ちょこっと行って来る山登り


    No.3 乳頭山(烏帽子岳1478m)



       秋田駒ヶ岳近辺に登る事にして、紅葉が熟すのを待っていた・・・。
    いや、正直に言うと、乳頭温泉に惹かれて行ったついでに登ったと言うのが本音なのですが。
    7時半に仙台泉から高速に乗って盛岡へ向かう・・・9時ちょうどに到着・・・順調・快調。
    国道46号は良く走った道だったが、私の記憶にある道路とは随分違って走りやすい、今時の道路に変わっていた。
    仙岩トンネルが化粧を施してはあったが昔の面影を残していて、それが少し嬉しかった・・・要するに古くさいのです。
    生保内と書いて「おぼない」と読む・・・私の中の意識では随分遠いと思っていたが、盛岡から1時間もかからなかった。
    生保内から341号に入り、田沢湖の脇を抜けて乳頭温泉方面へ県道127号を行き、129号に乗り換えて止まりまで行く。
    行き止まりが乳頭温泉の一つ、黒湯の駐車場で、10時20分の到着だった。
    駐車場には、キノコ採りの人は駐車に際して、宿のフロントに一声駆けてください、との立て札があった。
    おお、無断駐車お断りと書かない所が凄く優しいな、と感激するとともに、俺は登山だからな、まあ、よし、だなと勝手に決めて、そそくさと身支度をして出発、と。
    まあ、それでも気が引けるので車は一番隅っこの邪魔になり難そうな所に停めるあたり、とても小心者なのだが。
    黒湯の脇が乳頭山登山道の入り口になっていて、露天風呂の脇を抜けて行く・・・中は塀で見えないが。

    黒湯から歩き始めてすぐ蒸気が吹き出しているのが見られる

      黒湯の周りにはいたるところで蒸気が吹き出しており、成る程ねぇ、といかにもそれらしい雰囲気で、硫黄の臭気が立ちこめている。
    へぇー・・・ほぉー・・・と、温泉の湧き出る風景や紅葉に見とれながら行くと、さあ、これから山ですよと言う感じで雰囲気と味のある橋を渡るのだが、これがなんとも趣があって良い。
    時間が許すなら沢に入ってこの辺りの写真を撮っていたいと思った。

    この橋を見ただけでも来た甲斐がありましたよ。

     渡った沢の脇を平行にしばらく行って、後は尾根沿いになるのか、約1時間程、展望の無い雑木の中を黙々と行く。
    急な登りは無く、道は遊歩道並みに整備され、誰でも気軽に登れるやさしい山で、成る程ね、乳頭山なんですね、と妙に納得。
    整備の行き届いた登山道には、どうやって誰が担ぎ上げたのかと思う太い角材が敷かれていて、秋田県の山を守る姿勢に頭が下がった。
    遊歩道形式の登山道は、登山者の足下の為と言うよりも、これ以上勝手に道を造らないようにとの配慮だろうと思いう。
    自分も登っているのでナントも言い難い話だが、山の自然はとても繊細で、登山靴で踏み固められて絶滅した高山植物群は数知れずなのだ。

    角材の重さを考えると、誰が強力したのか、とても気になりました。

     歩き始めて40分くらいの所に一本松温泉があった。
    環境庁が設置した立て札には「一本松温泉跡」と記されているので、かつてこの場所に湯治場があったのかも知れない。
    確かにここは、山の中にしては不自然に平らな広場ではあった。
    何を隠そう私は、地図でこの温泉を見つけたが為に乳頭山に登る事にしたもので、時間が無ければここまででも良いと思っていた程だった。
    幸いまだ時間はたっぷりあるので頂上を目指し、帰りに天然純粋の野湯を堪能する事にして先を急いだ。

    場所の雰囲気はこんな感じで、詳しくは温泉のページで

     地図によれば一本松で標高が950メートル程度となっているので、高低差で残り500メートルだ。
    しかし、距離は残り1.9キロと短い・・・えっ?急な登りになると言う事か?
    はい、その通りでした・・・ここからが乳頭山の山登りの始まりと言えそうで、まずまず、それなりにちゃんとした登山になった。
    クマザサと雑木に囲まれ展望が無い道を登り続けると、背の低いアオモリトドマツが一本立っていた。
    そこを過ぎると急に樹木の背が低くなり、クマザサも根曲がりになって視界が開けた。
    すぐ間近に田沢湖温泉の建物が見えた・・・たぶんそうだと思うが、定かではない。
    ふうふう、と登って行くと展望台に出て、そこからは田沢湖の眺めが見事だった・・・ちょうど雲の切れ間から輝く湖面がのぞいたのだ。
    ここから先はきっぱりと山岳的で、樹木の多いやさしい林間の風景は終わった。
    登山道はしっかりと管理、手入れが為された山で、いたる所に環境庁の名前入りの道標や歩道が整備されており、傾斜や距離も手頃で登りやすい山だ。

     
    山の環境を守る為の歩道なのでしょう

     地を這うような低い笹と草が生えているだけで、木の類いは全くない高原に出ると乳頭山のテッペンが見えた。
    成る程ね、今私が歩いているのは、おっぱいの斜面と言う事で、あのボッチが乳首と言う事なんだな、と景色を見て納得した。
    誰が名付けたものやら、乳頭山とはまさにぴったりで、女性的な優しい山だ。
    12時20分山頂到着。
    頂上は岩のガレ場になっており、南西側に向かってはストンと崖になって切れ落ちていた。
    山頂には先客が3人おり、それぞれが昼飯と休息を取っていた。
    薄曇りで風が強く肌寒かったので、私は風を避けて少し下った斜面に腰を下ろし、昼飯のおにぎりを頬張った。

     
    この格好で山登りはダメなんでしょうか?

     毎度・・・と、言っても3度目の山登りだが、なんだか他の登山者が私に向ける目線がとても冷ややかだと思うのは錯覚なのだろうか?。
    私はたぶん、超昔風の登山者だろうと思うのだ・・・他の登山者と行き交う時、すれ違う時には「ん、ちゃぁー」と声を掛けるのだが、これは当然の挨拶だった。
    滅多に人と行き会う事の無い山中で稀に他人に会うと、自然に「こんちはー」と、挨拶が口を吐いて出るものだ。
    私としては昔からの習慣で「ん、ちゃぁー」と会う人ごとに声を掛けているのだが、返事の率は6〜7割と言う所だ。
    そして、私が気になるのは、返された挨拶がちょっと迷惑そうで、面倒くさそうなお義理のように感じる事なのだ。
    私は平日の人の少ない山を狙って行っているので左程多くの人に会う事は無いが、最盛期の混雑する山であれば、行き交う人の全てに挨拶をしていたら大変な事になるのかも知れない、と思う。
    そんな事から、今時は山で行き会っても、昔のようにホイホイと挨拶は交わさないようになっているのか、などと思っているのだが、どうなんだろうか。
    もう一つ、挨拶にためらいを感じる原因が思い当たる・・・私の登山の格好が、他の登山者の気分を害しているのかも知れないと思うのだ。
    乳頭山山頂で撮った写真の私を見ていただければ、なんだか山を知らないタコおやじが、勘違いをして登って来ちまった、と言う風情なのが分る。
    山を舐めているかのような格好の私が同じ山に登って来る事を許したく無い、と、そんな風に見られているのを強く感じるが、絶対に気のせいでは無い。

     腰を下ろしてじっくりと辺りを眺めれば、おお、あれが明日行く秋田駒か? 美しい山だ、よしっ、もうすぐ行くから待っておれ。
    おおっ、こなたは?・・・むむむっ、その山容は、裏岩手山か・・・いや、これもまた実に美しい・・・よっしゃ、いずれあれも登ろう、と。
    さて、おにぎりとゆで卵と番茶で腹ごしらえをして、セルフタイマーでの記念写真も撮り終えて、後は下るだけだ。
    おおっと、そうそう、一本松の「野湯」が私を待っているのだ・・・では、いざ出発。

     樹林帯に入ってから天気が良くなり、ほとんど快晴になった。
    登りの時にはさほど美しいとも思わなかったブナなどの紅葉が、抜けるような青空を背景に錦絵を織りなしていた。
    所々で足を止めて写真を撮り、お茶など飲んで秋の山の天然の美を堪能しつつのんびりと下って行った。

     程なく待望の一本松温泉に着いて、一応人影や熊影など無い事を確認し、握りふんどしで湯に浸った・・・とても熱くて、入るには根性が必要だ。
    脇を流れる一本松沢は上流にも温泉があるのか、沢の石が硫黄の黄色に染まっている。
    25000/1の地形図を見ると他にも野湯があるようなのだが、時間は既に2時を廻っているので探しには行けなかった。
    知らない山でうろうろするには日暮れが近すぎる・・・秋山の沢沿い、谷間の日暮れは思っている以上に早く、突然暮れ出す。

     一本松温泉から黒湯の駐車場までは遊歩道的な山道を30分も下れば良く、3時少し前に到着した。

     この話 完


    まあ、適当に書いてますんで、間違いが有ったらゴメン・・・?


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


    INDEXに戻る 次のページへ