よたよたと、山登り


    No.48

       

    河原坊〜早池峰山〜小田越〜薬師岳〜小田越山荘〜河原坊

      とりあえず 早池峰山 

     色々と訳あって、登る事になった早池峰山でありますが、花の山としてあまりにも有名であり、観光バスが団体登山客を乗せてやってくる山でもある、と聞き及ぶに至って、観光登山向きで花畑系の穏やかな山をイメージしていた訳であります。
    が、しかし、いざ登ってみると、そこは正々堂々とアルペン的山容を誇り、登山道は、岩また岩の、なんとも男性的な山岳だったのであります。
    いや、はっきり言って私の負けです・・・早池峰山に惚れました。

     さて、前日の夕方早くに河原坊の駐車場に車を停め、夕陽に染まる早池峰山を眺めつつビールなど飲み、その後一夜を明かし、陽が昇り切り足下が確かに見えるようになった6時30分、出発でありました。
    歩き始めは左手に感じの良い沢を見ながら行くのでありますが、すぐに砂防ダムが連続して現れちょと興ざめでありました。
    まあ、余談でありますが、砂防ダムには建設の年度とともに、北上市に本社を置く浅沼組の名を刻むプレートが掲げられている訳です・・・この会社は、小沢さんへの献金で有名でありますね。

    登山道、歩き始めてすぐ。番号は50番までかと思ったら100番が頂上でした。

     このルートは標高差900メートルを距離2.4キロ(GPS計測距離、道標では2.6キロ)で登りきる訳で、結構急なのが窺える訳ですが、距離が短いのできつい登りの割には、楽です・・・意味不明か?
    と、言う事で、傾斜が急なのと足元の悪さで、歩きはじめからまずまず、中々に絞られる道が続いておりました。
    で、土の道はほとんど無く、全編これ石と岩の道でありまして、雨が降ったらとんでもなく厄介だなぁ、と。
    標高1917メートルでけっこう高い早池峰山ですが、登山口の標高が既に1000メートルを超えているので、標高差は大した事は無いのでありますが、しかし、これが、麓の岳から歩いて登るとなると途端に厳しい山に変化すると思う訳です。
    そう言う事で、そんな時代の名残が、現在はあまり必要を感じない登山口近辺にに建っている、うすゆき山荘や小田越えの避難小屋なのでは無いのか、と想像してみた次第でありますが、如何に?

    とど松などの太い木が無くなり視界が開けると、北アルプスが現れました。

     沢沿いからあまり明確ではない尾根筋にルートが切り替わって間もなく、前方が開けて来たのでありますが、朝霧に霞みつつ見えたその山容に私は身震いさえ致しました。
    いや、霧に霞んで遠近感と大きさが誤摩化されている事もありますが、眼前に広がる山は、どこから見ても北アルプスのそれなのであります。

    振り返って登って来た道を見てもアルペンルートそのものであります。

     さて、森林限界を超えてからの山の様相は完全な岩山でありまして、時折露出する蛇紋岩は、成る程これをして蛇紋と言わせたのかと思う見事な蛇の鱗模様を見せる等して楽しませてくれる訳です。
    傾斜は急だし、足場は悪いで、浮き石や落石気を使い、しかも蛇紋岩は濡れていなくても滑りやすく、一歩一歩に気が抜けないのであります。

    この景色、北アルプスのナントカ岳です、と言われても疑わないでしょ?

     で、登るに連れ、岩の様相は益々アルペン的になりまして、只今クライミング修行中の私としましては、ウヒャァーあの壁に登ってみたぃー・・・なんて言うのが連続で現れる訳であります。
    で、手近で触れる岩の壁で感触を確かめると、結構しっかりしているし、フリクションも効きそうなんであります。
    と、言う事で、調べてみれば結構登られていたりするんだろうな、と思うのでありますが・・・アプローチがシンドイかなぁ?

    鎖場や梯子も随所に現れ飽きません。(この岩の撮り方は煽ってますけど)

     手を使わないで登るのが困難になり、四つ足歩行が多くると岩に触れる手が冷たくて手袋が欲しくなるのでありますが、クライマーを目指す私でありますから、この手に岩の感触をしみ込ませる必要がある訳です。
    そんな訳で、グローブ無しで行く訳ですが・・・ホントーは、軍手も雨用グローブも忘れて来たと言うのが本音です。

    ふうーっ、足に来るなぁ、と小休止で振り返ると雲海の中に薬師岳が・・・

     くさり場やチョットしたなんちゃってスラブを登りつつ、雰囲気的にはほとんど登りきっていると思った瞬間、唐突に山頂に出るのであります。
    えっ?登りきったんですか?・・・さっきの標識の山頂まで残り600メートルは、随分とサバを読み過ぎなんじゃないですか?と言う感じで、呆気なく登りきってしまって拍子抜けした次第であります。
    いや、気持ちとしては、あと一踏ん張り以上の覚悟をしていたものですから、唐突にこれでお仕舞いですよと言われても困っちまう訳です・・・8時40分到着でありました。

     
    下から見た山の雰囲気とは違って、意外に平で広い山頂でありました。

     流石に1917メートルの山頂でありまして、過日の冷え込みの時に降った雪の残雪と思われる雪が日陰に溜まっておりました。
    で、登って来たのは南東側の斜面なので日当りも良く風も遮られて暖かだったようでありまして、山頂は風が強く、寒いんであります。
    私の場合、変な山おやじでありまして、登りきってしまうと気持ちは直ぐに下山モードに切り替わるのであります。
    と、言う事で、遥か遠くの岩手山などを眺めつつ、おにぎり一個とどら焼き一個を食べまして、気持ちはさっさと下山に向かう訳であります。
    それでも、風裏で日当りの良い岩陰に座り込み、しばし、抜けるような青空など眺め感慨に耽る、おやじでありました。
    で、後学の為に、避難小屋だから滅多な事で宿泊するでないぞ、と書かれている小屋も一度は見ておこうと覗いてみると、石油ストーブやマットなんかも有って、結構泊まっている気配がするんであります。
    うーん・・・地元の山岳会とかは意外と気軽に使っているんじゃないのかぁ、なんて勘ぐるおやじでありました。

    で、序でにトイレでありますが・・・山頂のトイレは、携帯トイレ使用ブースと普通のトイレが設置されているとガイドブックで読んだのでありますが、現在は携帯トイレ専用のみになっていまして、避難小屋に管理人が居ないと携帯トイレが買えませんので、持参する必要があると思われます。

    北側・西側は雪がたっぷりで凍っていまして、歩くのが怖かったです。

     登ってくる時に表から見る山容は、まるで北アルプスなんでありますが、頂上の広さとか、ミニ湿原に掛かる木道などに東北の山の面影を見るのであります。
    そんな訳で、風よけに着用したウインドーブレーカーを着たまま、山頂直下の結構なアイスバーンをおっかなびっくりと下ったのであります。

    そこらに立ち入るなと言われると、キジ撃ちする場所が無い訳で、困りました

     小田越からの登山道は風が強いんでありますが、登山口の標高が1200以上でして、河原坊からのルートより、登りがかなり緩和されている訳です。
    なので、より短時間で登れるこちらを選ぶ人も多く、3〜4人の登山者とすれ違いました。
    いやいや、小田越からの登山道も森林限界を超えると岩だらけでありますし、梯子場や一寸きわどい岩場があったりしてアルペン的なんでありますが、それでも、本気で登ったら2時間掛からないで山頂に着くのは間違いないと思います。

    下山途中に見えた薬師岳の美しい姿に、「あの山に登りたい」と思ったのであります。

     さて、登りにも増して距離の短い小田越のルートは、真面目に歩くと1時間半もあれば下山してしまう訳であります。
    私のGPSの計測では2.3キロしか無い訳で、登山口到着は10時20分でありました。
    うーん・・・一日の終わりとしてはちょっとばかし早すぎる時間であるな、と、思う訳です。 で、体調も持ち直し、まだまだ余力も感じられる事から、んじゃぁ序でに薬師岳も登っちまいますか?と言う事で、地図を広げて登山道の見当に入った次第であります。

        続きまして 薬師岳(1644E)へ 

     そんな訳で早池峰山から小田越に降りて参りますと、道路を挟んで反対側に薬師岳への登山道がある訳です。
    しかし、あっち側の早池峰山と、こっち側の薬師岳は見るからに様相が違っていまして、入り口からしてなんとなく、暗い物を感じさせるのであります。

    明るく乾いた山岳の早池峰山と対照的な、原始の山と言う雰囲気の薬師岳入り口

     と、言う事で薬師岳に向かった訳でありますが、登山地図には「ヒカリゴケ」なるものの存在が記されている訳であります。
    うーん、どんな物なんだろうか?
    その昔、白戸三平の漫画で、忍者がヒカリゴケを集めて忍術に使ったと言うのを読んだ記憶を元に、確か岩陰や穴の中に有ったはずである、と言う記憶を頼りにズンズンと登って行ったのであります。
    しかし、早池峰山の直ぐ向かい側に有る山なのにナントも湿気の多い山でありまして、入り口から湿地帯避けの木道が設置されている訳です。
    で、その湿気は山頂直下で稜線に出るまでずーっと変わらない訳でありまして、オオシラビソは鬱蒼と苔に覆われている物が多い訳です。
    太古の原生林など知る由もないのでありますが、何となく、たぶんこんな感じで湿気が多くて、シダ類が茂っていたんだろうなぁ、などと思いつつ、行く訳であります。
    ああ、そうだ、今年の夏に千葉さんに連れて行ってもらった風穴への湿った道に良く似ているなぁ、などと思いつつ、ズンズンと行く訳であります。
    で、この山は花崗岩のようでありまして、蛇紋岩とは植生が全く違うようであります・・・いや、植物はドシロートですが。
    しかし、アレです・・・地図を見て標高差と距離から、気楽に登れると思った薬師岳でありましたが、やっぱりしっかり山でありまして、しかも、岩場と土の道が入り交じった登山道はそんなに楽ではないのであります。

     
    しっかりと梯子なども整備されていました。

     で、岩と言う岩の下、穴と言う穴を覗きながら行くと、ナニやら、ボヤーッと緑色が光っている、とも見えなくも無い苔が、穴の中に見つかった訳であります。
    うーん・・・まず、これで間違いは無いんだろうな、とは思うんだけれども、しかし、晴天の日中で辺りが明るすぎるからなのか、今イチ、爛々と光り輝くと言う印象では無いなぁ、と。
    まあ、しかし、周りの苔とは明らかに違う輝きを放っているのは判る訳で、よっしゃぁ、「ヒカリゴケ撮ったドォー」と。

     
    フラッシュ焚いたら飛んでしまう淡い輝きで、苦労しました。

    いや、ナント無く光ってるでしょ?他の苔とは違うでしょ?

     そんな訳で世にも珍しい?ヒカリゴケを堪能して、いざ、薬師岳の頂上へと向かったんですが、しかし、ホントーに湿気の多い山でして、雨でもないのに岩がびっしょり濡れていて滑る訳です・・・この湿気がヒカリゴケの元かぁ?、と。
    で、1時間も歩きますと、ひょっこりと稜線に出まして、その先300メートル薬師岳山頂の標識もある訳です。
    うーん、一気に登ってさあどーぞ、のタイプの山なんですね、と言う事で、稜線の直下、標高1550メートル辺りまでダケカンバなど茂っているのでありまして、眺望は少なく、やっぱし暗い山でありました。

     
    薬師岳山頂から早池峰山を望む

     山頂到着は12時丁度・・・登り1時間半でありましたが、穴覗きに費やした時間が多いので、たぶん、素直に登ったら1時間程度の山だと思います。
    で、特筆すべきは岩だらけの山頂でありまして、見事にハイマツに覆われ、わずかにシャクナゲも混じるんでありますが、吹き曝しの岩を見ると典型的な「風衝矮低木群落」が見られるのであります・・・たぶん。
    岩にしがみつくように茂るイワウメと、チョットした割れ目から顔を出すイワヒゲなどから、この山の風の強さが窺える訳であります・・・シロートのインチキな見立てでありました。

     さて、山頂ではオオタカの群れ・・・と、言っても6羽ほどですが、珍しい光景を見ました。
    そして、岩山でハイマツが多いのでホシガラスも沢山見られまして、独特な雰囲気の山であるなぁ、と関心した次第であります。
    で、昼時なんでありますが、一気に下れば1時間で行くだろう、との目論見から、昼飯は車に戻ってからと言う事にして下山開始であります。
    で、下山路は、登山地図によると整備不十分につき注意、とされている、小田越山荘を回るコースにした訳であります。
    いや、登山道の整備云々はそれほど悪くも無いのでありますが、岩だらけで足場の良く無い箇所が多い訳です。
    相変わらず湿った岩の連続でありまして、距離は短いけれど気の抜けない登山道が続いたのでありました。
    で、転がるようにして小田越の登山口に到着したのが。1時丁度でありました。
    で、そこから、20分歩いて河原坊の駐車場で、本日の登山終了であります。


     この話 完


    場所や時間はかなり適当ですので、ご注意下さい・・・


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


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