ちょこっと行って来る山登り


    No.2 カケスガ峰(1348m)〜雁戸山(1484.6m) 〜南雁戸(1486m)



     先週、北泉が岳に登ってすっかり山の空気の虜になった元海おやじは、早く本物の山おやじになりたいと、本日も山へと向かったのでありました。
    先週同様、山の選択にはとても迷ったのであります。
    まず、平成20年、ただ今現在の山の事情、様子を全く知らない弱みが有りますので、どうしても慎重にならざるを得ない訳であります。
    いやいや、海も怖いっすよ・・・潜っても、船で行っても、おっかない事も多々有りますですよ。
    しかし、ダイビングは体力とはあまり関係がなく、器材に頼る部分が大きい訳ですが、山登りは、まったくもって自分の身体だけが頼りでありますから、どうしても用心深くなります。

     山登りと言うのは面白いもんで、永い事登っているベテランだと威張っても、毎日登る訳ではなく、ほとんどの人はたまの休みに出掛ける程度であります。
    なので、普段の鍛え方如何では、歳くったベテランこそ、知識だけの講釈ベテランになってしまうのであります。
    その点がダイビングとは大きく違います・・・ダイビングは経験が蓄積されて、年数、本数と技量は確実に比例しますからね・・・。
    で、おっさんは体力に今イチ自信が無いので山選びに腰が引けている訳であります・・・前ぶり講釈ここまで。

     ちょっとバランス感覚を確認してみたくて雁戸を選んでみました。
    歳をとって一番衰えるのはバランス感覚だと私は思っていて、正直、今の自分のそれは、20代の半分も無いと自覚している訳です。
    と、言う事で、手軽だけれども狭い稜線と岩場歩きでバランス感覚を要求されるのが雁戸山なのであります・・・それ程大げさでもないか?
    今は車で笹谷峠までひょいひょいと登れるのでアプローチが短く、短時間で割と楽に雁戸まで登れるのであります。
    私が10代の頃は北蔵王はベテランの山と言われていて、ロバの耳か蟻の戸渡りか、などと言われていたもんです・・・今じゃ爺様が登っておりますが。

     笹谷峠の駐車場にはトイレットペーパー完備の立派なポットン便所もあり、出発前の準備がしやすいので、婆様や爺様にも都合が良いのでしょう。
    本日は平日で月初め、真っ当な仕事に就いている人間ならばとても休みを取れるような日ではない訳で、こんな時に登っているのは、暇な年寄りか写真屋のおやじ位なものであります。
    そんな訳で駐車場に到着した8時30分には既に車が5台も有り、爺様が二人程身支度をしていました。
    私もさっさと身支度をして・・・と、言ってもスリッパからトレッキングシューズに履き替えて、頭にタオルの鉢巻きを巻くだけでありますが・・・。

     35年ぶりとはいえ、雁戸は夏冬あわせれば10回は登っていますから、何となくイメージは出来上がっておりまして、地図なんか見なくても山を見ればルートが浮かぶのであります。
    で、少し歩くと有耶無耶の関へ、と言う看板を見つけたので、迷わず進んで行くと・・・なんだか下って行くでは有りませんか?
    えっ・・・?下る事はネェでしょ?・・・山登りに来たんだよ?・・・あれっ?・・・笹谷へ下っちまうのか?・・・それにしても、縦横に踏み跡があるなぁ・・・分かんねぇなこりゃぁ。
    で、んじゃぁ、と、言う事でガイドブックを引っ張り出してみると、私が歩いている方向で良さそうな事が書いてある。
    そして、親切にも「この辺りは遊歩道が縦横に有るので注意せよ」とも書いてある・・・誠に親切である。
    がぁ・・・どう注意すれば良いのか、できればそこまで書いてほしかったと・・・一人でぶつぶつ言いながら歩いて行くと、カケスガ峰へと言う看板に出くわした。
    はははははぁーだ、カケスガ峰まで出れば雁戸はすぐそこ、方向に間違いなし・・・これで安心して黙々と歩きに専念できると言うもんだ、と。

     雑木林のだらだらした登りを快調に・・・?行くはずなのだが、なんだか先週に比べると身体が重い。
    足が重く、身体に切れが無い・・・あっ、先週の疲れが疲労したままなのだ・・・嫌だなぁ、年寄りみたいだなぁ・・・まあ、ゆっくり行くべ、と。
    クマザサを刈り払った歩きやすい道を進むと、前方に「旭日旗」が旗めいているでは有りませんか・・・おおっ、山中に右翼のアジトでもあるのか?驚いた。
    がぁ・・・近寄ってみると、旗には「国土地理院」と記されており、三角点の測量に使われた旗のようで有りました・・・なんだ、つまらん。

    山の中で見つけた「旭日旗」です

     今、カケスガ峰までの道を懸命に思い出そうとしているのでありますが、さっぱりなのです。
    たぶん、眺望の無い雑木林の道だったもので、感動的な記憶が無いのと、尾根に出てからの道があまりにも素晴らしかったからだろうと思います。
    眺めは良く無いのですが陽当たりの良い場所には沢山の竜胆(リンドウ)が咲いておりまして、これはキレイでした。

    リンドウは採って持って来ても根付きません

     笹谷の駐車場で車を降りた時から寒くて風が強かったのでありますが、まもなくカケスガ峰に出る手前では、背の高い木は風に煽られごうごうと唸って来まして、稜線では吹かれるだろうな、と覚悟を決めたのであります・・・寒いの嫌い。
    やがて木々の背丈が低くなり、灌木とクマザサの平坦な広場に出て、たぶんここがカケスガ峰のてっぺんだと思う・・・平坦で良く分からないピークなんです。
    カケスガ峰には山頂を示す標識はたぶん無かっと思うのであります・・・私は記憶にございません、よ。
    しかも、25000/1の地形図には標高も山の名前も載っていなくて、1348mと書いた標高は私が地形図から勝手に推測したものです・・・インチキか?

    眺望が開け、神室岳から奥に大東岳が見えます。

     さて、稜線出るととんでもない展望が待っていましたが、昔の景色と明らかに違うのは笹谷峠の向うに見える山形自動車道であります。
    人工物は嫌いですが、正直に言うと、長い橋になった道路の曲線はとても美しかったです・・・それでも、人工物は認めないよ。
    ここら辺りからの眺望は好きなだけ持って行ってくれと言わんばかりに開けていまして、下の街は、山形市内と、宮城側はたぶん白石方面が見えていると思います・・・適当に言ってます。
     尾根筋の道は眺望が良いだけに遮るものが無く、風が強く、時折濃いガスが出て、色づき始めた紅葉も何となく色あせておりました。
    秋晴れの快晴と言っていた天気予報は、少なくても北蔵王の一帯では大きく外れていた訳であります・・・ほんとにもぉー・・・。
    歩き出した頃には薄日も射していたのですが、やがて本格的にガスが出て、雁戸の手前の前山を見る辺りでは風よけを着込まないと寒くなり、おまけに寒さで耳が痛くなりました・・・いゃ、これホントーですよ。

    這い松を入れて雁戸山を撮ってみました・・・お日様が隠れてて、トホホ

     標高800mの笹谷の駐車場で気温が10度でしたから、1450メートルでは計算上は約4度下がって6度なのですが、体感温度は風速1メートル強くなるごとに1度づつ下がると言われております。
    従って本日、平均して10メートル、時折吹く突風は15メートル程度になっていましたので、体感温度はマイナス5度以下と言う事になる訳です。
    ここで、寒さに立ち向かう私の出で立ちは、軍手・タオルの頬かむり・ガムテープで穴を塞いだウィンドブレーカー・20年着込んだジャージのズボン・・・であります。
    この日も数組、数人の登山者に出会っているのですが、皆様の出で立ちは素晴らしい・・・たぶん、北アルプスにもそのまま行けます。
    で、昔と違うなと思うのは、皆さんがスキーのストックのような杖を持っている事と、雪もガレ場も無いのにほぼ全員がスパッツを巻いている事です。
    私の山ズボンはジャージのトレーニングウエアであります・・・伸縮性・吸汗性・即乾性に優れ、岩場の引っかけと摩擦に弱い外はバッチグーだと思っております。
    アンダーシャツには少し気を使って、ハイテク素材の乾きやすいものを使用しております・・・ユニクロで2枚で980円・・・安くなりましねぇ。
    で、その上には、捨てても良い程度に着古した長袖のポロシャツやラガーシャツ等を羽織っております。
    全体的にとてもリーズナブルなファッションでまとまっており、行き交う登山者の中で一番貧乏臭いと、自信を持って言い切れるのであります。

    どこの風景だったか? 前山だと思うんですが・・・?

     さて、雁戸の手前に前山と言うのが有りまして、これはニセの頂上でありまして、本物はもう一個先です。
    でも、この偽物も中々迫力も有るし登り応えが有ります・・・雁戸は小さなピークの一つ一つがとても味わい深くて良い山です。
    稜線には私の身長の半分程度の草木しか無く、吹き付ける風はもろに当たります。
    そんな風の中で斜面を這うように伸びる「這い松」の姿が印象的であります・・・。
    這い松はたぶん正式には「北五葉松」と言うのだと思いますが・・・植物は専門外でして良く分かりません・・・へへへっ。

    雁戸山への登り・・・だと思うんですがぁ?

     風は冷たいのですが登りもキツいので、歩いている間は汗をかいて、寒さは感じません・・・あれっ、下りでも汗かくなぁ?
    雁戸は痩せた岩の尾根が続いて迫力があります・・・これぞ山岳だぁ、と言う感じですね。
    私の気持ちとしては、先週の北泉が岳は「山」と言う感じで、本日の雁戸山の方が「岳」と言うイメージなのですが、名前は逆です・・・まあ、どうでも良いことでした。
    さて、雁戸への最後の登りは少し慎重に行かざるを得ませんで、それなりに緊張もさせられます・・・まあ、平衡感覚の確かな若い衆なら走って登れますけれども。
    私は手足を全部使って四つん這い状態で登ります・・・格好悪いですが、急坂で手を使って四つん這いになると足がとても楽になるのでありますよ。
    ふうふう言いながら最後の登りを詰めると、そこは思いの外広い頂上で有りました。
    8時40分に歩き始めて雁戸のてっぺんまで2時間5分で、10時45分の到着でありました。

    山の頂上と言うのは、眺めが違うだけでどこも一緒です。

     山登りの醍醐味は歩いて来る過程に有るのだと私は思う訳で、山頂に立つのは一つの区切り、登ったお印だと思っております。
    そして、山頂では皆さんが休憩するので、場合によっては混雑していたりで、私はあまり長居はしません・・・。
    山頂は一番高いので、天気が悪い場合は風強かったりで落ち着かないと思いますが、どんなもんでしょう?・・・景色眺めても山ばっかりですし・・・?
    さて、登り切ってしまった訳ですが、お昼御飯を食べるにしてもちょっと早いし、景色眺めるって言ってもねぇ・・・手持ち無沙汰です。
    うーん、時間はまだ大丈夫・・・じゃぁ、ついでに南雁戸に行って見るか、で、ほとんど休息も無しで先を急ぐ事にいたしました。

     ガイドブック「宮城県の山」の案内では、このコースは雁戸から引き返す事になっていて、説明も概念図もありません。
    がぁ、そこにぬかりの無い私は、50000/1、蔵王全山の案内図をちゃーんと持参している訳であります・・・持っていて当たり前か?
    で、それによると往復で1時間程度で、150メートル程下って登るように記されておりました・・・うーん、ここから150下って、150登ると、帰りもそれを繰り返しか?
    地図を読むと何となく往復1時間では無理っぽいと思ったのですが、まあ、外れても大した距離ではないので、んじゃぁ・・・と、出発であります。
    しかし、歩き始めるとすっかりガスって風も強く、40分掛かって南雁戸に着いたのでありますが、カメラを構えてもたぶん写らないだろうと言う程の霧でした。
    しかも強風で立ち止まると寒くて・・・そんな訳で、山頂看板の写真さえも撮らずにすぐに戻る事に・・・。
    で、戻って来て、南雁戸手前のピークの尾根の風裏になるところで昼飯休憩と・・・眺めが良くて、おにぎりが美味くて・・・。
    昼飯と言いましても、おにぎり2個とゆで卵2個を食べて、お茶を2杯程飲むだけですから、あっという間であります。
    おにぎりを食べると、身体から失われた塩分が補給されるからなのか、たちどころに力が回復します・・・これホントーです。
    山登りに余計な食い物はダメであります・・・梅干し入りのおにぎりは、理にかなっている訳でありまして、これに勝るものは無いのであります。
    そう言えば、南雁戸から戻って北雁戸の頂上に着いたら、4人の爺様のご一行が、ストーブの上に鍋焼きうどんを乗せて飯の準備をしていた。
    気持ちは分かるが、縦走している訳でもないんでしょうに・・・まあ、やりたくなる気持ちは十分分かりますょ、と。
    北雁戸・・・うーん、私は昔の癖で、どうしても北を付けて呼びたくなってしまうのでありますねぇ・・・25000/1地形図でも正式名称「雁戸山」なのですが・・・。

    誰かの親切で工事用の虎模様ナイロンロープが下がっていますが・・・

     さてと・・・登ったら降りないと帰れない訳です。
    下りは楽だろうと言うのは、間違いではないのですが、それもコースによりけりだと思う訳であります。
    登りに苦労した所は間違いなく下りも難所になる訳で、下手をすると下りの方が厄介な事が多いと思うのであります。
    で、登りは四つん這いでなんとでもなるのですが、下りはそうも行きませんで、けっこう厄介なのであります。
    まあ、慎重に、一歩の次の一歩を計算に入れて足を運べば良いのですが・・・股下の短い年寄りは大変だわねぇ、見てて笑いそうになりました・・・不謹慎か?
    と、言う事で、帰り道は登りとは別ルートで、通称「山形コース」と呼ばれる方へ廻りました。
    私はガイドブックと逆回りをしたのでありますが、多分、私のコース取りが正解だと思います・・・なんちゃってぇ。
    まあ、私の勝手な感想で、日当たりの悪い山形コースは泥だらけで歩き難いと言う事だけなのですが・・・真に受けないでくださいよ、と。
    そんな訳で、駐車場まで下り切って、1時40分・・・スタートが8時40分ですから歩行距離、推定10キロ、5時間の山歩きでありました。

     いやぁ・・・山は良いです・・・なんだか人間の原点に戻れる気がします・・・なんちゃって、意味不明、と。

     この話 完


    まあ、適当に書いてますんで、間違いが有ったらゴメン・・・?


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


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