よたよたと、山登り


    No.32 大朝日岳 1870m・・・(朝日連峰)




    6月3日 古寺鉱泉(8:45)〜小朝日岳〜大朝日岳(14:20)・・・避難小屋泊
    6月4日 大朝日小屋(7:30)〜小朝日岳〜鳥原山(11:00)〜畑場峰〜古寺鉱泉(13:00)

     2日前にパッキングも終わり準備万端と思っていたら、なんと、体調が狂って来たんであります。
    なんだか、鼻水は出るし、喉はいがらっぽいし、頭は悪いし、金はないし・・・まっ、それはいつもの事なんですが・・・。
    そんな訳で、この体調で、天下に名高い「大朝日岳」に登れるもんでは無いだろう、と思って諦めていた訳です。
    しかし、まあ、仕事は休みにしてしまったので、ドライブがてら登山口の下見でもして、温泉入って蕎でも食べて、と言う事で出掛けてみた訳であります。

     高速道路は通勤時間帯には100キロまで半額と言う事で、それを見越して行った訳ですが、宮城インターから乗って月山で降りたらなんとなく微妙だなと思っていましたら、見事に100キロを超えたみたいで、作戦は失敗に終わりました。
    まあ、だからと言って手前で一遍降りてと言うのも何だか面倒な訳でして・・・ああ、でも悔しいなぁ、と。

    古寺鉱泉に登山届けを出して裏手の尾根から歩き始めました。

      登山口の駐車場到着は8時30分でした。
    うーん・・・登山口に着いてしまった訳だけれども・・・さて、どーしますかねぇ? ちょっと様子見に登ってみますか? と言う事で靴を履いてみた訳であります。
    しかし、登山靴の紐をキリリと結ぶと不思議な事に、酷かった体調もなんとなく良くなった感じでして、んじゃぁ、やっぱし、行っちゃいますか、と言う事で、さっさと支度をして古寺鉱泉前を通過したのが8時45分でありました。
    この時、鉱泉のご主人とおぼしき方が宿の前で一服しておられまして、挨拶がてら登山道の状況などを伺う事が出来まして、貴重な情報が二つ手に入りました。
    一つは、古寺山へ上がる所の雪渓の赤布の存在(登りは何とも無いが下山では重要なポイント)と、小朝日岳の巻き道は雪が中途半端で行かない方が良い、と言う事でありました。
    なんせ私は、昭文社の登山地図を片手に握りしめ、どこの山へでも突っ込んで行く特攻隊タイプの登山者でありますから、現地の生情報はとても有り難い訳です。

    急登を行きますと、四本の木が睨み合うように立ってまして、なんか邪気を感じる場所でした。

    合体したブナの木が♂だと思うんですが、生気を吸い取られて枯れ掛かっております。

     ガイドブックには古寺鉱泉からの登りは急です、と書かれているんでありますが、道の整備が行き届いているので左程苦痛には感じませんで、新緑の道を気持ち良く登って行けました。
    身体は本調子では無いようで、いつに無く大汗をかいているのでありますが、まあ、気温も20度程度とまずまず暑い訳です。
    しかし、こんなに汗をかくと言う事は飲み水も必要と言う事な訳で、この先の水場はあてになるのだろうか心配でありました。
    地図によれば、大朝日の小屋までに3カ所の水場が在る事になっているのですが、使えたのは一番下の「一服清水」だけでありました。
    他の水場は未だに雪の下でありましてまだ当分は使えないだろうと思うのであります・・・銀玉水はまだまだ先かと思います。
    しかし、一服清水はまだ歩き始めて1時間30分の距離でありまして、水を汲むにも、持ち分が減っていない訳であります。

    古寺山への尾根筋に上がる手前の残雪です・・・この上に曲がり角を示す赤布が。

     ここへ至る間にもちょっとした残雪の上を歩いて来たのでありますが大して困難を感じる事も無く、気楽に残雪歩きが楽しめました。
    場所によっては中々の傾斜なんですけれども、気温が高いので雪が緩んで登山靴の蹴り込みが楽に決まるし、フラットに置いても底が雪を噛みやすいのであまり滑りませんでした。
    と、言う事で、大朝日までアイゼン無しで行けたのでありますが、ピッケルは有った方が良いと思うのであります。
    登山用の杖で代用できると言えばそれでもなんとかなると思うんですけれども、万が一の場合、アレに全体重をかけざるを得ない時に、私は信用できないのであります。

     お天気は高曇りと言った感じで、雪渓に出ますと照り返しが有りまして、雪の上を汗だくで歩いて行くのであります。
    で、前回の神室岳でも参った「黒い羽虫」がここでも大量にまとわりついて来るのであります。
    雪の急斜面に喘ぎながら登って、大きく口を開いて深呼吸などしようものなら、一度に100匹くらい吸い込んじまうかも知れないと言う程の大群で取り囲むのであります。
    いや、この虫が血を吸うとか皮膚を齧るとか、そう言う事は無いので無害なんでありますが、汗で濡れた皮膚にぶつかるとへばり着いてしまう訳です。
    それでも痛くも痒くもないので放っておきたいところでありますが、冗談でも誇張でもなく吸い込んでしまうのが嫌なんであります。

    古寺山(1500メートル)の山頂で一服兼昼飯です

     古寺山の山頂で大休止であります。
    普段の山行では昼飯も立ったまま、若しくは歩きながら食べるのでありますが、今回は疲れ方がいつもと違うようで、荷物を下ろして休みたくなっちまうんであります。
    そして、冷たい沢水をカブガブ飲むもんですから、ただでさえ弱いお腹を壊してゲーリーピーピーであります。
    平日で、しかも残雪期とあって登山者が少ないので、丸見えの稜線で緊急避難的行為に及んでしまう訳でありますが、これが賑やかな季節であったら大変な事になるな、と、今更ながらにコレには手を焼く訳であります。

     
    これはテンの糞だと思いますが、どうして目立つ石の上とかが好きなんでしょうか?

     さて、なんぼ休んでいてもそんなに回復などするもんでは無い訳でして、やっぱり歩かなければダメなんであります。
    地図で見ると距離的には中間点なんですが、しかし、標高を稼がなければならないところは過ぎている訳で、ここからは楽なのかな、と思って古寺山を後にしたのであります。

    古寺山から小朝日岳方向への眺め

     いや、ここからは楽しい稜線上のお花見快適歩行だと思っていた訳では無いんですけれども、しかし、小朝日方向へは随分下っている訳です。
    ああそうかぁ・・・一度下って小朝日岳へ登るのか・・・まっ、大した距離では無いわな・・・フウフウ・ゼイゼイ、と。
    毎度の事では有りますが、せっかく稼いだ標高を下って登り返すのは、身体よりも精神的に辛いもんであります。
    まあ、しかし、ここまで来ちまった以上、早く小屋に入ってビールでもやらない事には、戻りたいって言ってもダメなんでありますから、と。
    小朝日岳から下って銀玉水へ向かう稜線

      古寺山からの下りは大した事無く、100メートルにも満たない程度で、だから、小朝日岳への登りもまずまず、なんとかなったのであります。
    が、しかし、小朝日岳からの下りは、ガイドブックが覚悟しろよ、と言うだけ有って、なかなかのモノでありました。
    いや、手を使わなければならないところなどは一つも無く、登山道の整備も万全で、傾斜の割には安全に降りられたのであります。
    んじゃぁナニが不満なのだと言われますと、せっかく1640まで登ったのに、何が悲しくて1460までも下るのか、と言う事なんであります。
    しかしアレです・・・古寺鉱泉からの登山道の整備はもの凄い手入れだと思うのであります。
    水捌けが悪い所は溝を切って排水を促し、土砂が流失したり崩落しそうな箇所には土嚢が当ててあったり、と、凄い整備がされているのであります。
    まあ、天下に名高い朝日連峰でありますから、当たり前だと言えばそれまでですが、それにしても、私は古寺から大朝日まで、一度も手を使わずに行けた訳でありますから、その整備度たるや、恐れ入りましたの一言であります。

    小朝日岳から下り切って稜線を振り返る

     まず、好きにして下さい、と言う位に思い切って下る訳です。
    しかし、時折パラパラと来る雨で足元が濡れていたりするにも拘らず、ほとんど滑る事も無く、とても歩きやすいのであります。
    本来であれば虎ロープの一本も下がるべき所には、適度なステップが作られていて、確実に踏みしめて行けば降りられるようになっているのであります。
    そして、まるで人が砕石でも敷き詰めたのかと思う程に歩きやすい登山道に助けられ、危険などは感じる事も無く、意外に早く降りられたのであります。

    小朝日岳を下り切ったら大朝日岳の避難小屋まで展望が利きました。

     小朝日岳を下り切り、熊越えの按部から大朝日岳と、本日のお宿となる避難小屋も見えたのでありますが、その前に、たぶん我が行く手になるのであろう稜線上に、かなりな斜度の雪渓が残っているのが見える訳であります。
    うーん、他に行くような道筋は考えられないんで、まず、アレを登るんでしょうねぇ、ウヒャァー・・・であります。
    まあ、しかし、いざとなれば背中に背負った10本爪が有る訳で、しかも、本日既に3組、都合5人も下って来た人がいる訳ですから、行けば大した事無いのかも、なんてね。

    銀玉水の上から始まる雪の斜面・・・スケール感出てないヘボ写真です。

     銀玉水の先で、遠くからビビって見ていた雪面に出まして、アイゼン出した方が安全かなぁ・・・でも面倒だな、と一瞬の思案であります。
    しかし、試しにキックステップを入れて見ますと、まずまず、なんとかなりそうな塩梅では有る訳です。
    しかも、下から見た感じでは大した事無さそうですし・・・がぁ、これが二段になってまして、写真では隠れている奥の部分が結構ヤバかった訳です。
    まあ、ナンダカンだ言ってもグズグズの残雪ですから緊張感は薄いのでありますが、しかし、ピッケルを両手で握り、左右の一歩に対して、ピッケルひと突きと言う具合に、常に雪面には2点が残るようにして登って行く訳であります。

    ケルンのあるピークに出たら小屋が目の前でした・・・ここでビール冷やしの雪を汲んだ。

     やっとこ、さっとこ 大朝日岳避難小屋へ到着であります・・・午後2時20分、5時間35分の行程でありました。
    もうダメ、とてもじゃないけど山頂はちょっと勘弁して、とりあえず何か喰いながらビールでしょ、と言う事で、倒れ込むようにして小屋へ入りました。
    で、広くて明るい避難小屋をズイーッと物色しまして、二階の陽当たりの良い場所に陣地を決めた次第であります。
    一階はちょっとディーゼルオイルかなんかの匂いがしてナニなんでありますが、二階は陽当たりが良くポッカポカで快適であります。
    なんたって、汗びっしょりで脱いで紐に掛けておいたTシャツが夜までに乾いちまいましたからね・・・有り難い事です、これは。
    で、どこの水場も雪の下で今夜の水を汲めなかった訳です・・・明日の水も無いのですが。
    と、言う事で、大朝日岳登頂よりもまずは温かい飯を食いたい訳であります・・・まあ、飯と言ってもラーメンなんですけど。
    そんな訳で、一番手近な雪田でビニール袋に雪を汲んできまして、取りあえず2リットルの水を作り、残りの雪でホットコーヒーとラーメンなどこしらえた訳であります。

    餅入りミソラーメンは、餅を何時入れるかがミソです。

     ビールの速攻冷却法・・・雪の入ったポリ袋に入れたビールを静かにくるくると雪の中で回します。
    そうやって一度、缶の表面を濡らしてから缶を雪に埋めます・・・待つ事僅か5分で、ビールはキンキンに冷えるのであります。
    で、冷え冷えのビールをプシュッーっとやった所で堪え切れ無くなった空から、大粒の雨が落ちて参りまして、早い話が土砂降りであります。
    いやはや、なんともラッキーな事でありまして、私は乾いたシャツに着替え、ビール片手に高山植物に降る雨などを眺めると言う、粋な事をしていられる訳であります。
    いや、明日の天気はどうなるか、などと言うのは私の知った事では無い訳でして、憂いたところでドーなる物でもないので考えないのが良いのです。
    で、餅入りラーメンを喰いまして、ビールを飲んで寝袋に潜り込んだら後は爆睡であります。
    小便がしたくて起きたのが5時半でありまして、雨が上がって西の空には薄らと夕日が・・・あれっ?明るいのは北の空だなぁ、と。
    まあ、アレです・・・ここは高い所なので、北へ沈むお日様も見えるのかもしれません・・・いや、しかし、なんでぇ?

     
    避難小屋からは距離で400〜500メートル、標高差100メートル弱で山頂です。

     さて、ここまで来たからには一応は山頂を踏んでおかないとな・・・明日は暴風雨で登れませんでした、なんて事が無いとは言いきれないし。
    と、言う事で、もうすぐ日没だなと言う6時半頃、ダウンジャケットに身を包み、カメラだけを片手に山頂へ向かった訳であります。
    山頂からはボヤーッとですが月山が見え、かすかでは有りますが飯豊連峰が見え、そして、何よりも圧巻であったのは、西朝日岳から竜門山、以東岳へと連なる朝日連峰の主稜線でありました。
    いずれ、必ず、あっちもこっちも登ってやるぞと、ゆるく心に誓った訳であります。
    いや、それにしても、残雪の稜線は美しいとか、見事とか、そんな言葉ではとてもじゃないけど言い表せない訳でして、当然、私の玩具のカメラにも納まり切るはずの無い物でありました。
    私は遠くに聳える以東岳を眺めつつ、なんだか無性に込み上げる哀しみのような物を覚え、泪せずにはいられなかったんであります・・・あっ、体調悪かったんで雪目で泪ですか?

       
    衣装の色彩感覚はモンゴル風ですが、おっさんは純日本産です

     大展望を堪能し切って下って来たんでありますが、あれだけの土砂降りの後にも関わらず登山道はぬかる事も無く、水たまりも無く、滑る事も無く快適でありました。
    登山道は排水の溝が切られ、土嚢で土留めがされ、足場の悪そうな所にも土嚢が入れられ安全の確保が図られている訳です。
    はっきり言って参りました・・・ここまで手入れされていれば、無雪期に限りですが、古寺鉱泉からなら少々の爺様や婆様でも登って来られるだろうと思う訳です。
    いや、他からのルートは知らないので古寺からと書きましたが、たぶん朝日鉱泉からも一緒でありましょう。
     
    広い部屋の中で、やっぱり隅っこに陣取る小心者です・・・火の使用はステンレスの板の上で、と。

     で、大朝日避難小屋は一泊1500円な訳であります・・・維持協力金と言う名目になっておりました。
    無人なんですが、料金箱に入れてくれるようにと書かれていますので、私としても当然協力させて頂く訳であります。
    いや、ホントーは誰も見ていないのでトボケる予定だったのでありますが、登山道の整備やら、小屋の清潔度など、苦労されているのが随所に見受けられると、如何にセコイ私でも逃げる事は出来なくなってしまう訳であります。
    で、トイレが1回100円と言う事なんでありまして、こちらもトイレ用の料金箱が設置されているんであります。
    しかし、私は都合3〜4回程落とし物をさせて頂いたんでありますが、それは1500円の中に含まれるとの解釈で、勘弁させてもらいました。

    ミソラーメンの残り汁におにぎりを入れて雑炊を(何気に不気味です)

     さて、一夜明ければドピーカン、なんて都合良くは無い訳でして、3時半に目覚めた時には土砂降りでありました。
    しかも、何だか悲しげな女の声のような風の音がヒューヒューと鳴っている訳であります。
    ウヒャァー・・・もう一回寝よう、と言う事で、次に起きたのが5時でありました。
    ウーム・・・まだ降ってんのかぁ、でありますが、止みそうな気配もそこはかと無く有るようなので、取りあえず準備だけは、と。
    で、朝飯にミソラーメンを食べまして、それにおにぎりを入れて雑炊にして一段のエネルギー補填に努める訳であります。
    いや、バカにしなさんなよ、おにぎり雑炊はクエン酸なんかも入って、疲労回復に優れるんですよ・・・なら、直に齧れってか?冷たいし固くてさぁ。

     いや、雨が止むのを待って、止めば良いんですけれども、止まなかった場合はどーなりますか?立場悪くなりますよね?
    と、言う事で、適当な頃合いで見切りをつけ、合羽を着込んででも行かなくちゃならない訳であります。
    そんな訳で、意を決して出掛けようとしたのが6時半でありました・・・がぁ、頭上の真っ黒い雲に比べ、風上方向の雲がだいぶ明るい訳であります。
    よしっ・・・7時半になったらナニがナンでも出発しようと言いつつ、またお湯など湧かしてコーヒーを飲んじまうのが私の良い所であります。
    ジャーン・・・読み通りであります・・・雨が止んで、ほんの僅かな雲の切れ間に青空さえ・・・5秒程でしたが。
    と、言う事で、合羽も着ずに出掛けられるようになって、んじゃぁ、帰路は予定通りに鳥原山経由で行きましょう、と・・・。

    小朝日岳に登る手前から清太岩山方向の稜線を望む(たぶん)

     そんな訳で小朝日岳までは往路を辿ったんでありますが、小朝日の山頂から東に折れて鳥原山を目指す訳であります。
    で、私の持っている登山地図では、危険マークは小朝日から大朝日へ向かう下りについているのでありますが、しかし、私はちょっと異議ありと挙手であります。
    小朝日岳頂上直下の下りは、ザラメ砂混じりの土で足場が悪く滑りやすい上に、ロープが下がる急坂も有って、危険マーク入れるならこっちじゃないのぉ、と思った次第であります。
    まあ、どっちにしても大したもんでは無いのですが、しかし、ここから古寺鉱泉までの道筋は、どちらかと言えばメインコースでは無いようでして、ワイルド感と言いましょうか、ナチュラル度と申しましょうか、まず、より自然な道である事は間違いない訳です。
    まあ、早い話が、登山道に多少痛んでる所が見られましたよ、と言う事ですね。

    鳥原山へ向かう尾根は東へ伸びるので、左手谷側は北向きで残雪が豊富です。

     朝日鉱泉から登って鳥原山経由で小朝日から大朝日と言うのは、雪が消えれば普通なんでありましょうが、今時としてはドーなんでありましょうか?
    このコースでは結構な残雪が夏道を隠していまして、特に、下りではどこから夏道に戻るのか分り難い所も数カ所有りました。
    視界が利けば地図とコンパスで切り抜けられるのですが、似たように景色の所も多く、正確な自分の位置を見失った場合は厄介な事になりそうだな、と私は思った次第であります。

     
    こんな感じなんですが、真っ直ぐ行ったら夏道じゃないのが厄介な訳です

     今時分雪渓と言うのは先行者の踏み跡があっという間に消えてしまう事もある訳で、当てにならない訳です。
    私が鳥原山の頂上から下っていた時に、残雪の所でブナ峠から登って来た2人連れに出会いました。
    さらっとご挨拶など交わして急いで下り続けた訳でありますが・・・いや、雨雲との追っかけっこが負けそうになって来た物ですから。
    ところが、踏み跡を辿れてラッキーと思ったのは束の間でありまして、実際にはほとんど見えなくてとても足跡を追える状態では無いのであります。
    そんな訳で、軽く躊躇したのが一カ所と、調子に乗って下りすぎて、沢沿いに入り、そんな馬鹿なと登り返して地図と睨めっこしたのが一カ所でありました。
    この場合、谷間に入るとGPSの精度が落ちるので誤差が20メートルは有ると思われまして、そんな時に尾根を切り替えて道筋が変わるなどと言うと、GPSでもダメなんであります。
    ただし、GPSでほぼ正確な自分の位置が把握できている訳ですから、ここで地図を開けば・・・しかし、地形図の夏道が微妙にずれていたりした場合は、野生の勘に頼るしかない訳であります。
    と、言う事で、初心者の私と致しましては、二カ所程、ウロウロした次第でありました・・・いや、登りはなんとかなるはずです、たぶん、問題は下りですから。

    鳥原山への道は立派な石組みの登山道でした

     小朝日からここまで、こっちの道は古寺からの道に比較して荒れている感じだったんでありますが、いや、しかし、鳥原山近辺まで来ますと様相はちょっと違って来るのであります。
    石組みの登山道などが現れるんですが、何所のどなた様がこんな厄介な仕事を引き受けて、どんだけ苦労したんだろうかと泪さえ出る程に感心する訳であります。

    木道にステンレスの金網を貼って滑り止めです

     石畳の先には湿地帯らしき所に木道が敷かれていまして、それにはステンレスの金網で滑り止めが施されている訳です。
    へぇー・・・ここまでやっちまうかねぇ、と、正直「過保護」を感じたのでありますが、それは大間違いでありました。
    所々にすれ違い用の出張った木道があったので試しに乗って滑り具合を見た訳であります。
    いや、参りました・・・濡れた木道はまるで油でも塗ってあるかの如く滑りまくる訳でして、金網無しでは危なくて歩けたもんじゃ無い訳です。
    いや、もう全面的に参りました・・・この登山道の保守を為されている方々は、プロ中のプロで有りましょう。
    半端なおっさんがナニを言う事も出来ない、完璧な登山道であります・・・脱帽です。

    鳥原山頂上から見た小朝日から鳥原山までの稜線は雲に隠れてしまいました

     小朝日からここまでは鳥原山のゆるい登りがある程度で、下り一方、的な感じでありまして楽に来られるのであります・・・距離は長いんですけど。
    しかし、残雪が多いのと、夏道もナチュラル度の高い道でありまして、思ったよりも時間は喰うんであります。
    鳥原山の展望台は見晴らしが良さそうなんですけれども、雨雲との追いかけっこが危うくなって来まして、ほとんど展望は無しでありました。
    小休止と言う事で、クリームパンを一つと水を少々飲みましてすぐに前進であります。
    ここまで、ガイドブックでは2時間40分と記されているのでありますが、私はとっくに3時間を廻っているのであります・・・下り遅いなぁ。

    鳥原山を下って少し、古寺鉱泉と朝日鉱泉方面との分かれ付近に湿原が有りました

     湿原には水芭蕉などが咲き、いかにも山上の湿原そのものなのでありますが、のんびり眺めている暇はない訳です・・・雨雲がぁ。
    などと言いつつも、しっかりと水芭蕉の写真は撮るし、珍しい物は居ないか、と探すんであります。
    しかし、なんだか、アメンボーばかりがやけに目立つ湿原でして、オオサンショウウオなんか期待したんでありますが、残念でした。

    古寺鉱泉と朝日鉱泉方面の分岐点ですが、ドー見ても朝日鉱泉方向が開けていました

     さて、時間と天気が許せば今後の参考の為に、500メートル程朝日鉱泉方向に行った所に有るはずの、鳥原小屋を見ておきたかったのであります。
    しかし、時間も予定より遅れているし、ナニよりも雨雲との追いかけっこに負けるわけにはいかない訳でして、背に腹は変えられず、バスであります。
    そんな訳で、なんだかちょっと暗い雰囲気の漂う古寺鉱泉方向へと進んでみますと、まあ、見事にそのまんま湿地でありまして、ぐちゃぐちゃのねちゃねちゃでありました。
    そんな事はどうでも良いのでありますが、しかし、こちらの道は夏になっても通行者は少ないと見えて、ワイル度がグーンと跳ね上がる訳であります。
    崩壊が激しいとか、笹が覆い隠すような放置された感じでは無いのでありますが、しかし、倒木が目立ち、何よりも水気の多い道筋な為に、結構なサバイバル度が加わっているのであります。
    で、もう一カ所鬼門が有りました。
    ほとんど気付かない1240くらいのピークの手前にはたっぷりの雪が有りまして、夏道から入って雪の通りに歩きやすい方へ下って行きますと、間違えて沢方向へ行く訳であります。
    ここも登る時には何とも無く行けると思うんですが、下りだけで通過する場合はちょっとナニであります。
    まあ、地図を見ればなんとなく分りますし、雪を下り切っても1210あたりで夏道に戻れるかもしれませんが・・・。
    さて、余計な迷子で時間を食ったり、足元が悪くて距離が進まなかったりで益々予定から遅れて行く訳であります。
    いや、遅れたからナンだと言う事も無いのでありますが、やっぱし、予定の時間と言うのは守りたいのが人情であります・・・ホントかな?
    で、最後の目印であり、分岐点でもある畑場峰になかなか出ないのであります。
    登山地図では鳥原山から1時間で行く事になっているのですが、私は1時間半近く歩いているのにまだ着かない訳であります。
    こうなるとちょっとだけですけれども、不安なんて事も感じたりする訳です・・・間違えようは無いんだけどなぁ、と。
    で、結局は40分も遅れて畑場峰の分岐点に着きまして、右がブナ峠、左が古寺鉱泉の標識を確認し、一安心であります。
    で、登山地図によりますと、ここから1時間で古寺鉱泉に出る事になっているんでありますが・・・なんと仰る高橋さん(地図の著者)であります。
    ここからの道は、ワイル度抜群、時にはサバイバル度も要求される道でありまして、中々手強いのであります。
    しかも、結構急な下りを降りていると思うのですが、いつまでたっても標高が下がらない訳で、細かく登り返しているんでありますね。
    で、最後の詰めと申しましょうか、ようやく古寺川の音が聞こえて来ますと、一気に急坂を下りまして、古寺鉱泉の対岸に飛び出すのであります。
    いや、誤解されると困るのですが、畑場峰からの下りも登山道の手入れはされているのです。
    ただし、他の所があまりにも整備されて整っている為に、ワイル度が高く感じるのであろうと思います・・・いや、しかし、実際に厳しい道ですけど。
    そんな訳で、登山地図では4時間40分で下れると有るコースを、5時間半も掛かってしまった訳で、とっても疲れました、と。


     この話 完


    まあ、適当に書いてますんで、間違いが有っても見逃してやって下さい・・・


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


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