よたよたと、山登り


    No.35 水引入道1656m・南屏風1810m・不忘山1705




    6月24日 白石スキー場(8:30)〜水引入道(11:30)〜南屏風(12:30)〜不忘山(13:00)〜スキー場(14:30)

     前日の仕事帰り、西の空は茜色に染まり、明日の好天を約束するかのように抜けていました。
    家に帰りテレビの天気予報を見ていると、好天間違い無し、の予報出ているでは有りませんか。
    私は我が家の山の神に、明日の仕事の予定などを告げ、急遽の休みを打診しました。
    まあ、自営業の気楽さと言えばそうなのですが、しかし、いつ休んでも仕事に支障が無い立場というのも考えものではあります。
    まあ、しかし、そう言う訳で、今は仕事を放り投げてでも山に行きたい気持ちが強く、押さえれば何処かに反動が出るので、山の神も諦めているようでした。
    が、しかし、一夜明ければ昨晩の天気予報は何処へやら、それとも、私が無理に仕事を休んだツケが廻って来たとでも言うのだろうか、向かえた朝は見事な曇天でした。

    白石スキー場手前で不忘〜屏風の稜線を撮った。手前は麦畑でした。

     今日の予定は白石スキー場から水引入道コース・・・コガ沢を渡って水引入道へ登り、稜線沿いに屏風へ出て、不忘山を廻ってスキー場へ戻るコースを予定していました。
    私がコース選びの参考にしている「宮城県の山」と言う登山ガイドブックに拠れば、コガ沢コースはこのガイドブック中で一番の難コースでベテラン向けであるとの事でした。
    しかも、降雨時や雨の後のコガ沢の徒渉は相当に危険であると書かれているのですから、今にも降り出しそうな天気では躊躇してしまいます。
    しかし、迷う気持ちの裏側には、どれ程の物なのか見てみたい、と言う好奇心があって、結局車は白石スキー場の駐車場に停められたのですが・・・。

      
    開けて明るいスキー場から、何だか暗そうな山道へ・・・

     8時30分に駐車場を出発して、勝って知ったる休憩所に寄り、登山届けを出し、きれいなトイレを拝借して、いざ出発。
    スキー場の右側の作業道を歩いて行くと自然に水引入道コースの登山口へと誘導されます。
    ここからが本当のスタートなのですが、GPSで確認すると標高は既に1000mにもなっていて、水引入道の標高1656を考えれば、大した標高差ではないなと、内心、舐めていました。
    登山道はコガ沢の随分上の方を巻く様に付けられていて、目には見えない沢からもの凄い水流の音が聞こえて来ます。
    ドドドーっと響く沢の音は、流石に徒渉には注意しろ、雨など降ったら引き返すか、下りなら別コースへ逃げろと書かれているだけの事は有るな、と、結構心配モードで登って行きました。
    標高を上げて行くと見事なブナの大木が幾本も見られ、伐採される前は何処の山でもこのようなブナが生い茂っていたのだろうな、と思わせる風景でした。

    アレっ?随分と静かな沢になったんですけど・・・

     コガ沢の徒渉点の前に登山道が沢筋まで降りる場所が有りましたが、そこで見たコガ沢の水量はまるっきりの拍子抜けでした。
    なあーんだ、この程度かぁ・・・脅かすなよなぁ・・・登山ガイドはいつも大袈裟すぎるんだよな、と。
    ちょっと登り返して岩場になった所で、いよいよ噂のコガ沢の徒渉点が現れました。
    成る程ね、徒渉そのものよりも、沢沿いのへつりと、沢までの岩場の下降が危険なんだな、と言う事で、水量の少ない沢の徒渉には何の危険も無い事は一目瞭然でした。
    ここで独りの先行者に追いつき、軽くご挨拶をすると、パラパラと降り出した雨を気にして先へ行くかどうかを思案中との事でした。
    そうですか・・・それでは私は先に行かせて頂きます、と、へつりから下降まで、きっちり張られたロープを手に、格好よく下降し、徒渉に臨んだのでした。
    いや、しかし、何度か引っ張って確認したはずのロープが、徒渉に入った途端力点が変わって私を引き止め、あろう事か引き戻そうとしたのです。
    その弾みで私はバランスを崩し、転けそうになり、右手を岩にぶつけてしまいました・・・勿論足は岩を踏み外して、登山靴はジャボン、です。

    スキー場から登山道に入って初めての眺望です・・・屏風、ですね?

     さて、コガ沢の徒渉で「ええふりこき」をして(格好つける事)痛い目にあい、おまけに雨は本降りになって来ました。
    そして、ガイドブックが言う通り、急登に喘ぐ事約30分、やっと展望が開け、幾分傾斜も緩くなり、上の方はガスで見えないけれども、何となく明るそうで登りの終わりが近いと思わせる所に出ました。
    ふうっ、助かったと一息入れたのもつかの間、本当に一息分の息つき場で、またすぐ急登になりました。
    標高1600m辺りで森林限界を超えたようで、樹木が低くなり始めたと思ったら、程なくガレ場が広がり、一気に高山的な雰囲気になりました。
    へぇー、恐らくこれは火山礫だろうなぁ・・・こんな火山的風景は刈田岳の辺りだけかと思ったら、水引入道にも広がっていたのです。
    しかし、雨に濡れた結構な傾斜のザレ場は歩き難く、中々楽な思いをさせてくれない、水引入道コースです。
    喘ぎながら前を見ると先行者が独り、ゆっくりした歩みで登っているのが目に入りました。

     
    ダブルストックにスパイク長靴で高速歩行する登山者です・・・登りに弱い?

     ダブルストックにスパイク長靴の登山者に追いつき、ご挨拶もそこそこに最後の登りに気合いを入れます。
    本日、私のカメラには水引入道の山頂の写真が無いのですが、気付かずに通り過ぎのでしょうか? しかし、宮城県の山には必ず山頂の写真が有るのですが、水引入道は載っていません・・・多分、無いんですよ。
    山頂と思しき大岩の辺りでは、強い雨と霧で展望が無いどころか、これから行くべき道筋も見えていませんでしたから、標識を見逃してしまったのかもしれません。

    水引平の池塘・・・青い空と白い雲を映すのを見たかった。

     水引入道には岳とも山とも付かないようです。
    曖昧な記憶なのですが、私が子供の頃の南蔵王登山道に、水引入道は無かったような気がしますが・・・ちょと自信無し。
    白石スキー場と烏帽子スキー場が出来る以前と後では、南蔵王の登山コースに相当な違いが有ると思います・・・楽で便利になって助かっていますが。
    水引平周辺は高山植物が咲き乱れ・・・まっ、最盛期は過ぎたようでしたが・・・白い花、黄色い花、桃色の花などが沢山咲いていました。
    へえっ?花の名前を書けと?・・・昨年までダイビングのガイドやっていたので魚の名前なら死ぬ程詳しいんですけどね、花の名前はさっぱりです。

    おっさん・・・本日はとても普通の登山者に見えますけど?

     水引入道から屏風の三叉路までは緩く下って、またガツンと登りが待っています。
    しかし、そろそろ根をあげようかと言う寸前に、何となく上の方が開けて来て、それじゃぁ後一踏ん張り、と。
    傾斜が緩くなると直ぐに三叉路に出ました。
    ここは宛ら南蔵王の銀座通りに飛び出したとでも言う雰囲気で、立派な道標が立ち、そして登山者の数も急に増えました。
    普通の登山者になった、おっさん・・・パート2

     屏風の頂上を踏むのなら不忘とは逆方向に往復1キロ程歩かなければなりません。
    しかし、雨とガスで視界が無いのに行っても仕方が無いと思い、南屏風に向かいました。
    お昼の休憩は不忘の山頂と決めていたのです・・・天気予報が当たっていれば、絶景を眺めての昼食だったはずです。
    三叉路からは、標高が1700を越しているにも拘らずアオモリトドマツの森の中を行く感じになります。
    前後の頂から比べると低いので森林限界も変わるのでしょうか?
    ほとんど平坦な広い尾根を南屏風まで歩き、不忘に向かっては一度下りに入ります。
    下り切って、南西側が切れ落ちて来ると尾根が痩せて、足元も土から岩に変わりました。
    子供の頃に何度も不忘に登っているのですが、総て硯石から登り刈田岳に抜けていたのでこの山の裏側をこちらから見た記憶が有りませんでした。
    不忘山がこんなに鋭い表情を見せるのは意外でした。
    山に登っているぞ、と言う雰囲気満々の岩場を一気に登ると、ガレ場の広がる山頂に出ました。

    なんだかとても由緒のある物が祀られている様な・・・

    で、その謂れなど記した石盤です。右下に「村長記」とありますが、何処の村長でしょう?

    で、こんなにお賽銭が上がっているんですけど、回収しないと勿体ないですね。

     不忘の山頂に着いて丁度1時でした・・・昼飯にはぴったりだし、雨も上がって雲が薄くなって来ました。
    さて、それではとおにぎりを取り出しましたが、歩きながらクリームパンを食べていたのであまり腹は空いていません。
    と、言いつつも、おにぎりを1個とバナナを1本とオレンヂを1個食べたんですが・・・。
    最近山歩きにプラスαを求めるようになり、フルーツなどを持つ歩く様になりました・・・かなり普通の登山者に近づきつつ有ります。
    虫除けにミントスプレーをふっている為か、雨が止んでかなりの虫が飛んでいるのですが、私にはとまりません。
    30分、ゆっくり休んで、さて出発と言う時に独りの登山者が屏風方向からやって来ました。
    かなり急いで歩いているようで、山頂の標識も一瞥して通り過ぎて行きました・・・まあ、ガスで何も見えないですけど。

     雪の有るときとはまるで様子の違う夏道を白いしスキー場方向へ下るのですが、雪があった方が何倍も楽なんじゃないか、と思う足場の悪い道でした。
    下ってすぐににB29の慰霊碑があるのですが、昭和45〜46年頃にはまだ機体の破片が見られたし、私は何か金属の部品を拾って持っていました。
    USAと刻印が入った鈍く光る金属は一時期私の宝物になっていました。
    山岳部の面々は、そんな物を家に持ち帰ったらアメリカ人のお化けが着いて来るから捨てろ、と気味悪がっていましたが、捨てたと言ってこっそり持ち帰りました。

    溝は登山者の踏み跡から出来るのでしょう・・・自分も踏んでるので心中複雑です

     雪の季節に下った時にはとても気楽で、しかも楽なコースだと思っていましたが、今日は勝手が違っていました。
    泥濘地と化した登山道は何処へ足を置いても滑り、しかも、土はえぐれて大きな段差となり、行き足を止めます
    このコースの下山はこんなに長かったっけ、と言う感じの辛い下りに辟易しました。
    おまけに雨が上がって薄日が射し、標高も下げているので気温も上がり、合羽の中は汗でびしょ濡れでした。
    しかし、泥だらけの登山道ではいつ転ぶとも知れないので合羽は着ていた方が良いだろうという事で脱ぎませんでした。
    結果的には一度大尻餅を突いたので着ていた助かったのですが、登山靴の中まで汗でぐしゃぐしゃになりました。
    弘法清水までなどは鼻歌混じりに下りて来たはずなのに、今日はとても長く感じました。
    白女小屋跡から先でスキー場に出てやっと泥道から解放され、駐車場到着は2時半でした・・・。

     ガイドブックが言う程には難コースでも無いと思いましたが、しかし、私の中では山の趣と言いますか、山らしさと言いますか、登っているなという満足度は、私の知っている宮城県の登山コースの中では一番だったな、と言う事で、満足のいく山でした、と。


     余談です。
    帰りに寄って汗を流した蔵王開拓温泉は、以前予想した通り、露天風呂の湯船は2つ、お湯が張られていました。
    しかし、奥の一つは無防備に突撃すれば死ぬ目に遭う程に高温で、実用には不向きでした。
    1000円と高いんですが、岩の上にひっくり返って空を眺める快感は、料金以上の物だと、私は納得しています。
    それでも、1000円とって石鹸の欠片も、シャンプーの一滴も無いと言うのは、ちょっとなぁ・・・ですが。


     この話 完


    まあ、適当に書いてますんで、間違いが有っても見逃してやって下さい・・・


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


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