ちょこっと行って来る山登り


    No.19  大東岳 (1365メートル)



       はっきり言って、参りました

         いや、はっきり言って参りました・・・ホントーに疲れました。

     数日間見ていた天気予報によれば、翌日はまずまずの天気だったので、はじめは南蔵王の不忘山へ行く予定でした。
    しかし、朝起きてみれば、我が家の周りが既に雪で、天気予報は荒れ模様。
    荒れ具合は標高に比例するし、見晴らしの良い山ほど風が吹く訳です。
    と、言う事で、朝飯を食いながら考えたのが、沢筋の道が長くて風は当たらないだろうと思った、大東岳表コースでありました。

     そんな訳で、既に軽く吹雪いているような、今日みたいな天気の日には二口の本小屋も空いているんだろうな、と思って走って行くと、何となく、過去に無い程の轍が続くのであります。
    へっ・・・?、なんでぇ?と、思いつつも、まっ、この天気で山に登る人は居ないでしょう、と、行ってみた訳です。
    さて、本小屋のビジターセンターが見えて来ると、ナニやら蠢く大勢の人が居るではありませんか。
    そして、「雪んこまつり」と書かれた沢山ののぼりが旗めいているのであります。
    しかも、ビジーターセンターは進入禁止、で、手前の駐車場もほとんど満車・・・どーすればいいの、私は、と。
    たまたま通りかかったスタッフジャンパーを着た爺さんに、何が有んの?と聴くと、「雪んこまつり・・・」と、読めば分る親切なお返事。
    私は「それっ、おもしぇの?」と、訪ねると、「ワダスラも初めてだがらねぇ、ワガンネスなぁ」と・・・あっ、そーですか。
    と、言う事で、関係者の駐車場に隙間を見つけて無理矢理突っ込みまして、仕度を整え出発しました。
    登山口方向へ歩き出そうとする私に、爺様が近寄りまして、「尾根さ出だら吹くぞぉー」・・・と。
    「はいはい、登り切れると思ってねぇんでがす、危ねぐなる前に止めるっちゃぁ」と、私・・・「んだなっ」と、爺様。

     さて、この冬三度目でありますから、まあ、だいぶ馴れたと言える道筋であります。
    登山口からしばらくはガリガリの氷の道でありました。
    昨晩、街では結構な雨が降ったんでありますが、この付近でも雨だったので雪が溶けて氷になったのでありましょうか?
    積雪は1月18日に来たときの方が遥かに多く、しかも締まっているので歩きやすいんであります。
    小行沢を渡る所まではクラストした雪にスノーシューの刃と爪が効いて沢沿いのトラバースも意外に楽でありました。

    一本橋の徒渉地点です。

     ここはまだ標高は440〜450mで低いんですが、沢を渡り切ると気温はぐんと冷えて来まして、積雪量がどっと増えます。
    で、氷で締まった上にさらっと深雪が積もった歩きやすい雪面が、だんだんスノーシューが潜るようになり、一歩一歩が重くなるんであります。
    そして、造林された杉林と違い、雑木林の沢沿いはどこに落とし穴が隠れているかも分り難いんであります。
    標高がわずか100m上がると積雪と雪質が変化して行き、沢沿いは崩れやすく、スピードが落ちるのであります。

    前回は見つけなかった、1合目の標識です。

     毎度の事ですが、沢沿いのコースはトラバースの連続で、スノーシューでは取り回しに苦労する訳です。
    そして、真っ直ぐ行けば楽なのですが、崩れそうな斜面が嫌で高巻きして行く訳です。
    しかし、巻いて行く先は急な登りでして、スノーシューで打ち込むキックステップは、ずるずると崩れ、登れないのであります。
    いやぁ、さっぱり前に進まないんだもの、嫌んなります・・・が、こんな所で撤退する訳には参りませぬ、と。

    ここをトラバースして、間違ったら沢にずり落ちるか?

    巻いて行くとこの斜面、約50度を登って行く訳です。

     仮に高巻きを嫌ってトラバースして沢にずり落ちたとしますと、上がれない事は無いでしょうが、もの凄い時間と労力が必要だと思います。
    ここまでに、胸までハマったのが二度でありましたが、脱出するのに結構なパワーをロスしました。
    で、一番厄介なのは、斜面でハマった場合でありまして、下方向にしか脱出出来ない訳であります。
    それは、頭を沢に向けて逆さに出ると言う事でして、そのまま滑り出したら、とてもハッピーな事になってしまう訳であります。
    方法としては、雪面にストックをバッテンに置いて、クロスした点に手を置き、沈まないようにして出るんでありますが、大抵の場合はスノーシューが引っ掛かって出て来ない訳です。
    無理に引き出して足を捻ったら最悪な訳で、どうしてもダメな時には雪に潜って外して上がった方が良い事もあるのです、が、脱げば、踏み出す足の踏ん張りが無くなると言う矛盾も有って、独りでの山行では、ハマると言うのは結構大変な事なんであります。

    やっと馴染みの標識に出会い、ホッとします。

     さて、標高が700mを超えてからは稜線で吹く風がゴーゴーと唸って不気味でありますし、風は、木に積もっている雪を吹き飛ばし一瞬ホワイトアウトの様相を呈して参りました。
    それでも、尾根の取り付きまではなんとかして行ってみたい、と頑張るんでありますが、チョットした傾斜では足元が崩れてさっぱり進まない訳であります。
    そんなに馬力の無い方だとは思わないし、どちらかと言えばラッセルは得意な方なんでありますが、たぶん、この辺では、昨晩降った新雪は50センチにもなっていると思うんであります。
    一足ごとに、ふくらはぎ以上、膝下程度まで埋まりながら行くんでありますが、まあ、雪は重く無いのでそれだけが救いでありました。

    これは埋まり出す前のコースですが、それでもこれでした。

     本日はGPSを持っているのですが、しかし、示される夏道は沢とクロスするコースな為に忠実に辿っていれば良い、とは行きません。
    沢の崩れそうな所を避け高巻きしたり、向かい川の尾根の方が歩きやすそうだと思えばそちらを行って、適当な所で修正するなど、当てになるのはやっぱり地形図な訳です。
    大枚はたいて手に入れたGPSでありますが、私は知らない山にホイホイ行く事は多分無いと思うので、無くても良かったのかな、なんて思いつつも、それでも、GPSが示す方向が自分の選んだルートと合っていると、ホッとするのは正直な気持ちであります。

    この木々から落ちて来る雪で爆撃される訳であります。

     GPSを持って一番良かったのは、正確な標高が分る事であります。
    いや、一部で使われている気圧変化の高度計ではなく、位置情報からの標高なので、一般的には正確ではないと言われているのですが、私が使っている限りではとても正確で、25000/1地形図の等高線と合わせて、ほとんど狂いはありませんでした。
    そんな訳で、私のGPSが標高900mを告げ、沢から離れ、目の前が明確な尾根筋になったところで強風と猛吹雪で前進不可能となり、撤退であります。
    登り始めて2時間と20分・・・大した時間を歩いていないんでありますが、体力的には一杯でありまして、丁度良い所であったと言えます。
    ラッセルに拠る体力の消耗は思ったよりも激しいようでありまして、本日の状況は1馬力のおっさんにはチョット厳しかったようであります。

     下りはずんずん行けるのかと言うと、トラバースやら沢との交差で時間を食うのでそれほどでも無いのであります。
    前回私が沢筋を避けて尾根に上がった辺りに、来る時には無かったズボ足の踏み跡が見られてました。
    と、言う事は、私の後に登って来た人がここで引き返したと言う事かな、と、足跡を追ってみると、まず、良くまあ、と思う程にズボズボハマっているのであります。
    根性有るなと言いたいけれども、長靴だけじゃぁ無茶だよなぁ、とも思うんでありますが、まあ、他人事ですから・・・。

     駐車場でラーメンを作って食べまして、帰り道、神ヶ根温泉で温まって・・・ああ、楽しかった、と。


     この話 完


    まあ、適当に書いてますんで、間違いが有っても見逃してやって下さい・・・


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


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