ちょこっと行って来る山登り


    No.24 蛇ヶ岳(1400m)〜船形山(1500m)



       ひたすら、寒かったぁー

         やっと船形山の頂上踏めました

     人の一生は、重い荷を背負いて、行くが如し・・・まさに、そのとおーり、だと思いますが、山登りも、重い荷を背負って行く方が楽しいのであります。
    そんな訳で、昨年12月17〜18日に狙って惨敗したコースを再度試みまして、行ったのが船形山でありました。
    へへへっ、勝算は有りました・・・もう春山ですもんねぇ、と・・・しかし、行ってみたら、春山ではなく青木だった・・・?
    つまらない冗談でした・・・春山ではなく冬山でありまして、まず、とにかく寒かったのであります。

     いつもの様に旗坂の駐車場に車を停め、この前の事が有りますから、綿密な登山届けを提出しまして、出発したのが8時45分でありました。
    この時点では気温は低いのですが雪などの気配は無く、まあ、普通に春の様子だな、と言う塩梅で有りました。
    登山道に入りますと、この所雪が降らなかった為か、スキーやらスノーシューやらズボ足やらと、様々な踏み跡が、賑やかでありました。
    気温が低く締まっているのでスノーシュー履かず、アイゼン付けずでも快適歩行でして、背中のスノーシューは要らなかったか?なんて思って歩いておりました。
    本日は約20キロ背負っている割りには良いペースでありまして、一群平まで1時間ちょぼでありました。
    しかし、この辺から雪面がガリガリ君やらバリバリ君になりまして、アイゼンの登場でペースダウンであります。
    どのくらい硬いのかと言いますと、場所によってはピッケルの石突きがビィーンとなって跳ね返される位、カッチンコッチンの氷であります。
    昨夜の冷え込みと曇り空で凍ったまま緩まなかったのだろうと思います。
    しかし、この辺りから三光の宮までは平坦っぽいのですがトラバース気味で、アイゼン歩行には塩梅良く無い地形であります。
    で、私の安物のの防寒ブーツは底にシャンク(鋼のバネ)が入ってなさそうでねじれるんであります・・・不安定で歩き難いんです。
    ふぅー・・・もう登山道具で買う物は無いなと思った矢先に、肝心要の登山靴に問題発生とは・・・まっ、雪山終わりだから来シーズンだな、と。
    そんな訳で谷足になる右に負担が掛かるんでありまして、ようやく良くなったばかりの膝がぶり返しやしないかと心配でありました。

    アイゼンを履く時に本日の装備を撮ってみました。ピッケルが長いのは杖代わりだからです。

     やっぱし春山だなぁ、稜線に出てもいないのにアイゼンだもんなぁ・・・ワカンにすりゃ良かったな、ブツブツブツブツ・・・。
    天気予報では荒れ模様で雪になると言ってましたが、まだ降る気配は無く、しかし、気温だけは冬に逆戻りであります。
    で、三光の宮には10時45分着の、所要時間はきっちり2時間でありました。
    ちょっと気になったんでありますが、あまり間違いそうも無いここまでの道筋に、なんとも、随分賑やかに赤布が下がっておりました。
    それにしても、思い思い好き勝手に打たれた赤布は、時に余計な混乱を招く元でありまして、ちょっとこれはやり過ぎじゃないのぉ、と、普段は赤布大好きな私が思う程でありました。
    ところが、三光の宮を過ぎて升沢避難小屋までの込み入った雑木林にはほとんど赤布が無いのであります・・・これ、不思議です。
    で、私が12月に付けた目印の赤テープは、環境保護かなんかの人達がゴミとして撤去してくれたのか、一つも無くなっておりました。
    でもなぁ・・・12月の雪が降った後に付けた訳だから、下手に撤去されて遭難騒ぎなんてなったらなぁ、などと考えてみたりして・・・。
    ああ、そうか、適当にくっつけたので風で飛んじまったんだな、と言う事で納得しましょう・・・低かったから雪に埋まってるのかも。

     さて、ここから升沢小屋へ行って荷物を下ろして船形山にアタックするか?・・・でも、雪降って来たなぁ、と。
    たぶん、小屋に入ってケツを降ろしたら動くの嫌になるかもなぁ・・・天気悪いし、吹雪模様だし。
    よっしゃぁ・・・荷物背負ったまま蛇ヶ岳に行ってみますかね、と言う事で、蛇ヶ岳へ向かって伸びる尾根を確認して登り始めた訳であります。
    もう既に標高は1200mを越しているので、蛇ヶ岳の1400mなんぞは屁みたいなもんである、と思って登り始めたのであります。
    が、しかし、山高きが故に尊からず、千里の道も一歩から、な訳でありまして、結構きつい登りでありました。
    後で良ぉーく地図を見ると、どうしてこの尾根に登山道を付けなかったのか、何となく分るのでありますが、ひたすら急で単調な登りですもん。
    まあ、しかし、この道を選んだのは君自身だ、しっかり行きたまえ、と、天の声が聞こえるので行くしか無い訳です。

    蛇ヶ岳なんて名前だけに、樹木ものた打ってまして、風景が暗いです・・・常に強風なんでしょうね。

     フゥフゥゼイゼイと息を切らして登るんでありますが、気温が低いと自分の吐く息でメガネが凍っちまって視界が悪い訳です。
    おまけに辺りは吹雪き模様と強風の地吹雪とが相まってほとんど白一色の様相でありまして、曇ったメガネに白い雪原では何も見えないのであります。
    まあ、カメのような歩みですから、そんなに見えなくても差し支えないとも言えますが、楽しく無いのと、地図を見るのが億劫になる訳であります。
    ああ、なんだか平らになって来たぞ、高い木が無くなったな、強風が吹き付けるな、主稜線に出たのかな、で、メガネをずらして見ると、もう一段向うにもう少し高そうな所が・・・あれが頂上か、と。

    背負った荷物はたった20キロ、されど20キロ・・・へとへとです。

     歩いている間は汗が吹き出すんであります。
    頭に巻いたタオルがびしょ濡れで、そして、垂れる滴は凍ってツララになるんであります・・・ホントです。
    そんな塩梅でありますから、吹雪で何も見えない山頂で長居しても仕方ない訳で、記念写真を撮ったら速攻出発であります。
    いや、なんと言っても風が強くて、本当はお茶の一杯も飲みたいんでありますが、悠長な事をしていると凍っちまいますから・・・。
    そんな訳で、適当に見当をつけて升沢避難小屋目指して下降であります・・・概ね北方向で良かんべね、と。
    蛇ヶ岳からの下りは快適でありまして、程良い斜面の灌木の間を抜けて下って行くと、あいやぁードンピシャだものぉー、でありました。
    雪山はどこでも歩けるので楽しさ百倍な訳です・・・でも、登りは勘で行けますが、下りは結構難しいもんであります、裾は広がりますからね。
    と、言う事で、思いの外早く避難小屋に着いちまった訳で、うーん・・・三峰山か後白髪山まで行ってくれば良かった、なあーんてね。
    実際は蛇ヶ岳の頂上で腹へって、寒くて、かと言ってザック降ろして何か喰うなんてとんでもない訳でして、レバ・タラです。
    そんな訳で、升沢避難小屋到着は1時でありまして、ちょっと早すぎるなぁ・・・何して時間潰すよ?であります。  

    本日のお宿、升沢避難小屋であります・・・避難小屋を予定して使うのもナニかな、と。

     取り敢えず昼飯だよな、と、言う事で、沢へ水汲みに・・・ナニっ?沢は何処?・・・へっ?・・・埋まっちまったの?
    沢は雪ですっかり埋まり、チョロリとも流れていない訳です・・・これ、ヤバイかも。
    本日は、水は確実に有ると信じて来たから、番茶を500cc以外持っておりませんで、しかも、雪を溶かして水を作るにしても、ガスボンベは小さい方の250グラム一本だけしか持っていないんであります。
    アッチャぁ・・・やっちまったなぁ、であります・・・凍るの忘れるなんてバカだなぁ、でも、12月にはあんなに威勢良く流れてたじゃないかぁ、と。
    まあ、昔々はガソリンコンロが目詰まりして火が着かず、インスタントラーメンにスープの粉を掛けて喰った事も有るし、本日はクリームパンやらチーズやらサラミやら、缶詰もあるし、で、取り敢えず水を作ろうと。
    考えようによっては結構な暇つぶしが見つかったもんだ、と言う事で、硬く締まってきれいな氷の層を掘り出そうと、先人がションベンなど垂れそうも無い斜面を選んで氷掘り開始であります。
    こんな時に簡単に掘れる軽い雪の固まりは効率が悪くてダメであります。
    締まった氷なら1対0.7や0.8になりますが、降り立ての粉雪なんかぎっしり詰めても、溶けたら1対0.2に成るかどうか、であります。
    まっ、そんな訳で、手持ち無沙汰で話し相手もいないので、んじゃぁ、昼飯前だけど、と言う事で、1本しか無い貴重な缶ビールをプシューっと。
    で、水が出来たので味噌ラーメンなど作り、おにぎりを一つ齧りまして、乾いた衣服に着替えて、昼寝であります。
    外は吹雪模様で散歩もちょっと、で、ラジオを聞きながら寝袋でうとうと、と・・・。  

    足に履いているのは特製ぬくぬく足袋で、スボンは新兵器の羽毛の防寒ズボンです。

     今回の小屋泊は、来月行く予定の鳥海山と白神山での小屋泊の予行演習を兼ねておりまして、防寒と軽量化のテストをしてみた訳であります。
    55リットルのザックに着替えその他の装備一式を入れて20キロを切る重さにまとめる事、と、氷点下10度以下でスリーシーズンの寝袋で寝る、テストであります・・・ここの小屋はストーブなど暖房は何も無いのでテントより寒い訳です。
    結果から言うと、万が一の場合の装備として持っている、羽毛の上下を着て寝れば、氷点下10度は全然平気、と言う事でありました。
    これで寝袋がコンパクトになり、ザックに余裕ができる訳であります・・・しかも軽くて済むし。 
    そんな訳で、夕方4時頃起きまして、また水など作って晩飯の支度をしつつ、ウィスキーなど飲みながらラジオを聞いて独り頷いたり笑ったりして過ごすのであります。
    で、6時過ぎには豪華ボンカレーディナーも喰い終わり、ウイスキーも底をついたところで酔っぱらって寝ちまう訳です・・・。

    朝焼けは、早い時間に天気が崩れるのだそうで・・・これは6時頃です。

     いやぁー、昨晩は賑やかでした・・・強風で小屋がミシミシ言うし、入り口にぶら下がっている鐘が風で勝手にカランコロン鳴るし。
    まず、気の弱い私は朝までぐっすりで、4時に目覚めました・・・が、しかし、まだ強風は収まらず、ビュービュー吹いております。
    船形の頂上は無理かなぁ・・・たった1.5キロなのに、標高差はたったの250mなのに、遠いなぁ、と、半ば諦め気分で朝飯の支度であります。
    昨晩、水を1リットル作ってポリタンクに入れておいたのでありますが、まさか全部凍るとは思っていなかったので驚きであります。
    ここまで冷えたのかぁ・・・?俺は快適に寝たけどなぁ・・・ここの水凍りやすいんだな、と。
    一部凍っていなかった分に新たな氷を足して溶かし、それをポリタンクに入れて水を作り、朝飯の醤油ラーメンを作りました。
    そして、食べ終わったスープに1個残ってたおにぎりをポチョンと入れて煮ると、海苔・梅干し入り雑炊の出来上がりであります。
    これが絶品でありまして、海苔の香りと梅干しの酸味の調和がなんともカントもな訳であります・・・ホントに美味いです。
    で、行けるかどうか分らないけど、行けるとこまで行ってみよう、と、アタックザックに装備と行動食を入れ、外の様子を見てみますと・・・うぉりゃぁー・・・雲が吹き飛ばされて山頂が丸見えだぁー、でありました。
    と、言う事で、小屋を出たのは6時30分でありました。
    まっ、赤布は有るだろう・・・相当登ってるんだろうから、と、気楽に歩き始めたんでありますが、何も無い訳です。
    ふぅーん・・・まっ、目標は見えたから、まっ、後は勘だな、と言う事で、適当に歩いて行くと、おおおっ、赤布が有る・・・助かったぁ、と。
    で、地図をよく見ると雪で埋まった夏道を真っ正直にトレースしている訳で、なんだぁ、そう言う事なのかぁ、と、納得であります。
    私の勘では、夏道の右側の尾根を直登するのかな、なんて思っていたので、ちょっと意外では有りました・・・でも、登ってみて分りましたが、やっぱりこの道が一番楽なようであります。
    沢沿いの夏道は昨晩の新雪が30センチ程も有り、スノーシューを選択して大正解、でありましたが、沢筋を離れて風の当たる斜面に出ると、クラストした氷の上にサラッと新雪が乗っかっており、スノーシューの爪では氷を捉えられず、さりとて、薄い雪の層は上滑りしてずり落ちると言う、ナンともカントも、でありました。
    いや、背中にはアイゼンも有るには有るが、吹きだまりを考えるとアイゼン1本ではちょっとなぁ・・・ワカンにアイゼンのコンビだったなぁ、なんて思いつつ、じりじりと登って行く訳であります。
    時折、まさかと思うような突風が吹き、斜面で耐風姿性を取りつつ、いやぁーピッケル持ってて良かったわぁ・・・と。
    それでも、青空と言うのは恐怖心や不安を払拭してくれる物で、この世の物とは思えない空の青と雪の白一色の斜面を喜々として登って行くのであります。
    さて、強風の主稜線を避けて真っ直ぐ山頂避難小屋を目指し、森林限界を超えた辺りからは完全なアイスバーンでありまして、昨晩の雪も強風で飛ばされている事が伺える訳であります。

    出発が30番で、一番上の山頂の看板は1番であります。

     そんなこんなで風に悩まされながらも辿り着いた頂上は、太平洋まで見渡せる絶景でありまして、風に飛ばされそうで寒いんですが、降りたく無い、これを眺めていたい、と思わせる・・・今期の雪山で一番の景色でありました。
    しかし、現実には、記念写真を撮ろうとデジカメを取り出すと、寒さで電池がバカになっていたり、手袋を外した自分の手の感覚が無くなるなど、快適とは言い難い場所であります。
    せめて風のない一段下の斜面に避難してから景色を堪能しようと、山頂滞在は1〜2分の事でありました。
    いや、ホント、山頂記念写真のとき、柱に身を寄せないと飛ばされるんですから・・・瞬間で25mは吹いてました。

    ラッキーでした・・・風が強いから雲が飛ばされてる訳で、でも寒ぅー。

       さて、名残惜しいんでありますが、寒い訳でして、留まっては居られないのであります。
    それでも、少しでもゆっくり、長く歩こうと、直登して来た斜面を避けて稜線沿いを遠回りして行くのであります。
    山形側は雪雲が湧いて真っ暗で、それがこちらに飛ばされて来ているのに、船形山の上では強風で千切れて消えるのであります。
    蛇ヶ岳へ廻る稜線と、升沢小屋へ向かう沢道との分岐点まで夏道沿いに歩く間に、光の加減でか、遥か松島の小さな島影まで見えたのであります。

    オレンヂ色に光っている所が松島です・・・たぶん。

       さて、小屋まで戻ってぴったり8時でありました。
    こんな絶景、また見られるかなぁ、と思うんであります・・・まあ、登っていればまた何時か、あるでしょう・・・かなぁ?
    春の陽気で麗らかでは、本日のような澄んだ空気は無い訳です。
    かと言って、厳冬期ではいつ晴れるものやら、まず、難しいと思うんであります。
    ラッキーだったなぁ・・・。
    と、言う事で、升沢小屋でコーヒーとクリームパンなど食して、小屋を後にしたのは8時40分でありました。
    途中、一群平で5〜6名の、三光の宮までと言うパーティーとすれ違い、駐車場到着は11時丁度でありました・・・いやぁ、良かった。  


     この話 完


    まあ、適当に書いてますんで、間違いが有っても見逃してやって下さい・・・


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


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