よたよたと、山登り
No.61
船形山
どこへ行くとも無く
5月02日 むふふ快晴
本日は単独ではありませんで、一個小隊であります・・・うん、4名だから分隊ですかね?
と、言う書き出しで、前回の「船形山の升沢小屋で豪華な昼飯を食う」山行を書いた訳でありますが、今回も同じメンバーで、中身も似たような感じで、要するに、アレコレ理由をつけては山に入り、豪華な飯を食うと言う、そう言う山歩きをして来た訳です。
ええ、まあ、でありますから、これを登山と言うのかどうかと言う判定は、それぞれが描く山登りのイメージで賛否が大きく分かれる所であるな、と思うのであります・・・えっ?なにを言いたいんだ、と?・・・まあ、アレです、今回も船形山の山頂は踏んでいない訳で、軟弱だなぁと言われそうなので、事前に言い訳などしてみた次第であります・・・前振り終わり。
5月2日・・・旗坂の駐車場に9時集合と言う事で、のんびりと出掛けたのであります。
しかし、流石にゴールデンウィークの真っただ中、登山届けの箱のある広い駐車場は既に満杯でありまして、キャンプファイヤーをする方の駐車場に停めたのであります。
しかし、それでも思った程では無いなと言うのがおっさんの感想でありまして、その理由はたぶん、つい数日前、2年振りに通行止めが解除になった栗駒山の方に人が流れたのではないか、なんて思ったのでありますが、真相は分かりません。
さて、4月29日にも同じ道を辿って登っている訳でありますが、僅かに3日後とは思えない変化でありまして、最盛期だったイワウチワは盛りを過ぎ、代わってショウジョウバカマなんかが融けた雪の下から顔をのぞかせていたのであります。
しかし、船形山の登山道は水捌けが良いな、と思うんですが、如何でしょうか?・・・山の保水力が高いからですか?
3日前から比べると残雪が急速に後退した登山道を、本日は15キロを背負って登って行った訳でありますが、どうせ20番までだからと言う読みがあるので楽でありました。
70リットルのザックが3ヶと35リットルが1ヶ・・・中は食料か?
分隊長の計画では20番あたりにザックをデポして、船形山を眺めるならここしか無いだろうと言う、蛇ヶ岳手前のビューポイントに登ってからブナ平へ行っててんとを設営しようと言う事でありました。
で、とりあえず20番の標識の近くでデポしてあった酒類を回収し、少し早い昼飯を食べてから蛇ヶ岳方面へ行く事になりました。
デポ品を掘り出す分隊長・・・うっしっし、あった、あった・・・と
北五葉松の根元と言うのはどういう訳か雪解けが早い・・・いや、雪解けが早いから北五葉松が生えるのか、その辺はアレでナニな訳ですが、そう言う所へザックを降ろして昼飯の支度に取りかかったのであります。
が、やっぱし一息入れる時にはプシュッーといきたいのが人情でありまして、早い話しが、ビールであります。
おっさんの手元の温度計が15度を示しておりまして空は快晴であります・・・お天気がビールの美味さを保証しているようなもんでありまして、そりゃぁこの世のものとは思えない美味さでありました。
で、私は相変わらず見るだけなんでありますが、その間にも分隊長とY譲は昼飯の「釜揚げうどん」の支度に余念がないのであります。
しかし、昼飯が、雪の原で釜揚げうどんですよ・・・晩飯はナンでしょうね?この時点では知らされておりませぬ。
昼飯釜揚げうどん作戦を遂行中の分隊長と炊事班長のY譲
ゆっくりと昼飯などを食しておりますと、犬が現れまして、おっさんは見た目のまま「とら」と呼んでみたのであります。
犬の後から現れた山スキーを履いた登山者は分隊長とは旧知のようでありまして暫く雑談などされ、予定は三光の宮であったのだけれども、分隊長の勧めにより我々と同じピークを目指して行った訳であります。
で、山スキー氏が出発の際、走り回る犬にかけた声が「とら」行くぞぉ、でありまして、おっさん大感激であります。
分隊長のでかい背中に幼稚園児の弁当ザック(息子の物か?)
快晴でありました。
気温が上がって雪が緩むのでワカンやスノーシューが無いと歩き難くなっていましたが、風もほとんど無い尾根を気持ち良く登って行きました。
尾根沿いには「とら」の足跡が残っており、それを辿って行くと標高1350メートル程度で森林限界を超え、低い灌木だけになって船形山の全容が見えたのであります。
山頂小屋から千畳敷、あるいは夏道沿いになる沢筋を ゆっくりと登る登山者の姿、山頂方向から下山に向っている登山者などがパノラマの中に見えるのであります。
で、我々が一大パノラマを堪能している時、一足先に登った山スキー氏は滑降体制に入って華麗なるテレマークのテクニックを使って急斜面を降りて来たのであります。
滑降するスキーの早さは四つ足で走る「とら」でも追いつけずに、必死に追いかける姿を見て、おっさんも相棒の犬が欲しいなぁと思ったのであります・・・相棒犬、飼おうかなぁ。
山頂ではおっさんの写真しか無く、まっ、無視して後に広がる船形山頂をご覧下さい。
名無しのピークは1400Mに少し欠ける標高でありますが見晴らしは抜群でありました。
船形山頂方向はもとより、三峰が眼前に迫り、手の届きそうな所には蛇ヶ岳、三光の宮方向は北丸松沢沿いの深い谷の様子と、主稜線から少し外れているから見える景色が展開されているのであります。
残念ながらこのピークは夏道は無く、積雪期にしか登れません・・・もう今年は終わったと思います。
流石にゴールデンウィークだなぁ・・・長倉尾根から三峰を越えて縦走して来た人が見える、と言うと、あっ、蛇ヶ岳にも人が居る、なんてのが見える訳であります。
いつまで見ていても飽きない景色ではありますが、我々分隊の次の作戦は、ブナ平に幕営基地を設置しなければならない訳であります。
んじゃぁ、と言う事で、また「とら」の足跡を辿って下り、20番でザックを回収しブナ平へと向ったのであります。
この3日間でまさかと言う程に雪は溶け、小さな沢や小荒沢源頭も一見して沢と分かる状態になっておりまして、今まで真っ直ぐ乗り越せた沢が邪魔者になっておりました。
それでも、すっかり位置関係を把握したブナ平へ行く道に迷う事は無く、20番の標識から15分程度で行く訳であります。
分隊の本部となる幕営地です
ブナ平に到着しテントを設営していると、風が出て来たなと思ったら黒い雲が湧いて雨が降り出しました。
これだから山の天気は分かりません。
1時間前まではほぼ快晴であった物が、夕方になって冷えて来たら雨になる訳ですから・・・まっ、この手の雨は一過性ですけど。
で、テントを張りまして、水汲みも終えて、いよいよ、この度の山行のメインイベントの宴会であります。
いや、他の皆さんがどのような思惑で山に来ているのかは分かりませんが、おっさんは、ブナ平に暴営し、ブナの巨木の懐に抱かれて酔っ払うのが目的でありました。
おっさん、酔っぱらいな上に、テントの中は曇っている訳でして・・・
まず、ビールで乾杯などしてから、アレコレ摘んで飲みながら、ブナの森についての考察や、郷土の自然環境保全についての意見交換・・・そう言うモノは出たのかもしれませんが、まあ、酔っ払ってアレコレ話しているうちに、誰からとも無く腹へったの声が上がり、晩飯のメインの焼き肉に突入したのでありました。
で、山用の携帯コンロで焼き肉なんて思いも依らなかったおっさんに、先日、餅ピザを焼いたフライパンで、見事に上等な焼き肉を展開してみせた訳であります。
分隊長とY炊事班長の飯の作戦には、もう何も言いますまいと思ったんでありますが、しかし、やっぱし美味い、と言いたくなる訳です。
で、国産和牛とオージービーフの味比べなども楽しく、ビールをガボガボと飲み、ホルモンなんかまでジュージューと焼いて喰った訳であります。
おっさんとしては、肉の脂で焼けたタマネギが一番うまかったなぁ、と・・・。
で、ナンだかんだと飲み食いして、皆さんが眠たくなって寝袋に潜り込んだのが9時半頃でありましょうか?
しかし、おっさんは眠くならなかったんで、キジ撃ちも兼ねて月明かりで明るい夜のブナ平を鼻歌まじりに散歩であります。
この時、ブナ平で2番目に太いブナの木の「花染」に話し掛けた訳であります、が、・・・ふふふ、内容は内緒であります。
花染は誰が見ても女性の木に見える訳で、それはそれは上品なブナであります。
で、どーも花染は、おっさんが嫌いではないような事を言って来る訳で、まっ、とても楽しい会話を楽しめたとだけ申しておきましょう。
5月03日 今日も快晴
ブナ平の夜明け・・・林間のご来光であります。
さて、おっさんは昨夜の余韻が残りすぎておりまして、一度起きたんでありますがまた寝袋に逆戻りでありました。
しかし眠っているのか起きているのか、半覚醒・・・ハンカクセェ?・・・いや、寝ぼけつつも外の音など聴いていた訳です。
夜明けとともに聴いた事も無いような鳥のさえずりが聞こえ、そのうち、自分の頭の上でキツツキがトトトトトトッと高速で木を突く音が響き、にぎやかでありました。
この辺が真冬の幕営と違う所でありましょうか?初めてこんなにぎやかな朝を迎えたのであります。
これが山中で食べる朝飯ですか?
早起き組は花染山の稜線を辿り山頂近くまで行って来たとの事でありましたが、おっさんは朝飯が出来るまで寝ていた訳であります。
最後、ドーにもキジ撃ちが迫って参りました所を潮時と起きたのでありますが、朝飯の準備を見てまた仰天であります。
はぁーっ、最後まで隙を見せないこの布陣、恐れ入りました・・・まっ、様子は写真から察して下さい。
変わった宗教の集団自殺や大量遭難ではありません。
で、朝飯を食ったらそれぞれ、また寝るとか、散歩するとか、と言う事だったんでありますが、余りにも天気が良いので誰とも無く銀マットを持ち出して寝転んだ訳であります。
雪原にマットを広げひっくり返って空を見上げると、真っ青な空にブナの若芽がキラリと光る訳です。
耳には小鳥のさえずりと、遠くから走りよる風の音、と、目にも耳にも、入って来るのは自然の物しか無い訳であります。
これを至福の時と言わずしてナントしましょうか、と言う程に贅沢な時間を過ごして・・・結局はイビキをかいてまた寝た訳ですが。
花染の稜線に掛かる雪庇を滑り降りる分隊長
まあナンボでも寝ていられるのでありますが、おっさんは兼ねてから気になっていた花染山からの雪庇の張る稜線に登ってみたくなった訳であります。
なので、スパッツを着け、ピッケル代わりにスコップを持ち、カメラを首からぶら下げて行ってみた訳であります。
まあ結果は、ほんの少し登って行くと尾根は切り替わり、三光の宮へと稜線は登って行く訳で、この稜線はここまで、と言う事でありました。
しかしここも積雪期にしか来られない所で、西側には深い保野川の谷が走り前船形から船形山頂への稜線は見応えがありました。
稜線上の太くて背の低いブナと、ブナ平の背が高くて端正なブナを見比べ、生まれ育った環境の違いをブナたちはどのように捉えているのか、などを話し合いながらベースキャンプに戻ったのであります。
いや、ブナ平の木には育ちの良さと言いますか、素直に育った上品な何かを感じるのでありますが、稜線上で頑張る背の低いブナたちは、無骨とも言える逞しさをひしひしと感じる訳であります。
歩く事、移動する事の出来ないブナたちがナニを思っているのか、次回はこの辺りを聴いてみたいと思うので、また、行かなくてはならないな、と思うのであります。
手前のごつごつしたブナの大木が黒森で、奥の白っぽくて上品なブナの大木が花染です
で、いつまで帰りたく無いのは全員同じ心境な訳でありますが、しかし、帰らなければならない訳であります。
昼飯の納豆餅を頂いてから、しばらく、銀マットにゴロゴロしたり、酒を飲んだりしながら・・・まだ飲んでるんですかぁ?・・・名残を惜しんで、午後二時頃、テントを撤収を開始して帰路についたのであります。
余韻に浸りながら、登って来た昨日とはまた様子が違った登山道や草花の変化に驚き、皆少し無口になりつつ下山して行ったのであります。
旗坂の駐車場到着は4時半でありまして、他に登山者の車は無く、今日は山頂にも升沢小屋にも泊まりの人は居ないんだねぇ、などと妙に静かな船形山を後にしたのでありました。
この話 完
山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・
ご意見ご感想は
こちらで、承っております・・・
INDEXに戻る
次のページへ