ちょこっと行って来る山登り


    No.10 泉が岳(1172メートル)〜北泉が岳(1253メートル)



       山、高きが故に尊からず パート2

       12月4日木曜日・・・6時過ぎに起きて窓から外を眺めると、薄いピンク色に染まった東の空が、本日の好天をお約束しているでは有りませんか。
    うーん、ちょっと疲れた疲労が抜け切っていないんだよなぁ、でも、又とない初冬の晴天・・・よし、ワカン履いて泉が岳だな、と、言う事で出掛ける事に。
    ところが、ここで問題勃発でありまして、日曜日のオボコンベ山で、川をジャブジャブと渡って濡れた登山靴がまだ生乾きなのでありました・・・湿っぽいのは冷えるでござる。
    まあ、しかし、お日柄の良さは間違いない訳でありまして、ハイテク靴下を着用して行けば大丈夫でありましょう、と・・・。
    しかし、これが甘い考えでありまして、靴の内側を触った感触では、ちょっと湿っぽい程度であったものが、歩いてみると、何所から沁み出して来る物やら、結構なお湿りになるのでありました。
    これ、厳冬期だったらとても危ない、ヤバイ話でありますね・・・靴の湿気には気を使いましょう、と。

     さて、仙台市民なら小学校や中学校で一度は登らせられる泉が岳でありまして、ほとんどハイキングのようなお気軽登山の代名詞になっている訳であります。
    年中無休で運転しているリフトを使えば、あっという間に山頂に立つ事が出来ますし、代表的な水神コースを選べば、のんびりと歩いても、たいした苦労をする事無く山頂に立てる訳であります。
    しかし、本日私が通った「表コース」は、まさか、これが泉が岳かよ、と言う位に本格的な山登りのコースでありまして、標高差570メートルを2キロちょっとで登っちまう、急登なのであります。
    しかも、歩き始めは線路の敷石みたいな砂利でありますが、ちょっと上に行くと、後はほとんどずーっと岩やガレでありまして、変化に富み、面白い道なのであります。
    もっとも、私の場合はどんな山道に行きましても、それは感動する訳でありまして、まあ、アレです・・・好き嫌いに個人差がありますので、割り引いて読んで下さいな、と。

     8時10分に家を出まして、8時35分登山口着で、靴を履き替え398円のスパッツを装備して、背中のザックにワカンを括り付け、飴を一つ口に放り込んで、8時45分にいざ出発、と。
    このとき、余りにも暖かいので、ウォーミングアップ無しでフリースを脱いで行くか、いつも通り薄ら汗をかくまでは着ていくか、迷った訳であります。
    で、結局は長袖Tシャツに半袖Tシャツの重ね着で行く事にしてザックに押し込んだのでありますが、その時にデジカメをザックから取り出して取りやすい上の方に入れようとして、結局は車の中に置き忘れてしまいました・・・なので今回の写真は携帯だけでした。

     そんな訳でなんだか間抜けな出発をしてしまった訳ですが、歩き始めても身体が重く、一汗吹き出させない事には足元も覚束ない始末で、本日の体調が万全ではない事を物語っていたのでありました。
    しかも、歩き始めて30分も歩いたか、と言う所で、どーにも堪えきれない「キジ撃ち模様」に襲われてしまったりして・・・薮が落ち葉になっちまって、どこからでも丸見え状態でありまして、頭隠してシリ隠せず・・・昨今は、お花摘みやキジ撃ちが環境問題として騒がれるご時世で、抜群の開放感とは裏腹に、ちょっと心苦しいのでありますが、大自然の中でのキジ撃ちはなんとも爽快で気持ち良いモノであります・・・私だけか?

     すっきりして心無しか足取りも軽くなり、登り応えのある岩を選んで、わざと難しく登ったりして楽しみながら高度を上げて行きますと、開けた斜面に何やら動物の気配であります。
    うひゃぁ、熊にしちゃ白っぽいなぁ・・・あっ、カモシカがヌタってるのか?と言う事で、私の方が先に見つけたので、静かに近寄ろうと登山道をはずれて笹竹を踏んだ途端に奴もこちらに気が付き、飛び起きて一目散に谷底めがけて駆け下りて行きました。
    この時のカモシカは「ブシュー、ブシュー・・・」ともの凄い鼻息の荒さで、私には這ってでも降りられそうも無い斜面を駆け下りて行ったのであります。
    で、冬毛のカモシカは、灰色に輝く長い毛がふさふさとして丸々と太ってとても柔らかそうに見えるのであります・・・可愛いとは言いがたいな、雄は威厳が有ります。
    場所は、胎内くぐりの大岩の辺りでありました。

     泉が岳表コースは岩だらけで登りも下りも足腰を大いに使います・・・特に下りは両手両足総動員状態で取り組む場面が多々であります。
    しかし、岩の質や種類は知りませぬが、表面がヤスリのようになった岩が多いので滑り難く、足場は意外と安定している訳でありまして、こちらへ廻られた時には、是非、なんちゃって岩登りごっこをお楽しみいただきたいと・・・まあ、これも大袈裟と言えばそうとも言えますが・・・。
    なので、良さそうな岩を見つけると、登山道からはずれてわざとよじ登ったりして楽しみながら行く訳であります・・・私はおっさんになって感覚が鈍っているので、敢えて無駄に岩によじ登り、勘を取り戻したいと思ってやっている訳でありますが・・・効果有るのかなぁ?

     さて、岩と石で変化にとんだ道を歩くと言うよりは、よじ登る感覚で高度を上げて行くと、ドウダン林と言う看板の広場に出まして、ここから幾分なだらかな尾根道になります。
    標高が1000メートルを越えた辺りからは積雪が20〜30センチになっているのでありますが、既に踏め固められてトレースでして、今更ワカンを履かなくてもな、と言う事でそのまま頂上まで行ってみました。
    しかし、下りは滑るのでワカンか簡易アイゼンでも無いと難儀するであろうと思う道で有りましたよ・・・雪はザラメの腐れ雪でありますので、かかとを打ち込んで下れなくも無いですが、笹の上に乗った雪が滑って足をすくいますから、やはり滑り止めは欲しい所でありますね。

    山頂は賑やかです。左端の箱が三吉大神で、柱は山頂の印やナントカ記念の石柱です。

     泉が岳の頂上まで1時間と30分でありました・・・岩登りで遊んで来たので時間を食いましたね。
    山頂は真っ白で、無風快晴であります・・・風がそよとも吹かないので、Tシャツだけで十分居られる暖かさで、手元のインチキ温度計では7度もありました。
    薬師堂にお参りをし、三吉大神にもパンパンとし、広がる展望を十分に満喫し、いよいよワカンを履いて北泉が岳へ向かうのでありますが、しかし、踏み跡を見るとズボ足なんでありますね・・・先週の大雪の後、最初にトレース付けた人はチャレンジャーであります・・・凄いな、と。

    頂上の薬師堂です・・・乾いた岩に腰掛けたかったんですが、罰当たりな気がして止めました。

     さて、ここから北泉が岳に行くには一度、三叉路と言う所まで下らなければなりません・・・一度稼いだ標高を下って無くすと言うのは精神的にはキツい物が有りまして、中々に躊躇するところで有ります。
    もしも帰路に同じ道使って登山口に戻った場合には、降りた分をまた登らなければならない訳であります。 
    まっ、しかし、12月に泉が岳から北泉が岳まで散歩気分で行けるなんてのは、滅多に有る事ではない訳でして、今行かないで何時行くのよ、なのであります。

    薮の向うに見えるピークが北泉が岳で、奥の真っ白いのは船形山です。山頂避難小屋が見えました。

     久しぶりにワカンを履きまして、まるで子供のようにわざと雪の上をズボズボとやってみる訳であります・・・ああ、この感触だぁ、雪山だぁ・・・と。
    昔私が履いていたワカンは、信州ワカンと言いまして、材質はミズキの細い枝を曲げて作った物でありました。
    滑り止めの爪も木で、麻の細引きでミズキを絞め、登山靴とワカンを繋ぐのも、麻ひもを使っておりました・・・当時からアイゼンバンドは有りましたが高価なので使いませんでした。
    で、絞め方や紐の質や手入れによってワカンの性能が大きく左右される物でありまして、あまに油を塗っていないと雪がくっついて難儀した物でありました。
    しかし、今時のワカンはジュラルミンの本体にステンレスの爪、ワカンと靴を結ぶには塩梅の良いリングの付いたアイゼンバンドで簡単確実に絞める事が出来るのであります・・・感激であります、が、しかし、歩き始めてしばらくはワカンにしなりが無く、何となく歩き心地が固いな、と思って違和感が有りました・・・気のせいかも。
    もっとも、10分も歩かないうちに感触にもすっかり慣れ、下り坂を大股で走ったり、ちょっと急坂では、つま先を上げてワカンを滑らせる技を思い出したりして楽しめるようになっておりました。

     さて、雪が沢山ある道なら下るのは一気でありまして、夏ならうるさい薮であろう所が雪で平で、しかも木々は全部裸で見通し抜群であります・・・コースも関係なく目指せ山頂です・・・まあ、下手に薮に入ると沈むので実際はほとんどトレース踏んでいましたけど。
    青空と白い雲、辺り一面白い雪の世界をTシャツで歩けるのですから、まるで春山のようでありました。
    下り切って水神コースからの三叉路を過ぎると程なく、北泉が岳の山頂まで登り一辺倒であります・・・と、言ってもそれ程の急登では有りませんで20分程で頂上到着であります。
    夏場には薮と灌木に覆われ、ほとんど眺望の利かない無愛想な山頂でありますが、今は木々の隙間から絶好の景色を眺める事が出来ます・・・これだから冬は楽しいのですよ。
    11時過ぎに泉が岳を出発しまして、到着が11時50分頃でありました・・・雪道の割にはまずまずのペースでありましたね。
    と、言う事で本日はじめての大休止でありまして、風がなく温かいものですから、Tシャツのまま昼飯タイムであります。
    とは言いましても、一面雪の原ですから腰を下ろす所はありませんで、立ったままの休憩なのであります・・・まあ、何か敷いても、下手に座るとケツから冷えて具合良く無いもんでありますので立ったままが宜しい訳です。
    私の「厳冬期北泉が岳登頂計画」では、桑沼から登って来る予定で居る訳でありますが、山頂から桑沼方向には踏み跡は皆無であります。
    私はおにぎりを齧りながら少し桑沼方向へ降りてみたのでありますが、誰かが冬期に利用しようと赤布を下げた様子も無く、尾根に真新の雪が広がるばかりでありました。
    ひよっとしてトレースが有ったら便乗しようと甘い考えを持っていた私の野望はここで砕け散ってしまったのであります・・・無念。
    しかし、天気が良いのと、それ程雪が深く無いのを考えれば尾根道一本の桑沼ままでのルートは大丈夫だろうとも思ったりする訳です。
    で、時間を考えました・・・泉が岳から北泉が岳まで、夏道のガイドブックで50分と記されている所を自分は40分程度で来ている訳であります。
    で、ここから桑沼までの降り口まで、秋に来た時には下り一辺倒で楽な20分だった。
    しかし、踏み跡が無いのでラッセルを考えて40分で、尾根から沼までの下りに40分。
    桑沼から駐車場まで約6キロ、2時間・・・到着は3時20分。
    予定通りに歩けたとしても3時過ぎになる訳であります・・・桑沼までの急坂の下りで手こずって日没となった場合、防寒対策が今イチだな、と言う事で残念ではありますが、もと来た道を引き返す事に決定・・・ポットのお茶も残り少ないし。

     下って、三叉路への平らな所へ出る手前で何やら人の声のようなものが聞こえるのであります・・・晴天の真っ昼間に雪女はねぇだろう、と。
    で、程なくしてラジオをならしながら登って来る単独の熟年女性と行き会いました。
    彼女は私の足元を見て「あらぁ、やっぱり履いているんですねぇ・・・簡易アイゼン履いた方が良いでしょうか?」と・・・。
    私は本心では、今まで履かずに来た事の方が間違いダベぇ、と言ってやりたかったのですが、「踏み跡は堅いですけど下りは大変ですから、持っているなら付けた方が・・・」と言って、んじゃぁ頑張って、とその場を後にいたしました。
    まあアレです、ベテランだから単独で来られるんでしょうが、でも、何所でアイゼン履くか分らないベテランも少ないと思う訳で・・・まあ、他人事ですが。
    で、三叉路で泉が岳方向から下って来た、シルバー世代の男性と行き会いました・・・流石に泉が岳でありますね、12月の平日の雪山で人と行き会うんですから。

     ああ、やだなぁ、と思いながらも行かねばならぬでありまして、ここからはまた泉が岳頂上へ登り一方であります。
    たいした事無いんですが、そろそろ疲労が疲れて来まして、フウフウ言って登り付いたのが丁度1時でありました。
    ここでも、山頂で休息する2人連れと、腰を下ろして昼飯を食べている、シルバー世代の単独の男性がおりました・・・泉が岳は冬でも混んでなぁ、と。
    んちゃぁーと挨拶して通り過ぎようとした時に、私の足元を見て、「ワカンですかぁ、そっちの方が良かったなぁ」と言うので足元を見ると、6本爪のアイゼンを履いておられまして、スパッツがキリリと巻かれた、しっかりとした足元でありました。
    やはりアレでしょう・・・夏場、水神方向から簡単に登れるからと言う事もあるんでしょうね・・・自分も偉そうな事は言えませんが、雪が有る山にワカンもアイゼンも無しで登って来るのは、やっぱり、ナンダカなぁ、と思う訳であります・・・所詮は他人事ですけど。

     さて、ここからは駐車場まで一気に下る訳であります。
    雪が消える所まで、所々土の上を歩くのですが、また雪になるのでワカンを外すタイミングが難しかったのでありますが、履かずに転ぶより、履いて壊す方が良い訳で、所々ジャリジャリと歩く訳であります。
    さて、岩がゴロゴロの急な下りに入って雪はすっかり消えたので、ワカンをザックに括り付け、軍手をして、手足を総動員の四つん這い状態に入りました。
    下りの岩場は全編これスクワットでありまして、腿の筋肉とふくらはぎがピクピクになる訳であります。
    たいした距離と登りではなかったはずなのですが、雪道と言うのはけっこうなパワーを喰うのかもしれません。
    思ったよりも力がなくなっておりまして、北泉が岳から桑沼に廻らなくて大正解でありました・・・おっさんは昔の面影はどこにもないんだな、と。
    なんだかんだと、四苦八苦と・・・それでも岩で遊びながら下ったのでありますけどね。
    約1時間で急坂を終え、ほっと一安心であります。
    道が谷側に当たる為に日陰で暗くなるのが早いんですが、12時20分に北泉に向かっていた熟年女性は、帰り道夕暮れになるだろうな、なんて思ったりして・・・所詮他人事ですけど。
    で、程なくして薬師沢に出まして、ポットの蓋を外して、薬師の水と呼ばれる名水を頂きました。
    たぶん、今朝方驚かせたカモシカが敵討ちにと沢にシッコなどしていないとは思うんですが、とても美味い水で有りました。
    泉が岳の水は大東と比べると柔らかいです・・・雪の季節だからかな?

     そんな訳で、駐車場に到着して2時30分でありました・・・ふぅー、マジ疲れたっす。

     余談ですが、泉が岳の後は根白石の「明日の湯」に漬かって疲れを抜くのが最高なんであります・・・たまんねぇよ、極楽だよ。    


     この話 完


    まあ、適当に書いてますんで、間違いが有ったらゴメン・・・?


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


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