入浴可となっているのですが、なんともかんとも、ありゃりゃりゃりゃぁー、がっかり、です。
    勝手に解釈すると、午後3時〜と言う時間決めは、通りすがりの余所者は入れたく無い、とも取れる訳ですが、真相は分かりませぬが。
    川床から湧き上がる温泉なんですとぉ・・・ひょっとして、自噴だったりしたら感動ものだなぁ、と股間をふくらませ・・・いや、期待を膨らませて行ったのですが・・・
    木賊温泉にはもう一軒、共同浴場が有るらしいのだが、探している暇はない・・・山深い西の空は既に秋の夕暮れの気配がそこはかと無く・・・。

    木賊の温泉 広瀬の湯・・・外観の写真だけって、寂しいねぇ


     本来は次に向かう予定は「小豆温泉窓明の湯」だったのだが、思いの外時間を食っており、入湯料が850円と高額でもあることから、よっしゃぁ、立派な風呂屋はパスだぁー、と言う事で先を急ぎました。
    檜枝岐に辿り着くまでにも、ガイドブックには載っていない小さな温泉の看板が私を誘っているのですが、可愛そうな事に時間がありません。
    本来であれば、ガイドブックに載る立派な、既に名を成した温泉など避けて、これらの路傍の湯に浸ってこそ温泉巡りの王道だと・・・それはそうなのですが、時間が無い。

    No.10-5   檜枝岐温泉   



     檜枝岐村は、私の知っている昔の山里のイメージは無く、日本中の、田舎を売り物にする観光地の匂いが立ちこめる・・・仙台近辺で言えば、松島みたいな雰囲気が漂っていました・・・要するに俗っぽい、と。
    それでも、ひよっとすると本日最後の温泉になるかもしれないので、ここは一つ、心穏やかにお湯を楽しまなくてはならないと気持ちを切り替えて檜枝岐温泉駒の湯へ。
    地元の人が建てる案内の看板と言うのは、大抵は不親切だと思う・・・いやいや、看板を立ててくれるのだから、基本的には親切心からなのは分かっている。
    しかし、だ・・・地元民は分かっている事を看板にするので、分からない人には相当に親切丁寧に記さないと分からない、と言う事が分かっていない。
    ましてや、村を貫く国道でさえ路地に毛のはえた程度の道なのだから、交差する脇道は路地そのもので、看板はでかく、大きく、目立つ様に書いてもらわなければ意味をなさない。
    しかし、ナニです・・・そこまでやってやる義理も謂れもねぇょ、と、言われればそれまでの事ですが・・・。
    そんな訳で、国道からちょっと入った所にある温泉なのですが、探すのに少し手間取りました・・・案内が村役場の隣となっていたので役場に入って行った。
    で、村役場前に佇んでいたおっさんに訪ねたのだったが、投げやりな説明はとても有り難かった訳で・・・ナンダこの、と・・・これで私の中の檜枝岐は思い出も含めて消滅だな。

     さて、気をとり直して役場の隣の檜枝岐温泉 駒の湯へ・・・目の前だが一度国道へでないと行けないところが憎い。
    駒の湯は、駐車場もまずまず広く、建物の外観も立派で、中も広々・・・うーん、申し分無しのいわゆる、銭湯型の温泉です。
    木造でぬくもりを演出し、藍染めの暖簾を下げ、湯船は、大きな内風呂と、ソレより幾分小さめの露天風呂を外に構える・・・定番型です。
    木戸銭の500円なりを支払って脱衣場へ・・・おおっ、清潔ですな、開け放した窓からの風と景色は満点の心地良さ・・・良いんじゃない?
    そして、風呂場は・・・広い・・・こりゃぁ、立派だが、そのまんま銭湯だ・・・清潔で気持ち良いが、どこにでもある健康センターとの違いは、無い。
    もっとも、私が好む、求めるような辺鄙な山奥の秘湯の雰囲気を一般的にも好まれるのか?と言うと、それも多分無いだろう。
    と、言う事で、私にとっては全く魅力を感じない、普通の温泉が、大多数の人の標準になっているのだろうな、と、言う事も理解しつつ、湯に沈む。
    pH8.6の温泉は、見事に、立派なアルカリ泉で、毎分280リットルのたっぷりの湧出量は源泉掛け流し、ではなく引き湯だったが、あたりの柔らかい、しっとりとした湯が身体に馴染む。
    pHの割には不思議とぬるぬる感のあまりない、無色透明、無味無臭のお湯は、正直に言うと・・・これっ、アルカリ温泉?と言う程に、さらさら系だった。
    ナンだカンだと檜枝岐に文句を言いながら辿り着いた駒の湯ですが、引き湯ではるが、掛け流しのだだっ広い湯船に我一人、目を閉じて湯に浸れば、幸せ至極、いずれは極楽、と・・・。


    檜枝岐温泉 駒の湯 外観

    檜枝岐温泉 内風呂 タコ坊主付き

    檜枝岐温泉 岩風呂


     いやはや、時間にせかされると言うのは嫌なものだ・・・しかも、大抵の場合、遅れを取り戻す事はあり得ないで、余計に詰まって来る。
    500円払った駒の湯の滞在時間は、脱衣から全てで15分程度のものでしょうか?・・・温泉巡りの日銭、入湯料も馬鹿になりませぬ。
    さて、次の予定は燧の湯だったのだが・・・と、言うよりもこちらが本命だったのだが、道すがら、駒の湯が先になってしまい、そして時間が無い。
    私のバカーナビによると、目的地の南魚沼市までの所要時間は、ここから4時間30分と出ている。
    まさかと思って地図を開くと、グニャグニャの山道の130キロほど彼方に目指す南魚沼の友人宅は在る事になっている・・・ホントーにそんなに遠いのか?と疑うが・・・。
    ただ今現在ほぼ3時・・・約束の4時着を果たすのには、この車が空を飛ぶしか無い訳だ。
    たぶん、勢いを付けて崖から飛べば少しは飛ぶと思うが、魚沼までは飛ばないだろう・・・私だけが空高く飛ぶ事にはなると思うが・・・。
    いやいや、馬鹿言って場合じゃぁ無い・・・途中にも渋沢温泉とか、栃尾又温泉なんかも在り、又来ると言ってもなぁ、又は無いだろうから入りたいなぁ、でも先を急がなければ、と、激しく葛藤しつつ、とんでもない山道を、とりあえず奥只見湖を目指して国道352号を急いだのだった。
    私もずいぶん色々な道を走りましたが、舗装道路と言う事で、難易度は下がりますが、曲がりくねり度と、距離の長さでは、過去一番の山岳道路でした・・・下手糞は落ちるかも、ホントに。

    で、結局、本気で飛ばして、南魚沼市・大字山奥・字川沿い・小字谷底の友人宅に辿り着いたのは、陽もとっぷりと暮れた午後6時でした、と。

    本日の走行距離 460キロでした・・・リッター12キロも走ったのですよ、偉いねぇ。

         以上・・・おそまつでした・・・偏見と独断で書いてますから、まあ、インチキ臭いです・・・。


       この話 完・・・明日へ続く。


    まあ、ネタは新鮮ですが信憑性は・・・?


    行った温泉について 質問を承っております


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