ちょこっと行って来る温泉


    No.24     青根温泉・とだ屋 川音の湯  



       スキーに行ってしまったんであります。
    おっさん、15年ぶりのスキーであります・・・道具一式、お古を手に入れまして、宮城県内でリフトの動いている二つのスキー場のうちの、澄川スノーパークと言う所へ行って参った訳であります。
    まっ、雪と言うよりもザラメと氷のとんでもないコンディションでは有りましたが、冬の蔵王の山並みを、快晴の空の下で眺められただけでも幸せだったと言う事で・・・。
    ええっ・・・?スキー滑れるのかって?・・・ふふふふ、これが微妙な腕前なんだよね、下手じゃないけど上手く無いっていう奴、かなっ?
    スキー場に一人って言うのは慣れているんですが、しかし、スキー場が閑散としていまして、なんとなく侘びや寂びが、カラカラと無人のリフトに乗って廻っている訳であります。
    そんな訳で、必死こいて滑りまくる歳でも無いし、コンディションも良く無いし、金もないので、早めに切り上げて温泉に行くべ、となった次第であります。
    そこで迷ったのが、遠刈田へ廻るべきか、帰り道の青根で済ますか、であります。
    結局は、結構な疲れを感じておりまして、遠回りは嫌だな、と言う事で青根にした訳であります。
    しかし、いつもの公衆浴場だと温泉ハンティングのポイントが伸びない・・・同じお湯はカウントしないんでありますね。
    そんな訳で、建前は公共の湯を目指しているのですが、それだと簡単に行き詰まるって伸びなくなるし、名湯は旅館の風呂にも多い訳で、んじゃぁ、一丁宿屋の門を叩いてみるか、と言う事で、青根温泉は「とだ屋」に行きまして、頼もー・・・と相成った訳であります。

    青根温泉 とだ屋

     青根温泉ははっきり行って寂れております・・・衰退の一途と言っても大袈裟では有りません。
    この界隈で一番大きくて立派だった青根温泉エコーホテルも今は廃業しておりますし、老舗の温泉宿がひっそりと門を閉じたままなのがそこかしこに見られます。
    道すがら見える公共浴場のじゃっぽの湯の駐車場には10台程の車が見受けられ、平日の午後にしてはまずまず客が居るのであるな、と、伺えるわけであります。
    しかし、もともとこじんまりとして華やかさの全く無い温泉街は、静かでして、猫の子一匹、年寄りの一人も見掛ける事が無いのであります。
    これだけ閑散としていると、宿に行って、風呂を頼もー、と言うのも気が引けるなと・・・。
    そんな訳で、狭い青根温泉の街を一周して営業中らしき宿を物色し、見つけたのが「とだ屋」なのであります。

     大きく深呼吸して、静まり返った旅館の引き戸を開け、頼もぉー・・・と、言おうとしたら婆様が現れて「お風呂ですかぁ?」と。
    なんだ、一寸入浴のお客さんは結構居るみたいだな、と言う事で、木戸銭の500円なりを支払いまして、お風呂場へ・・・。
    電気も消えている脱衣場でありましたが、私独りごときの為に明かりを灯すなど勿体ないと言う事で、さっさと服を脱いで浴室へと。

     スキーでかいた汗を流してから入ろうと、蛇口の前に座り、桶にお湯を入れようとしたのですが、いつまでたっても出て来るのは生温い水であります。
    ああ、給湯のボイラーが止まってんだろうなぁ、と言う事で、普段は御法度でありますが、独りと言う事もありまして、湯船の脇に腰掛け、お湯を直接汲み取ってからだを洗わせて頂きました。
    この洗い方、私は大好きなんであります・・・湯船からジャブジャブとお湯を汲んで掛け流すと、日頃のストレスや浮き世の垢が流れ落ちる思いがする訳であります。
    ええっ?・・・お前にストレスも浮き世の心配も無かんべ、となっ?・・・はい、勢いで言ってみただけですとも。

    内湯です・・・広々、ゆったりです

     さて、いよいよお湯を頂く訳ですが、初めての温泉はこの瞬間でほとんどの印象が決まってしまう訳であります。
    湯のあたり、硬さ、肌触り、臭い、色・・・等々、4感が総動員されて、温泉の質を見極めようとする瞬間な訳であります。
    そして、身体が沈み込んで、うーん、と、一息唸った所で、残った一感の味覚を確かめるべく、湯口から出るお湯を舐めてみる訳であります。
    これにて、温泉の素性を見極め、判定が下る訳でありますが、何分にも確固たる基準が無い訳でして、はっきり言ってインチキな訳です。
    ここの内風呂は、高い天井と広い洗い場、そして、採光の良い広い窓の影響でとてものびのびした気分になれます。

     お湯は、看板には、無色透明、無味無臭、弱アルカリ性の単純泉と書かれておりましたが、いや、それはちょっと意義あり、であります。
    無色透明、無臭は良いのでありますが、けっして無味では有りませんで、はっきり分かる苦みと、カルシウムのざらつき感を感じるのであります。
    まあ、温泉の湯はとても微妙でありまして、地震などでは源泉は大きく影響されますし、季節や、甚だしい物は時間で変化する物も有る訳です。
    なので私が感じたお湯と、温泉鑑定時に鑑定人が感じた物に違いが有るなんてのは、良く有る事なのであります。

     いや、スキーで足腰が疲れているからと言うのも有りますが、良いお湯であります・・・じわーっと骨身に沁みる、優しいお湯であります。 なるほど、伊達家の湯治場としての歴史を持つと言うだけ有って、地味では有りますが、正しく名湯であります。
    アルカリ性のお湯らしく、少しとろっとした、刺激の無いお湯が手足の先からじわーっと沁みて、強張りが溶けて行くのが分かるようであります。
    誰も居ないのを良いことに、お湯を手に掬って顔を洗ってみると、つるっとして、おっさんの痛んだ皮膚がスベスベになったような気が致します・・・皺は伸びないと思います。
    露天風呂です

     宿の婆さんが「風呂に蓋してあるから、除けて入らい・・・」と言っていたのを、へいへい、と聞き流して来た訳ですが、露天風呂を見て納得であります。
    放熱によってお湯の温度が下がらないように、お湯にウレタンマットを浮かべて保温をしているのであります。
    どーしようかなぁ・・・全部取り除いてゆったり入るか?・・・面倒だから自分の場所の確保だけで良いか?、と。
    結局面倒なので一枚分を除けて入ったのでありますが、座り石に腰掛けて上半身を風に晒し、足を浮いているマットに投げ出すと快適なのであります。
    へぇー・・・色んな入り方が有るもんで、温泉は奥が深いや、であります。
    露天風呂からは、二つの低い山の稜線が見えまして、左が花房山、右が川音山と言うのだそうです。
    そして、そこから、女湯が花房の湯で、男湯が川音の湯と名付けられたようであります。
    内風呂よりも温度が下がっている露天風呂は、のんびり長湯を楽しむのにちょうど良く、いつまで入っていても湯当たりする事も無く、思わずウトウトしてしまった程でありました。

     青根温泉はいくつかの源泉を集めて混合しているようでありまして、何所の風呂もお湯の感じは一緒のようであります。
    なので、成分以下の能書きは、じゃっぽの湯と同じでありました。

     本日、また一つ名湯に出会えた温泉巡りでありました。

       青根温泉・とだ屋・・・うんちく

     源泉   52度  無色透明 無味無臭・・・
     泉質   低張性弱アルカリ性高温泉  PH7.5 弱アルカリ性。
     効能   胃腸病・リュウマチ・神経痛・疣痔・・・など。
     飲用   不可。
     入湯料  500円  駐車場あり  手ぶら可


     この話 完。


    まあ、ネタは新鮮ですが信憑性は・・・?


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