よたよたと、山登り


    No.59

       

    蔵王連峰

       4月8日 晴れ時々曇り・・・不忘山〜南屏風〜屏風の三叉路

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     なんだか、良かったんだか悪かったんだか、複雑な心境で終えた屏風の稜線歩きでありました。
    いや、狙っていたんであります・・・春になって雪が締まり、さりとて、融けすぎて稜線を繋いで行けなくなる程の時期になる前・・・ちょうど今頃です。
    で、昨年は4月16日に不忘まで行っている訳ですが、昨年の不忘の稜線はこんな風でありまして、歩けなくて下をトラバースして怖い目にあった訳です。
    今年は僅か一週間早いだけなんでありますが雪がたっぷりあって、こんな感じで尾根通しに行く事が出来たのでありまして、スキー場から上は雪もまずまずで踏み抜きも少なく、山頂まで楽チンでありました。

     白石スキー場出発は8時30分でありました。
    晴れたり曇ったりの空模様でありましたが風はなく、予定通り屏風の稜線を歩けるかも知れないと、期待させる空模様で有りました。
    本日の予定は、不忘から南屏風へ行き雪庇の稜線を進んで屏風の手前の三叉路から水引入道に行きジャンボリーコースを下る、と言うものでありました。
    おっさんは山を舐めている訳でもないのでありますが、下見も無しで行っちまう事も有る訳で、今回もジャンボリーコースは初めてであります。
    まあ、しかし、蔵王ごときにそんな大それたコースが有ろうはずも無かろう、と高をくくって行った訳であります。

     雪の締まりが良く、背中のワカンが邪魔者になる程でありまして、標高1350メートルで少し急になるまでアイゼンも無しで楽に歩けた次第であります。
    不忘はスキー場のリフトが動いている時なら大した標高差では無くなるので、真冬でも登っている人が居るのかもしれません。
    そんな訳でけっこう新し目の赤布が目立ち、新旧入り交じって道案内には事欠かないコースであります。
    もっともスキー場から適当に登ったら、後は北方向に登って行くと明確な尾根に当たるのでそれを詰めて行けば黙って山頂な訳でとても分かり易い訳です・・・いや、おっさんはそう思っていますが、他の人達のコース取りは知りませんから適当に言っております。

    スキー場の上の緩斜面から不忘へ続く尾根の、でこっ八ピークが見えた時に、先行者の姿が2名認められました。
    先行者が居ても踏み跡は見ていない訳で、やっぱし雪の不忘は尾根に出るまでは人それぞれ、好き勝手に行くのであるな、と、ここでも確信する訳であります。

     さて、ほとんど無風で曇り時々晴れ、暑くも無く寒くも無いと言う、又と無い青木であります・・・いや、コナカかな?・・・あっ、春山だった・・・面白く無くてゴメン。
    と、まあ、冗談はさておきましても、滅多に有るものではない絶好の条件に恵まれ、不忘山頂までは順調でありまして、11時10分着でありました。

     山頂のすぐ下で下山する先行の二人に行き会いまして、ご挨拶などしたのでありますが、お見受けした所なかなか年季の入った年齢であるな、と思った訳であります。
    まあ、自分もいずれそうなる訳でありますが、あんな歳までこの山に登っていられる自信は無いな、と感服した次第であります。
    で、不忘の山頂で軽く記念写真等撮って南屏風までの道を見ると、けっこう峻険と言いますか、痩せ尾根だな、と言いますか、雪も着いていなくて厳しい顔を見せている訳であります。
    ドーすっかなぁ?まかり間違ってここを引き返して来る事になった場合の登り返しとか考えると、大変だなぁ、と。
    少しばっかり弱気が頭をもたげたのでは有りますが、足は勝手に先へ行く訳であります。

     不忘山を白石側から眺めますと、なんともたおやかと申しましょうかおっとりと申しましょうか、女性的な山であるなと見える訳です。
    しかし、一度山頂を超して裏へ廻った途端に、岩陵の痩せ尾根のしかも急傾斜に豹変する訳であります。
    したがって、積雪期に不忘山を登る時には、不忘までなのか、その先まで行くのかに依って、予定は大きく違うと思うのであります。
    いや、はっきり言っておっさんごときの技量では厳冬期には無理でありましょう。

     おっさんはアイゼンを履いているのでありますが不忘の山頂近くからはほとんど雪がなく岩の上を歩いている訳です。
    で、立派な本格的なアイゼンなら心配も無いのでしょうがおっさんの安物のアイゼンでは岩陵帯を行くのはとても不安な訳です。
    まあ、しかしこれしか無い訳ですから行くのでありますが、岩だけならまだしも、火山礫のような地肌が出ている所も有り歩き難いったら無いのであります。
    痩せ尾根は下りは大変で、手を突き着き、ピッケルを杖代わりにおっかなびっくり降りる訳でありますが、アイゼンの爪が妙な引っ掛かり方をして邪魔でした。

     不忘山の裏側に廻り南屏風を見上げる訳ですが、そこまで、二つの岩のピークを越えて行く訳であります。
    しかし、その先に見える南屏風から水引入道の三叉路までの稜線には見事な雪庇が張ってダイナミックでありまして、気持ちがはやるのであります。

     岩にアイゼンを引っ掛けぬよう、浮いた岩を踏んで転けぬよう気を使いやっと上り詰めた南屏風からの眺めは壮大でありました。
    遠くは朝日から月山方向や近くでは熊野岳やお釜が手に取るように見えるのであります。
    しかし、何よりも見事なのは長く続く稜線と雪庇でありました。

     さて、南屏風から屏風の手前の三叉路まではほとんど平坦で、厳冬期ならアオモリトドマツの樹林帯に樹氷も見えるのでありますが今は春山なので時機を逸していました。
    で、遠くから見る雪庇の張り出しは大した事が無いように見えるのでありますが、それは大間違いでありました。
    雪庇の端から随分離れて歩いていたつもりなのですが、自分よりももっと外側(山側)に何やら溝が見えたのであります。
    あれまあ、新雪期にラッセルした踏み跡でしょうかねぇ?なんて思ったのでありますが・・・えええっ?そんな物がいつまでも残っているはずが無いじゃないか?んじゃぁ、あれはナニ?・・・ウヒョォー亀裂だぁ、と言う事で、暢気に雪庇の真ん中を歩いた居たのでありますが、慌てて飛び退いたのでありました。
    雪解けとともに雪庇は落ちる準備に入っている訳でありまして、そのうちドドーンと落ちるんでありましょう。

     積雪期にこの稜線を歩けるなんて夢のようでありまして、うれしくて、写真を撮ったり景色を眺めたりと楽しみながら三叉路まで来た訳であります。
    ここで12時30分でありました。
    だいぶ腹が減ったし、ここまで休まずに来たので立ち休みでおにぎりを食べ、熱いお茶を飲んで小休止であります。
    で、小休止の後、んじゃぁ、と言う事で看板に従って水引入道へ向う尾根を下り始めて直ぐでありました。
    目の前に現れたのは、語るも恐ろしい急斜面でありまして、とても降りられる気がしない訳です。

     それでも往生際の悪いおっさんは、なんとか回り込むなり、トラバースするなりして進む方法は無いかと急斜面をウロウロしてみた訳です。
    しかし、ナンボ見ても安全に下れる場所は見つからず、距離にして300メートル足らず、高度差にして150メートルが降りられずに断念であります。
    まず、予定変更はドーでも良いのでありますが、引き返すとなるとまたもやあの岩陵帯を行く訳でありまして、気が重いのであります。
    まあ、しかし考えようによっては、大好きな南屏風の稜線を往復できる幸運に出会ったとも言える訳で、考えようであるな、と。
    ですが、ナンボ考えても岩だらけの尾根をアイゼンで行くのは塩梅の良いものでは有りませぬ。

     まあアレです・・・右足が完全に復調していればたぶん行ったのでありますが、今はちょっと無理しただけでも激痛な訳で、まかり間違って歩けなくなってヘリの救助を呼んだなんて事になったら、おっさん、生きてはいられない程恥ずかしい訳でして勇気ある撤退と言う事でありましょう・・・いや、技量が伴っていないと言うのは本人が一番自覚している訳です。

     さて、戻るとなると南屏風まで緩〜く登りな訳です。
    で、1810メートルの南屏風から1705メートルの不忘山頂までも基本的には下りなんでありますが、途中の小さな登り返しと、何よりも足場が良く無いので時間を食う事が予想される訳です。
    予定通りなら水引入道をちょっと登ったら後はずーっと緩い下りだと気持ちが緩んでいたものを、ぎっちりと引き締め直さなくてはならない訳で、不忘の手前のピークから山頂を眺めたら気持ちが萎えちまいました・・・まあ、それでも休まず歩くのがおっさんの良い所なんですけど。

     そんな訳でやっと不忘の山頂に戻って来たのは2時15分でありました・・・あんなに一生懸命歩いたのに1時間30分も掛かっちまった、と。
    で、山頂はさっさと通過して雪のある尾根に出たい訳であります。
    なにせ、ずーっとアイゼンで岩の上を歩いている訳で、安物のアイゼンがダメになりはしないかと心配な訳です・・・いや、まだまだ急な下りはある訳で、壊れられたら困るんであります。

     で、不忘山頂直下の岩場を降りて雪の尾根に出た所でホッとしたのか気が抜けたのか、右足が痛くて堪らなくなっちまった訳です。
    これは休息と麻酔が必要であるな、と判断し、風が無いのを良い事に標高1600メートルの吹きっ晒しの尾根で鍋焼きうどんを喰う事にした訳であります。
    この時、2時30分・・・8時30分に歩き始めてから5時間、初めて腰を下ろした訳であります。
    少しくらい気温が低くても風が無いと言うのは天国でありまして、氷点下2度も全く平気でありました。
    で、鍋焼きのお湯が沸くまでの間におっさんは麻酔の注入であります・・・まっ、ただの缶ビールなんでありますがね。
    五臓六腑に染み渡る缶ビールと熱々の鍋焼きうどんを喰いながら、遥か太平洋まで眺められる景色を独り占めであります。
    そうこうしているうちに時間は既に3時であります・・・日が長くなったとはいえ、そろそろ西日の様相を呈して参りまして、ホシガラスもぎゃーぎゃーと鳴いて帰る気持ちを掻き立てる訳であります。
    んじゃぁ、麻酔も効いた所で下山しますか、と言う事で歩き出して、駐車場到着は4時15分でありました。

     本日はとっても疲れたのと、足が痛かったので直ぐに車を出す事が出来ず、コーヒーなど入れて飲み、のんびりと帰路についたのでありました。

     いやぁー・・・山は楽しいねぇ。

     
    本日の歩いた足跡
        

     この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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