ちょこっと行って来る山登り


    No.20  不忘山 (1700メートル)



       山頂は・・・遠いなぁ

         冬山でした・・・ホントーの冬山でした。

     昨年秋から山登りを始め(戻りか?)冗談で冬山の真似事をしていた訳であります。
    で、そうやって登っていながら、あまりにも手応えが無く、こんなに簡単に登れるもんだったのか、ちょっと疑問であり、不満でもあった訳です。
    と、言うのは、私の35年前の冬山体験と言うのはほとんど全部蔵王近辺なんでありますが、刈田岳の頂上を極めるのには、最低でも一泊二日掛かった訳です。
    そして、本日攻めて見ました不忘なんかは、刈田まで登り、前山、杉が峰、屏風と踏んで、途中テントか雪洞で一泊しながら、覚悟を決めて登ったもんでありました。
    で、この記憶は、それ程大した事でもなかった山行が、時間のフィルターを通して脚色されたものなんだろうか、と思い始めていた訳です。
    がぁ、しかし、本日は、やっと本物の冬山に出会いました・・・いゃ、これって、荒天時に登ったって言うだけの話しかも?

     先週、白石スキー場の駐車場で風の凄さに尻込みした訳ですが、本日の朝の状況も似た様なもんでありました。
    しかし、不忘はどっちみち吹かれるんだろうな、と言う覚悟で臨んだ本日は、装備がちょっと違います。
    まず、股引とシャツを純毛にしまして、手袋も予備とオーバーミトンを準備と、そして、目出し帽とゴーグルとで武装であります。
    極めつけは、予備食を多めにし、まかり間違って山中で一夜をと言うときの為に、羽毛の上下を持った訳であります。
    このままヒマラヤに行っても困らない・・・まっ、ホントに行ったらたぶん直ぐ死にますけど・・・覚悟はそんなもんな訳です。

    スキー場から青麻山を望む・・・これは下山の時に撮ったもの

     スキー場のリフトは強風のため、右側の風の当たらない方だけの運転でありました。
    私は、ちょっと不安を抱えながらも・・・なんたって、ここから登の初めてですからね・・・まあ、無謀っちゃ、無謀ですけど。
    さっさと支度をして、地図に記された夏道沿いを登って行く訳ですが、登山道と書かれた所から入っても、すぐにスキー場のゲレンデを歩く事になるんであります。
    止っているリフトを横目で眺めながら、動いていたら間違いなく乗ったな、まあ、大した距離じゃぁ無い・・・ふぅふぅ、ひぃひぃ、と。
    程なくして、地図ではリフト一本分を過ぎた辺りから西方向へ向かって行くんでありますが、何となく真っ直ぐの方が速いような気がして行ってみたんであります。
    しかし、すぐに何で真っ直ぐ行かないのか、納得がいきました・・・急だから辛い訳ですね。
    そんな訳で私も樹林帯を横に抜けて、正規の夏道へ合流でありました。
    で、この道、分りやすいと言えばそうなんですが、所々夏道が不明瞭で、けっこう豆にGPSやコンパスを見ました。
    スキー場からはナンボか離れたかな、と言う辺りで不忘山への標識を見つけまして、ホッと一安心であります。

    こう言う確かな目印を見るとホッとするんです・・・天気良さそうでしょ?

     さて、空は晴れているんでありますが、風は益々強くなって行く気配な訳であります。
    うーん、森林限界越えたら飛ばされるな・・・どこまで行けるんだろう、と、既に頂上は諦めている訳です。
    標高が1200を越えた辺りから雪質がいっそう軽くなって、くるぶしより上まで埋まるんですが、全く苦にならないのであります。
    雪が軽いと言う事は、気温が低くいと言う事で、目出し帽とゴーグル無しでは顔が痛くて歩けなかったと思います。
    で、この辺からぽつぽつと新し目の赤布が出て来るんであります・・・これはたぶん今シーズンのものだろうな、有り難い、と後を追う事に。
    が、しかし、私の頭の地図や、GPSの示す方向と赤布の向かう先がビミョウにずれている訳であります。
    強風の中で地図を開くのは嫌だなぁ、なんでありますが、どこへ向かっている赤布か分らないものを追う訳にはいかないので見る訳です。
    ああ、風を避けてか東側の尾根から廻り込むみたいだな、と、言う事で安心して追う事にしたのであります。
    すると、途中からもう一個、こちらはスキー場の右側の水引入道へのコース方向から来たらしいものが加わりまして、これが不忘への冬のノーマルコースなのだな、と大きく安心であります。

    次の赤布はどこだぁーい、と探すんですが・・・

      大東のような沢筋も厄介なんでありますが、こちらのような吹き曝しもまた厄介でありまして、標高が上がると風も強く、35年ぶりの対風姿勢を取ったりするんであります。
    それでも瞬間的な突風で、これでもかぁ、と連続で叩き付ける風ではないのでまだ凌げるんですけれども・・・。
    晴れていると言っても地吹雪が舞うと一瞬真っ白になる訳でして、ゴーグルの中で凍って曇ったメガネと相まって、視界はとても悪い訳です。
    そんな時に限って・・・いや、そう言う場所に出たから吹く訳ですが、広い雪原で次の赤負が見えないんであります。
    ここは、アレですか?樹木が無いので竹の赤布を打って行ったんでしょうか?まあ、コンパス見てろ、で済む距離ではありますが。

    たった一個の赤布がどれ程心強いか・・・。

     いやぁ、冬山だぁー・・・本物のふゆやまだわ・・・35年ぶりで鼻毛が凍ったもの、こりゃぁ間違いなく冬山だぞぉ、と、わくわく気分であります。
    寒いし、もの凄い強風なんでありますが、基本的には空が晴れていると言う事で恐怖心が無いんであります。
    もしもこの風で吹雪だったら、とっくに撤退しているし、いくらも歩けなかったと思うんであります。
    しかし、強風は収まる気配どころか、強くなる一方で、樹林帯の中でも飛ばされそうな風が吹くようになりまして、もう無理かなぁ、と思うんであります。

     
    どのくらい埋まるか、なんとなく分りますか?

     さて、寒いとか、風が強いは何ともないんでありますが、問題は積雪であります。
    1300メートルを越えてからは、ずーっとくるぶし以上膝くらいのラッセルで来たんでありますが、1400になってからは、吹きだまりでは膝上20センチ、又下10センチまで埋まるようになったんであります。
    こうなるともうダメでありまして、1馬力では1時間漕いでもナンボも進まないのであります。
    たぶん、1時間で500メートルは無理でありましょう・・・で、やぁーめた、であります。
    本日の撤退地点は1450メートルでありました・・・これで今シーズン3度目の撤退であります・・・山頂は遠いなぁ。

    山頂で記念写真撮れない悲しさ・・・風の弱まった樹林帯で撮ってみました。

     さあてと、撤退だと決ったら自分のトレースを辿って・・・ありゃぁ、僅か10分前の足跡が消えてる。
    うひゃぁ・・・これって、赤布無い、GPS無い、吹雪いて視界無い、なんてなったら死ぬな、と。
    まあ、スキー場目掛けて下れば良いと言う気楽さは有るにしても、やっぱり不忘は厳しいなぁ・・・うれしいなぁ。
    そんな訳で、ズッポズッポと埋まりながら、帰り道なのに真剣に赤布を追うと言う、正に冬山なんであります。
    突風に背中を押されつんのめる様にして下るんでありますが、雪が深くて、下りなのに疲れるんであります。
    うーん、本気で登るんなら相棒が欲しいなぁ・・・なぁーんて思ってみただけさ・・・やっぱし、独りがいいや。
    で、スキー場近くの樹林帯に入ってからは御散歩気分でのんびりと、樹木に付けられた名札など見ながら下りまして、スキーセンターへ下山の報告をしたのが、1時チョット過ぎでありました。

     標高差で250メートル、距離で1.2キロ・・・後チョットなんでありますが、山頂は遠いんでありますねぇ。


     この話 完


    まあ、適当に書いてますんで、間違いが有っても見逃してやって下さい・・・


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


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