よたよたと、山登り


    No.49

       

    大東岳

      本小屋〜山頂往復 

     久しぶりの大東だけであります。
    目的は、この冬一番のメインイベントである「厳冬期大東岳登頂」を成功させるべく、下見、でありました。
    朝起きて外を見れば、ウフフ快晴・・・ちょっと身体は重いが、行くしか無い訳であります。
    で、おにぎりを握ってもらい、お茶をポットに入れて家を出たのが7時30分でありました。
    で、走り始めて程なくして団地の外れから見える蔵王連峰を見れば、真っ白ではありませんか。
    こりゃぁアレか?大東でもそこそこ積もっていると見た方が良いな、と、振り返って三峰と後白髪を見ると、やっぱし、真っ白でありました。
    と、言う事ですぐに家に戻り、ワカンと、念のためにアイゼンをザックに放り込んだのでありました・・・冬手袋も。

     
    秋保の交差点から大東に向ってすぐの所で見えた大東岳

     で、秋保中学校の信号機から右折して直ぐ、大東岳の姿が目に飛び込んで来た訳でありますが、雪を戴いた姿は、迫力満点でありました・・・うひゃぁ、心の準備がまだちょっと、と。

     本小屋のビジターセンターに立ち寄り、登山届けを出し、トイレを拝借して登山口へ移動すると、さすがに日曜日でありまして、既に6台もの車が停まっている訳です。
    まあ、本日天気の心配は無いとは言え、雪の大東岳にこれだけの人が登ると言うのは、やっぱり登山ブームなんでありましょうか?
    と、言いつつ、自分も昨年から登り始めた駆け出しな訳で、そんなおっさんに登れる山でありますから、まあ、誰でも登れる訳ですね。

       本日の目的は、昨シーズンの積雪期に一度も頂上を踏めなかった大東岳を、今期はナントしてでも登ってやるぞと言う事で、下見であります。
    昨シーズンは晩秋にたった一度登っただけで、大昔の勘と記憶を頼りに挑戦して敗退を繰り返した訳であります。
    しかも、毎回同じような地点で敗退していた訳で、それを克服すべく、厳重なる下見をして、とりあえずGPSに正確な夏道をインプットするのが主たる目的な訳です。

     下記のちょっと見難い写真を見て頂くと分かるんでありますが、大東岳の登山道には、数カ所、旧い登山道や付け替えた登山道を行く所と、その他に、好き勝手に作られた正規の道を外したショートカットなどが入り乱れている訳です。
    で、沢沿いのルートでは、ペンキの矢印の指示がとんでもない所へ案内していたりもする訳であります。
    まあ、踏み後を慎重に辿ればナンと言う事も無いとも思いますが、しかし、おっさんのようなシロートは、時々、アレっ?と思うポイントがある訳です・・・その程度は地図を読め、と仰る方は、国土地理院の地図と微妙にずれているのをご存知でありましょうか?と。

    矢印トラップに引っ掛かると、伐採地に導かれるのであります。

     で、下見でありますから、積雪期の記憶も総動員して、危なかった場所の迂回は出来ないか、などを調べて行く訳であります。
    しかし、アレです・・・シロートのおっさんのルート取りもまずまず、結構なモノでありまして、ここはヤバかったよなぁ、と言う場所に差し掛かり、迂回は出来ないか、もっと安全なルートは無いのかと探し見るのでありますが、これがやっぱり、無いのであります。

    ナンと言う事も無い道ですが、雪が積もると意外と難所ですから

     そんな訳で、確かめながら一歩一歩行くので、いつもよりかなりペースが遅いようであります。
    もっとも、地形の確認で地図を出したり、GPSにポイントを入れたり、写真を撮ったりと、時間を食うような事をしながら歩いているんでもっともなんでありますが・・・。
    しかし、それ以外にもやっぱし、身体が重いなぁ、と感じた朝の感覚は正解だったようで、いつになく大汗をかいて息が上がっているのでありました。

    こんな立派な霜柱が立つくらいですからとても冷え込んだ訳です

     なんだか本日は調子が出ないなぁ、などと思って歩いていると、まるで忍者のような早さで歩く登山者が後方から迫って参りました。
    むむむっ、これは一大事・・・ここで抜かれてはおっさん、末代までの恥、と言う事で逃げようと頑張ったのでありますが、努力の介も無くあっさりとパスされてしまった訳です。
    いや、参りました、はっきり言って私の負けですと、全面的に脱帽するしか無い程に速いのであります。
    で、もっと驚いたのは、この御仁の足許は、ななななナントぉー・・・沢足袋に沢スパッツなのであります。
    雪山に沢足袋と言う組み合わせは過去に見た事も聞いた事も無かったので、私はスペシャル吃驚でありました。
    あの足捌き、物腰、そして無類のスピードに沢足袋・・・彼は恐らく、忍びの者なのでありましょう。

     
    鼻こすりの急登を過ぎ標高が1300程になると、本格的な積雪でした

     景色としては完全に冬山の様相なのでありますが、日差しが有り、そして何よりも風が無いのでとても暖かく感じる訳であります。
    しかし、雪はサラサラですし、手持ちのインチキ温度計も、山頂でマイナス2度を指していたので、気温はそこそこ冷えていたのだろうと思います。

     さて、お助けロープがぶら下がっていると言う事は、ここが鼻こすりなんだろうな、と思う辺りで、又もや後方から追い上げて来る人影が有るではありませんか。
    いや、俺、そんな調子悪いのかぁ?まず、かなりヒイヒイ言ってはいるが、そんなにバテている訳でもないぞ・・・何者だ?、と。
    狭い所に差し掛かっていた事と、雪で垂れ下がった枝の雪払いには、さっさと道を空けて先行してもらった方が身の為だと思い、頃合いを見計らって抜いて頂いた訳であります。
    で、この御仁の足許は、東北の山では登山靴と列び賞されている、スパイク長靴でありました。
    しかし、足許の長靴とは裏腹に、流れるような無駄の無い足運びは、たぶん、彼もまた一角の忍びの者なのでありましょう。
    本日は随分と忍びの者に遭遇する山でありまして、2時間ちょっとしか歩いていないのに、しかも、日帰りの軽荷の状態で二人も抜かれるとは・・・やっぱし、体調のせいにしておこう、と。

     
    山頂であります・・・。

     山頂にたどり着く手前で本日初の獲物を発見し、余裕のポーズで声を掛け、背後から近づき、一気に抜き去った人が一名・・・山登りって、スピード競争でもないし、レースやってる訳でもないのに、私はドーしても、抜いたり抜かれたりと言う事が気になってしまうんであります。
    で、辿り着いた山頂は快晴で、遠くは鳥海山までくっきりと見えていた訳であります。
    先行の人が一人、荷物を降ろして休んでおりました・・・そこへ、先ほどの人もゴールイン、と。
    見ず知らずの初対面で、名乗っている訳でも無いのですが、それぞれに、本日只今、大東岳の山頂の絶景を共有している者として、何だか知り合いのような雰囲気で話が弾んだ訳であります。
    時計は11時チョット過ぎで昼飯には早いんでありますが、雪の具合が判らないので樋の沢へは回らない、と言う事で一致していた事も有り、のんびりと弁当タイムに入ったのでありました。
    そこで、沢足袋を履いた俊足の忍者の話になり、皆して、あれは驚異的な速さの人であった、と、盛り上がった訳です。
    で、んじゃぁ、スパイク長の怪人はドンナもんですか?と、私が水を向けますと、あの人も凄かった、大股なのにするすると歩く姿は、ただ者ではなかったと、盛り上がったのであります。
    しかし、一致した意見として、雪山に沢足袋と言うのは、それほど有効な物なのでしょうか?と言う疑問になった訳であります。

       
    月山です

     で、一人が、お先にぃーと言って下って行き、もう一人も、んじゃぁ、と、言って下って行った所で、随分前に追い越して来たご夫婦が登って来た訳であります。
    で、これから裏コースを回って本小屋へ戻ると言うので、思っているよりも時間がかかりますよ、谷間なので日没も早いですよ、とアドバイスなどしたのですが、ダイジョブだぁー、と言うので、まあ、後は黙っておりました。
    で、写真もタップリと撮ったし、お昼も食ったし、では、おっさんも下山に向いますか、と、山頂を後にしたのが、11時50分でありました。
    この時、まだ山頂で一服している二人の事がちょっと気がかりでは有りましたが、沢足袋の忍者氏ともう一名の踏み跡が有るので、まあ、迷う事も無いでしょう、と。
    仙台市内方向です・・・泉のドームと観音様が見えてますが・・・

    望遠にして無理繰り引っ張った船形山・・・コンデジじゃこんなもん、ですね。

     やっぱし大東岳に登ったら、樋の沢に降りて周回したい所でありますが、雪と言う事も有るし、目的が、地形の把握と言う事なので、登って来た道を戻る訳です。
    で、登山道と言うのは、登りの景色と下山の景色が全く違うのであります。
    そんな訳で、もしも地形を把握したいと思ったら、登りのイメージが薄くならないうちに、さっさと下ってみるととても効果的だと、私は思う訳です。
    しかも、本日は、少ないとはいえ積雪が有るので、とても参考になる訳であります・・・ナンチャってぇ、まるでベテランの語り口でありますが・・・。

     途中の伐採地で地面が崩落している箇所は、ナント無く、そんなに急ではない所が微妙に気になって、こんな傾斜が雪崩るんだよなぁ、とか、沢では、雪で埋まっても飛び石に使えそうな石を写真に撮ったり、たぶん夏道を外して沢の上に巻いて登るな、なんて言う所をゆっくりと調べながら下ったのであります。
    そんな事をして下って来たら、登りの時間よりも1時間近くも余計に掛かってしまい、駐車場到着は2時40分でありました。



     この話 完


    場所や時間はかなり適当ですので、ご注意下さい・・・


    ご意見ご感想は こちらで、承っております・・・


    INDEXに戻る 次のページへ