よたよたと、山登り


    No.33 三本槍岳 1917m・・・(那須連峰)




    6月10日 茶臼岳ロープウェー山頂駅(11:30)〜朝日岳〜三本槍岳(14:00)〜ロープウェー山麓駅駐車場(15:45)

     いや、山男を目指す者がロープウェーに乗っちゃぁ拙かろう、と思ったんでありますけれども、諸々と事情がありまして、状況を鑑みますればロープウェーで高度を稼ぐのも仕様がないな、と言う事で乗っちまった訳であります。
    ええ、まあ、昨晩飲み過ぎて朝早く起きられなかったと言う事と、シロートが一人どうしてもついて来ると言うんで、もたもたと手間取った訳であります。
     で、このシロートは昔、八海山で荷揚げのバイトをしていたんでそこそこ山は知っているんでありますが、それは遠い昔話な訳で、現実に出っ張った腹を見れば、先が思いやられる訳であります。
    で、シロートがトレッキングシューズなんかを持って来て、駐車場で履き替えまして歩き出したんでありますが、脆くも崩れて三歩歩めず、でありました。
    いやぁ・・・登山靴のウレタンソールの加水分解は話には聞いていたんでありますが、漫画のようにボロボロになってゴムのアウトソールだけが残っているのであります。
    いや、場所がここで良かったよ・・・いい加減歩いてからじゃなくて良かったなぁ・・・じゃぁ、俺は行くから、と言うと、シロートは、スニーカーでついて来ると言うではありませんか・・・うひゃぁ、重荷だ。

     さて、ロープウェーの駅前の駐車場で既に11時になっていると言う事は、もうどーしたって出遅れは否めない訳です。
    しょうがネェなあ、と、片道切符を買って、標高1610メートルの茶臼岳山頂駅まで登ったのであります・・・フゥー、登山じゃ無いじゃん、これ。
    茶臼岳1910メートルの山頂は既に目前でありまして、走って登れる距離であります・・・標高差300メートル、距離1キロでありました。
    茶臼岳の途中から朝日岳を望む(たぶん)山の雰囲気や高さは本格派なんですが・・・

      ほとんど直線的に標高差300メートルを登る訳ですが、スカートはいてるオネェちゃんが歩いているのを見た時には前に進む気力が萎えちまいました。
    まあ、そう言う山なんだよな、那須なんだもんな、ロープウェーで来たんだからな、と言い聞かせるのでありますが、脇で連れのシロートが喘いでいるのが情けなくて、これが八海山で強力やってたってかぁ、と。
    12時丁度に山頂到着でありました。
    ここまでの山の雰囲気、様相は活火山の荒々しさを真っ正面からむき出しにしており、山岳道路が未整備でロープウェーが架かっていなかったなら、結構な難度の山なんだろうな、と、思うのであります。
    が、しかし、現実は、山頂を避けて廻る周回コースには爺様と婆様がヨロヨロと群れをなし、山頂へのコースにはスカートのオネェちゃんが歩いているのであります。

    地図では茶臼岳なんですが、表示は那須山なんでありますね・・・賽銭箱が矢鱈と目立つんですが

     シロートがむきになって早歩きをするもんですから、あっという間に山頂に着いたんであります・・・が、しかし、イタズラ書きと賽銭箱ばかりが目立つ山頂には、感動は無く、悲しい物を見ちまったなと言う後味の悪いモノになってしまいました。
    どこのバカがどんな物で掘ったのか、硬い石に記念の彫刻が為されているのであります・・・乾電池で動くルーターでも持って来たんでしょうか?
    で、どこかの爺様が山頂の記念碑前にドッカと座り込んで動かないもんで、写真を撮るのに邪魔なんでありますが、これが動く気配がない訳です。
    どーにも非常識ばかりが目立つ山だな、やっぱし俺には田舎の静かな山が似合うんだなぁ、と、言う事で、休みたがっているシロートを急き立てて朝日岳へ向かったのであります。

     朝日岳へ向かうには峰の茶屋避難小屋まで約200メートル程下るんでありますが、ここの足場は火山礫で結構歩き難い訳です。
    なので、流石にスニーカー族は少なくなるんでありますが、私の連れのシロートも歩き難そうでありました。
    風景と言いますか、景観と言いますか、本来、文明の利器が無ければ、気安く乗り込んで来られる山では無い事を物語っているんであります。
    で、山の位置と形状の関係からか、鞍部になっている峰の茶屋を吹き抜ける風は相当な物らしく、人が飛ばされた、と記されているんでありますが、人が飛ぶ位の風は高い山なら何所でも吹くもんであります、が。
    まず、風の通り道である事は間違いなく、行きにも、帰りに通った時にも、ずーっと吹いておりました。
    で、ここで中学生の遠足に出会いまして、ああ、まあ、そう言う場所なんでね、と。
    ここからロープウェーに乗らずに駐車場まで、のんびり歩いても1時間とは掛からないのでとても良いハイキングコースなんであります。
    朝日岳山頂から茶臼岳を望む・・・天気が今イチで時折ガスってました

     この山の景観の見所は、茶臼岳と朝日岳の中間に聳える剣が峰であろうと私は思うんであります。
    火山性の岩山を風雪が削って作り出した奇岩怪石の作品群は、どれも、人間なんぞが作り出せる域を遥かに超えている訳で、これだけを見に来る価値があるなと言う物でありました。
    で、剣が峰には登る事はまかりならん、と言うお達しが出ている訳ですが、いや、登ろうとして手足を掛けた途端に脆く崩れる岩でありまして、命危なし、であります。

     さて、朝日岳の肩と言う鞍部には展望台が整備されておりまして、ベンチなんかが数台据えられている訳であります。
    朝日岳の肩に荷物を置いて山頂を往復して、駆け足だと20分で、爺さん婆さんだと30〜40分であります。
    尖った岩山で狭い山頂なんですが、ここでもドッカリと腰を下ろして展望を満喫し続ける輩が居まして、写真を撮るのも一苦労なんであります。
    で、茶臼岳から朝日岳までが2.3キロでありますが、稜線上の移動な訳で高低差は余なく、かなり楽な山歩きな訳です。
    まあ、剣ケ峰付近には鎖場なんかがあったりして、それなりの雰囲気は出ていますが、まあ、鎖が無くても困る事も無いような気もする足場なんですけれども。

    三本槍岳へ向かって行き、振り返ってみた朝日岳

     朝日岳を下って来て時計を見ると午後の一時になっている訳です・・・シロートが腹減った、疲れたと音を上げ始めました。
    私の勘ではここでちょうど半分くらい、三本槍までは3キロ弱は有ると思うので、んじゃぁシロートはここで待っているか、ゆっくり歩いて峰の茶屋で待っていたら、と言う事で、やっと本来の山登りに没頭できる嬉しさに三本槍に飛んで行った訳であります。
    で、ここからちょっとしたピークを越えると山の様相が一変して、火山性の山の顔が全く無くなり、いつも慣れ親しんでいる東北の藪山に変化するのであります。
    まあ、専門的に語れば、火山の活動時期のズレなんて事が言えるのだろうと思う訳ですが、それにしても見事で、湿原を持つなだらかな山容は尾瀬の燧ヶ岳なんかに通じる物を感じるのであります・・・まあ、距離的にも山脈の系列的にも近いんでありますが。

    登山道はえぐれて溝であります・・・雨降ったら歩き難いでしょうね

     さて、清水平と言う木道の掛かった湿原まで下って 赤面山方向と三本槍方向の三叉路に出る訳です。
    しかし、アレです・・・これらの三叉路の広さと言いますか、登山道の幅と言いますか、まず、通行量が多いんだろうなと言うのが黙って伺える訳です。
    が、しかし、その割には導標や案内板の類いの痛みは酷く、看板の文字も見えない訳です・・・なんだかこの山の雰囲気は良く分からないんであります。
    で、分岐点から三本槍の頂上までは全速力で15分程度でありまして・・・いゃぁ、小さいザックなんでほとんど空身な訳で、泊まりのザック背負った時と比べると飛ぶように軽いんであります。

    ここまで来るとロープウェー登山の人は居なくなるようで、静かでありました

     三本槍の様子は、1910メートルと言う標高が感じられない藪山の雰囲気でありまして、やっぱり僅かなんだけれども、南なんだな、雪が少なくて森林限界も高いんだな、と言うのが伺える訳です。
    アズマシャクナゲと、ミネザクラともちょっと違う感じの桜の花がきれいでした・・・ハイマツも横に這わないで上に向かおうとしてます。
    で、シロートを待たせていると言うのがどこかに引っかかる訳です・・・雨降っても合羽なんて持っていないだろうしな、水はまだあったかな、なんてね。
    そんなもんですから、朝日の肩から三本槍岳往復を1時間20分で済ませて、ほとんど駆け足な訳です。
    三本槍に向かっては誰にも会わなかったんでありますが、朝日岳まで来ても登山者は居なくなっておりまして、シロートも小屋に下ったようでありました。
    で、早足で峰の茶屋に辿り着くと、そこには人影はなく、誰も居ないんであります・・・ああ、寒くて下っているんだな、と。
    しかし、アレです・・・人気の無くなった那須岳は中々良い雰囲気でありまして、これは冬に登るべき山かも知れない、と、感じた次第であります。
    で、峰の茶屋から見える下山道を見ますと、シロートがトボトボと歩いている訳であります・・・うーん、約一キロちょっとの差かなぁ・・・よし、20分で追いつこうもと言う事で、砂礫の登山道を掛け下り、程なく合流でありました。

     那須連峰の裏と表とでも言うべき、朝日岳からあっちとこっちの様子の違いはとても興味深い物でありました。
    そして、いつも近所の山で当たり前にブナの大木なんかを見ている自分には、那須の山の何とも寂しい植生を見るにつけ、故郷の山はあり難きかな、であるなと。
    那須に登って東北の山の素晴らしさを実感して噛み締めると言う、那須のお山には申し訳ないが、まっ、蔵王のお釜辺りは似たようなもんで・・・でも無いか。
    まっ、楽しいハイキングでありました、が、昼飯喰わずに歩き回ったので腹減りました。

     この話 完


    まあ、適当に書いてますんで、間違いが有っても見逃してやって下さい・・・


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


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