ちょこっと行って来る温泉


    No.15ー1  乳頭山 一本松の湯  



     乳頭山に登る途中に「野湯」があるのを登山のガイドブックで知り、どうしても入ってみたくなり、行く事に決めた。
    とりあえず、山にも登る予定で出掛けてはいたが、それは大きな副産物であって、第一の目的は、何が無くても江戸ムラサキ的に「野湯」にはいる事であった。
    秘湯の温泉本を読むと、野湯は至る所に有る事になっているが、実際に入れる、私がイメージするようなものは意外と少ない。
    もっとも、湯沢の山奥の大湯滝のような超豪快な野湯も有るから、一概には言えないが、本に載るような有名どころで、足の便が良い所は、それなりに人も多く気軽に入れる雰囲気ではない事が多い。
    さて、今回の一本松温泉は、登山道の途中で、車を降りてから40〜50分は山道を登らなければならないと言う事で、サンダル履きの観光客ではちょっと無理な場所だ。
    登山者が覗いて行く事が有っても、まあ、それ程大勢と言う事にはならないだろうから、たぶん、気持ち良く「野湯」に浸れるだろうと確信して行った。

       乳頭温泉郷のドンズマリ・・・もっとも、乳頭温泉の各温泉宿は、それぞれが独立して離れており、ほとんどの宿はドンズマリ的存在なのだが。
    その中でも黒湯は、その先の道は乳頭山へ続く登山道で、車では正真正銘のドンズマリ、であった。
    で、黒湯の駐車場に車を停めさせて頂いて、乳頭山へ登った帰り道に待望の一本松の「野湯」に浸かった。

     
    一本松温泉のロケーション

    源泉がそこら中に湧いている


     一本松沢が脇に流れ、沢沿いの傾斜地から湧き出しているお湯を窪地に貯め、周囲に石を積んで湯船がこしらえてある。
    この場所だけ妙に開けている所から、かつてはここに湯治場の建物などが有ったのかも知れない事をうかがわせる。
    湯の色は乳白色で、落ち葉などが沈んでいるのがなんとなく透視で見えて、正直に言えば、ちょっと気持ち悪そうだった。
    湯に手を入れてみるとかなり熱い。
    誰が手入れをしているものか、湯船には沢からビニールパイプで水が引き込まれている・・・しかし、それでも熱すぎる。
    しかし、我慢出来なくも無い、ぎりぎりの温度だと読み、湯に入る事にし、ちょっと辺りを窺って衣服を脱いだ。
    握りふんどしで湯船の前に腰掛け、マグカップで下湯を使い、そろりと右足を湯に沈めてみる。
    ビリビリと痺れる程の熱さだが、こうなったら行くしか無い・・・脳裏には最悪の場合に沢に転がり込む道筋が描かれていた。
    足先が湯船の底に届くと、にゅるりとした泥の感覚と、堅いもの、多分枯れ葉であろうと思われる物が指先に触れた。
    何となく不気味な感触で、一瞬気持ちが引いてしまうが、それでは何しに来たのか分らなくなってしまう。
    右手で金弾を握りしめ、意を決して全身を湯に沈めてみた・・・が、浅すぎてヘソまでしか沈めない。
    しかし、まあ、入ってしまえば湯の熱さも、にゅるにゅるの泥の感触もなんとなく馴れ、時折小枝にケツなど突かれたりするもおかしく、なかなかに味わい深い湯浴みになった。
    それでも、この熱さは湯を楽しめる温度ではなく、もとからのたこおやじは茹で上がってしまい、真っ赤になって湯船から飛び出した。
    あっ、しまった・・・証拠写真の撮影がまだだった・・・くそっ、もう一回か。
    野湯に浸かるのも中々に大変な事であるな、と、温泉巡りの初心者は、この道の奥の深さに感じ入ったのであった。

    たこおやじ・・・ゆでだこ一丁あがりぃ

    湯船から眺める紅葉です


     一本松の湯・・・うんちく

     源泉   60度以上 酸性 乳白色  薬の味 微硫黄臭。
     泉質   硫酸硫黄泉(おやじの勘)
     成分   硫黄・ナトリウム・カルシウム
     効能   やけどする
     飲用   たぶん不可。
     入湯料  無料 駐車場なし  シャンプー・石けん なし 手ぶら不可 


    No.15 ー2  乳頭温泉 黒湯  



     黒湯の駐車場に車を停めさせて頂いたついでに、こちらのお湯にも入れて頂こうと、出向いてみた。
    建物の雰囲気が、どこもかしこもすべてが、山間の一軒宿、秘湯ですぞ、と申し立てている。
    連休明けの平日の午後、普通の温泉場なら閑散としているはずだがここは違う。
    これから入る人、帰って行く人それぞれが、そぞろに歩いている。
    先ほどの一本松の「野湯」はそれなりに堪能出来たが、温泉に浸った満足感ではなく、なんだか探検の方の満足感であって、温泉に浸ると言う部分では消化不良だった。
    一刻も早くまともな風呂に沈んで、一声、うーっと唸りたかった。
    旅館の帳場らしきところで金500円なりを支払い・・・これが人手が足りないのか、呼んでも中々現れない。
    私は正直に金を払うまで待っていたが、その間に、しょうが無いと言いつつ、無料で入って行った人達が数名いた・・・帰りに払うつもりでしょうが。

     黒湯をはじめ、乳頭温泉は秘湯ブームの中でも筆頭格の人気の温泉郷らしい。
    来てみて納得なのだが、なるほど、田沢湖と乳頭温泉で、足を伸ばして八幡平を廻ってと言う、とても良い廻り方が出来る。
    しかも、盛岡から田沢湖まで一時間ちょっとで、日帰りの観光バスツアーでも無理無く訪れる事が出来る。
    そして、手軽に来られる割りには、山間部の一軒宿、秘湯の趣はぷんぷんなのだから、人気にならないはずが無い、と。

     黒湯は乳頭温泉に六つある日帰り入浴のできる風呂の中で、一番遅くまで受け付けてくれる。
    一番人気の鶴の湯では、午後3時で終わりなので、残念ながら今日はもう間に合わない。
    しかし、帰りがけにちょっと覗いてみたら、宿泊客や、日帰りでこれから帰る客も多く、仮に入れても、のんびり湯を味わう雰囲気では無かったな、と私は感じたが。

    風情の有る建物・・・ここに泊まるのでしょうか?

     黒湯の泉質は山の中の一本松温泉と同じではないか、と私は感じた。
    乳白色の湯の色、湯の華の浮き具合、肌に触れる湯の当たり、そして、口に含んだときの硫黄の蔭に感じる微かな薬臭さなど。
    噂では、乳頭温泉はとにかく混む、と聞かされているので、風呂は少しくらい大きくても狭く感じてしまう。
    時を感じさせる木造の内風呂の風情はとても良く、直ぐ前に増設された新しい露天風呂からの紅葉の眺めは絶景だった。
    風呂には洗い場など無く、石鹸箱に無造作に入れられた石鹸が床に転がっているの珍しい。
    私は汗まみれだったので、入浴前に風呂場の隅に、他の客の邪魔にならないように座り込み、石鹸で頭から全身を洗わせて頂いた。
    最近結構マメに温泉に浸かっている私の意見としては、被り湯や簡単な洗い場は、湯を汚さない為の配慮として必要ではないか、と思ったのだが、如何なものか。
    そして、もう一つ、勝手な推測をさせてもらうと、黒湯は湧出量が多く無いのではないか、と思った。
    根拠は、何となく水っぽいお湯は、源泉の量に比較して、加水が多すぎるのではないか・・・温泉なのに石鹸の泡立ちがとても良いのだ。
    まあ、水っぽいの指摘はシロートの的外れかもしれないが。
    私の黒湯への感想は・・・建物を含めた雰囲気はとても良いが、肝心のお湯の印象がとても薄い、まあ、こんなもんなのか?であった。

    黒湯の空いている方の内風呂

    新しくて、空いている露天風呂


    ところで、黒湯と呼ばれていても、湯は乳白色でどこにも黒は無いのだが、何故ここが黒湯なのか、パンフレットを貰い損ね、聞く事も出来ずだったのが心残りだ。

    黒湯・・・うんちく

     源泉   52度 酸性 乳白色  薬の味 微硫黄臭。
     泉質   硫酸硫黄泉(おやじの勘)
     成分   硫黄・ナトリウム・カルシウム
     効能   切り傷・皮膚病・やけど・神経痛・疣痔・・・など。
     飲用   たぶん不可。
     入湯料  500円 駐車場30台  シャンプー・石けん なし 手ぶら不可 


     この話 完。


    まあ、ネタは新鮮ですが信憑性は・・・?


    行った温泉について 質問を承っております


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