ちょこっと行って来る山登り


    No.16 刈田岳 (1750メートル)



       何も見えなかった

         いや、なんぼ休みだからって、雨降ってるのに山に行かなくても、と、自分でも思いますけど・・・。
    でも、暖冬だし、ぼやぼやしてたら雪が溶けてしまって「厳冬期登頂」の夢を達しないうちに、雪解けして春になっちまうかも知れませんから。
    なので、隙を見ては狙っている山に突撃しないと話しが進まない訳であります・・・まあ、進まなくても世界平和には全く問題ないんですけれども。

     そんな訳で、昨晩準備した荷物一式を車にぶち込んで出掛けたのが、7時40分でありました。
    ところが、15分も走ったでしょうか・・・何となく胸騒ぎと言いますか、虫の知らせと言いますか、気持ちが落ち着かないのであります。
    そこで、信号待ちの間に座席の後ろの諸々を見回しますと、靴が無い・・・またやっちまいました。
    慌ててUターンして家に戻り靴を取って再出発した訳ですが、30分以上ものロスタイムを食らっちまったのでした。
    さて、目指すは澄川スキー場でありましたが、下界は程良いお湿りで、ぽつりぽつりと雨が降っているのであります。
    しかし、まあ、標高が上がれば雪だろうと言う希望的観測のうちにエコーラインを登って行きますと、やっぱり雪になったんであります。
    まっ、雪なら良かろう、と思うんですが、しかし、ずっぽりと雲の中と言う感じで、フォクランプつけても対向車ビックリの視界の悪さはチョットばかし、気持ちを重くするんであります。

     さて、澄川スキー場から歩いて登るか、インチキしてリフトを使うかを選択しなくてはならないんでありますが、迷う事無くリフトで終点まで乗って行く事にしました。
    登山券なる、3本のリフトを乗り継げる券を1200円で買い求め、身支度を整えていざ、出発であります。
    本日はリフトの上が寒かろうと言う思いから、Tシャツ重ね着にフリースにスキー用のジャンパーと、下半身は、タイツにジャージ、靴下二枚重ねに、スパッツと合羽のズボンであります。
    私の冬山登山のお供として、本日から、ハンディーGPSが加わりまして、これでホワイトアウトも怖く無いぞ、と。

     さすがにリフトは速いもんで、約2キロの距離を20分も掛からずに登っちまう訳です・・・1200円、安いと思いますよ。
    さて、ここからどう行くか?35年前は中央コースを尾根沿いに登ったんでありますが、今時はどんなコースになっているのやら、と、チョット心配であります。
    しかも、本日は霧でほとんど何も見えず、コンパス頼りに行くしかないようで、ちょっとばかし、大きく不安なんであります。

    スキー場の上の中央コースのポールです・・・この頃雲が薄くなりました。

     ああそうだ、俺、GPS持ってるんだ・・・で、これって、どうすれば行き先教えてくれるの?
    いゃ、刈田岳の方向は至って単純で、それは知ってんのよね、今日は玩具じゃないコンパスも持って来ているしね。
    GPS君・・・君にはかなりの出費を迫られた訳なんだけれども、今日は何をしてくれるのかな?、と。
    しかし、GPSの画面には25000/1の地形図の小さなものが映し出されるだけで、矢印が刈田岳の方へ向いているので、方向は合ってます、程度の事しか言ってくれていない訳です。
    かぁーっ、こんなんじゃ地図とコンパスと一緒じゃんよぉ・・・俺の勘で間に合っちまうなぁ。
    と、言う事で、GPSは迷子になって帰り道に軌跡を辿る時に頼りにする程度しか、使い方を把握していないのであります。
    他人様のホームページを読むと、事前にルートをインプットしてから山に来るらしいのですが、私はそんな面倒な事は出来ません。
    いやぁー船に乗っているとGPSは魔法の水先案内人なんでありますが、これは何だか、あーコリャコリャでありますね。
    やっぱしなぁ・・・パソコンながMacだからなぁ・・・つまはじきだよなぁ。

    GPSが標高1450mだと言ってましたが、樹氷は出来ていません。

     エコーラインを横切った辺りから、35年前の記憶がなんぼか戻って参りまして・・・と、言っても、ここからはコンパスの針をインデックスから外さないように進めば真っ直ぐ行けますから、楽なんであります。
    しかし、この先に行くと、ポールがやたら数が多くて、真っ直ぐ刈田岳に向かうらしいものと、左の方、前山の方へ向いているらしいものと有るのです。
    うーん、昔はこんなに賑やかじゃなかったけどなぁ、なんて思っていたら、満員の人を乗せた雪上車が二台も上がって来るでは有りませんか。
    へぇーっ、今流行のバックカントリーとか言うやつですかぁ、そうですかぁ、真冬の刈田岳は、こんなに賑やかになったんですかぁ、と、驚きです。
    トニー・ザイラーって、しってますか?ザイラーコースなんて、今は言わないんでしょうかね?・・・。
    35年前、腰まで埋まるラッセルをしながら、一泊二日でないと刈田岳の山頂までは届かなかった私らは何だったんでありましょうか?
    こうも簡単に登れちまうと、有り難いやら、寂しいやらと複雑な思いでありました。

    ここで標高1600m位、やっと厳冬期の雰囲気が漂って来ました。

     成る程なぁ、ネットで冬山の記事を読むと、登られている山が限られていて、スキーで登れる山に集中しているな、と思っていたのであります。
    で、刈田岳も良く登られている山の一つな訳ですが、これだけコースが整備されていれば登る人も多い訳だ、と納得です。
    まずまず、道標は混乱するくらいに多すぎる所も有ったし、分らなくなったら雪上車の轍の跡を辿れば良いし、雪崩なんかも心配ないし。
    でありますから、防寒装備さえしっかりしていれば、問題は起き難い山だな、と。

     さて、すっかり稜線の上に出てしまった訳で、流石に真冬の蔵王らしくなって参りまして、ピューピューであります。
    中央の林間コースを歩いている時にはパウタースノーで10センチ程度沈んでいたんでありますが、稜線に出ると、クラストしてカリカリの雪面ではスノーシューの爪が立たない所も有りました。
    でも、シュカブラが出来るほどの強風ではないので怖さは感じません・・・堅くて歩きやすく、距離が進むんであります。

     小雪まじりの強風とガスで視界は随分悪くなり、その上自分の吐く息で曇りまくっているメガネと来ると、ほとんど何も見えていない状態であります。
    なので、雪面の凸凹も見えていない訳で、突然、蹴つまずいて驚くのであります・・・スットクのお陰で転けませんけど。
    もうすぐ頂上だと思うんだがなぁ、でも、何も見えないしなぁ、耳が冷たいなぁ、と歩いていると、何やら蠢く人影が・・・。
    ああ、雪上車で上がって来たスノーボードの人達かぁ・・・あっ、あのカッコつけてんのはガイドだな、なんてね。
    種目は違うけれども、去年までは自分もガイドなんかやってたんだよなぁ、で、ガイドとお客さんって、匂いが違うんだよなぁ、なんて思って通り過ぎようとした訳であります。
    すると、ボーダーの一群が声を揃えて「こんちわぁー」と大きな声でご挨拶であります。
    へぇー、ボードの兄ちゃん達って、いい奴らじゃん・・・なぁーんてね、私ってば、とても単純なんです。
    で、彼らが身支度を整えていた風の陰こそは、刈田岳の避難小屋の脇でありました。

    刈田岳避難小屋・・・昔の小屋とは違って立派になってました。

     あららぁ、何も見えないから、呆気なく登り切っちまったなぁ・・・35年ぶりの「厳冬期刈田岳登頂」に感動する予定だったのに、と、拍子抜けでありました。
    で、そこからちょこっと進みますと、刈田峰神社の前にあった、多分これが山頂の標識だろうと思う所でGPSを確認すると、彼もここが山頂だ、と申しておりましたので、登頂したと言う事に・・・。
    後見のゲレンデを出発してから、1時間20分でありました・・・冬山も手軽になりました。
    何も見えないし、風よけの無い所に出るとピューピューで寒いし、腹も減っていないし、んじゃぁ記念写真を撮って、下るか、と。

     
    刈田峰神社前にて。貧乏臭い寄せ集めの防寒対策は色使いがオシャレですね。

     お茶を少し飲んで、カロリーメイトを2本食べて、チョコレートをひとかけらで腹ごしらえは終わりであります。
    で、寒さのせいか、寿命なのか、電池交換のサインの出たデジカメの電池を交換し、神社の境内でチョットあれかなと思ったんですが、用足しさせて頂いて、下山開始であります。

     避難小屋を過ぎて間もなく、スノーシューを履いた若い女性が登って参りまして、ご挨拶です。
    頂上は何も見えないだろうから行ってもしょうがないかな、みたいな事を言っていましたが、あと5分ですよ、と伝えて、んじゃね、と。
    下りに入ってスキーのゴーグルを掛けてみました。
    オレンジ色なのでギャップが分るかと思ったのと、二重レンズだからメガネが曇らなくて良いかも、と思った訳であります。
    おおっと、これは大正解でありまして、最初少し曇ったんでありますが、温度が同調すると曇らないんであります。
    しかも、顔の冷たさが半減するし・・・目出し帽を持って来なかった事を少し悔やんでいましたが、ゴーグル一つで随分違うもんです。

    昔からの番号標識だと思うんですが、これ以外、ほとんどは朽ちていました。

     さて、樹林帯に入ると風は全く無く、体感温度も温かく、ほっと一息であります。
    しかも、適当に下って行けばスキー場の何処かにぶつかるだろうと言う気楽さで、鼻歌さえ出るほどです。
    余談でありますが・・・デジカメと言うのは、勝手に見栄え良く、明るめに補正してしまうんですね。
    本日の写真は随分明るく出ていますが、白と言うよりは灰色の世界で、もっとずーっと暗かったんですが。

     ああ、リフトの音が聞こえる、と思った矢先に、落とし穴にハマりまして、胸までズっぽし、であります。
    かぁー・・・こんな巧みな落とし穴は、作れったって出来るもんじゃぁ御座居ませんよぉ。
    寒く無いし、もうそこはスキー場だから、後は後見のゲレンデから観光道路を下ってお終いですから、落とし穴も余裕で楽しめる訳であります。
    ゲレンデに出るとホッとすると言う事は、真っ直ぐ一直線だぁ、と言いつつも、登っている間は緊張していると言う事なんでありますね。
    駐車場到着は1時20でありました・・・晴れ間の多い3月、また行きたいですね。


     この話 完


    まあ、適当に書いてますんで、間違いが有っても見逃してやって下さい・・・


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


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