よたよたと、山登り


    No.63

       

    雁戸山

       雁戸のてっぺんで鍋焼きうどんを食う

     5月16日 晴れ時々曇り

     笹雁新道と言うのを地図で見つけてから、何度か行こうと計画したのですが、その度にナンかカンか行けない事情が持ち上がって、中々行けなかったのであります。
    笹雁新道へのアプローチの林道のドン詰まりまで、我が家からぴったし1時間でありまして、とても近いのでありますが、まず、近くて遠い山だった訳であります。
    ガイドブックで見ると3時間程度の行程とあるので、9時に出発すればちょうど山頂で鍋焼きうどんタイムになるな、と言う事で、家を出たのはのんびりと8時でありました。
    到着すると、林道の行き止まりには既に2台の車が停まっていたのでありますが、どちらも山菜採りの人の車でして、出発準備をしているとどちらも帰って行きました・・・やっぱし、こっちから登る人は少ないのかな、と。

    風も無く、さわやかな五月晴れに新緑がまぶしい程でありました。

     さて、身支度を整えて出発したのは9時15分でありました。
    沢の随分上を巻くように着いている登山道・・・いや、これが、荒れてはいるのですが軽トラくらいなら走れただろうなと言う感じの、妙に広い道路な訳です。
    うーむ、何かあるな、これは、間違いなく何か隠された意図があるな・・・伐採か?いや、伐採跡も植林跡も見当たらない・・・なんだろう、この異様な道は、と進んで行った訳であります。

    おお、すんげぇ迫力の岩場だぁ・・・滝かぁ?

     で、快適な幅広の登山道を進みますと、沢の突き当たりに、小さな滝を伴った素晴らしい岸壁が現れたのであります。
    へぇー、こんな滝があるのは、見た事も聞いた事もなかったのでとんでもなく驚きでありました・・・岩登りの人や沢屋さんが登っていそうな壁でありましたが、おっさんには手も足も出ない様子でありました。
    下を流れる沢の水量は半端ではなく、只今雪解け水を全力で集めて流しておりますと言う感じで、普通に沢を遡上するのも無理、と言う感じでありました。
    で、緩い傾斜の広い登山道を行きますと、所々に道をコンクリートで舗装した痕跡が見えるのであります・・・ナンだこりゃぁ?と。
    まあ、これは作業動だったのであろうと見当をつけて進みますと、ドデーンと現れたのが堰堤でありました。
    先ほどの激流の沢から分岐して、こちらは水が一筋も流れていない涸沢な訳で、何が狙いで作られた堰堤なのか、とても不思議なものでありました。
    で、たぶんおっさんの勘は当りだと思う根拠として、この堰堤から先は普通の山道になるのであります。

    ナンと言う花か、名前も知りませぬが美しいので撮って来ました。

     笹雁新道はアレです・・・けっこうグイグイと登って行く登山道でありまして、登り応えがあります。
    しかし、道はしっかり手入れが行き届き、刈り払いも昨年秋にでも終わっているのか、歩き易い道であります。
    まあ、昨年屏風の登山道で騒ぎになった、あんまり幅広く笹を刈るな、なんて文句を言いたい人には驚く程広くきれいに刈り込んであるのでアレですが・・・。
    おお、名残雪か残り雪か・・・なんであれ残雪がありました。

     標高800メートルくらいで小さな雪田が現れまして、初夏の陽気に残雪と言う、山に登っていて一番気持ちのよい場面に出会しまして、もっと上が楽しみだなぁ、と、期待を持たせる訳であります。
     
    この名前を附した赤布は・・・船形の雪の中で出会った、あの・・・

     何の展望も眺望もない山腹の巻き道を行く訳でありまして、キツイ登りと相まって、中々に登り応えがある訳です。
    そんな時に、ふと、何でもない所に赤布を発見であります・・・なしてここに赤布なんだべ?と思ってみると、そこにはご芳名が記されている訳であります・・・「真由美」と。
    いや、この赤布には船形山でお世話になっている訳でありまして、会った事もない人なんでありますが、なんとなく親しみが湧くのであります。
    しかし、船形では雪の壁をものともせず進むし、ここでは、全く意味不明の場所にお印を残すし・・・ホントーにどんな人なのかお会いしたいと思っております・・・出来ればこっそりと、ああ、この人か、みたいな環境で。

    先日この花の名前を教わったんですが、忘れました・・・2色揃ってました。

     この山の道は沢の脇から始まって、後は山腹をジグザクに切って行ったり、急斜面を避けて、それでも最終的には雁戸へ続く尾根に出るように、とても良く付けられているな、と思う訳です。
    後で地図を見ると、実に無駄のない道になっている訳で、誰が作った道なのか知りませんが、感心致しました。
    しかし、歩き出したら、雁戸の手前の1410のピークまでずーっと登り一本です。

    月山がくっきりはっきりと、とても大きく見えました。

     何も見えない巻き道と言うのは精神的に辛い・・・いや、前が見えないので知らない間に高度を稼いでいる?・・・まあ、人それぞれだと思うんでありますが、おっさんは好きです。
    で、こう言う道でも必ず一カ所やそこらは展望場所があるものでございます・・・ほらっ、と言う事で、1100メートル当りの所で尾根に出て、展望が開けた訳でありまして、月山がガビーンと飛び込んで来たのであります。
    ここからは樹木も灌木になって風も通るし、そこそこ展望もあるようになった訳であります。
    しかし、この辺りからは灌木がけっこう煩く、半袖でいたおっさんの腕は擦り傷だらけになってしまいました。
    月山も見事なんでありますが、直ぐ傍の仙台神室から続く尾根の眺めがこれまた秀逸でありまして、岩が露出した雰囲気は堂々たるものであります。
    で、もしもこの山が後1000メートルも背が伸びていたならば、東北には山がない、とか、あれは丘だろう、なんて事は言われなかったであろうと思うのであります。

     
    本日一番の残雪、雪渓でありますが、方向が違うので歩きませんでした。

     最初のピークが見えて来まして、あそこまで行けば雁戸の本体が見えるのか?と、腕の高度計を見ますと、既に1350まで来ていまして・・・スタートは580くらいでした・・・1480の雁戸まではナンボも無い訳であります。
     
    左が南雁戸で、右が雁戸とこれから行く稜線であります。

     で、ピークに出ましたら、予定通り雁戸が見えました・・・うひゃぁー、けっこう遠いぞぉ、と。
    そして、それにもまして驚いたのは雁戸へ突き上げる稜線の急傾斜でありました・・・まっ、ホントーは知ってましたが、現実は見たく無かったと。
    あれぇ、ここまで2時間ちょっと掛かっている訳で、ガイドブックの示す3時間であそこまで行くのかな、と、心配になったのでありました。
    で、嫌な事に、今居る場所から続いて登るのではなく、一度下って登り返す訳であります・・・しかも、急斜面には残雪がタップリと。
    まあ、文句を言う前に歩きなさい、と、誰が言うのでもないのですが、歩かない事には進まない訳でして、グズグズの腐れ雪に登山靴を打ち込んで行く訳です。
    おっさん、本日はスパッツも無しでここまで泥の一滴も付けずに来ている訳で、按部の水たまりや雪が消えかかっている所の泥が嫌だなぁ、と。

    雁戸の斜面から崩れ落ちた雪の塊・・・冬は無理だなぁ

    この雪が崩れて落ちている訳ですね・・・雪崩っぺなぁ

     結構な痩せ尾根ですが薮っぽいので緊張感は皆無です。
    しかし、雪ならまだ良いのでありますが、所々泥になっていまして、ズルズルな訳です。
    手に触るものすべて掴んで、なんとか下りまして、今度は登り返しであります。
    うへぇー・・雪だけならまだしも、こっちも泥かよぉ、と、急斜面を滑りながらもじわじわと登って行く訳であります。
    で、突然ビョーンと飛び出して見えたのは山頂の標識ではなく、三叉路の立て札でありました・・・11時45分着。
    そこから少し、山頂まではほんの2分程であります。
    で、山頂にはご夫婦一組と、単独の、おっさんと似たような年頃のおやじが一人居りまして、昼飯を食べておりました。
    いや、山頂からの眺めは、値百万両でありまして、朝日連峰の一際目立つ大朝日岳、目の前の月山、左奥に鳥海山、隣に新庄神室の連峰、隣に、栗駒で、栗駒と船形連峰の間に焼石岳まで見えているのであります・・・山座同定は適当ですが。

     いや、おっさんとしてはホントーはここでケツを落ち着ける予定ではなく、南雁戸に行って、1410メートルのピークまで戻ってから昼飯にするつもりで居た訳であります。
    しかし、この眺めと、お日柄の良さを無視して、ガツガツ登る必要も無いな、と言う事で、ここで昼飯を頂く事にたわけであります。
    本日のメニューは、鍋焼きうどんとおにぎりと缶ビールとバナナでありました・・・いや、いつもと一緒ですんません。
    で、鍋焼きうどんにはアルミの鍋が付属している訳ですが、これが運搬中にしばしば穴があく訳です。
    本日も水を入れたらチョロチョロと漏れたのでありますが、しかし、本日は新兵器のフライパンを持参して来ているのでそれで煮て事なきを得た訳であります。
    えっ、なんでフライパンを持っているのか?・・・ビールのつまみに牛タンの味噌漬けを焼いて喰うつもりだったんですが、途中でコロボックルに盗られたみたいで、無くなっちまったんですね・・・残念です。

     いやぁー・・・一時間以上もゆーっくりして、たった一本しか無いビールをチビチビとやって、うどん喰って、大福餅喰って、コーヒーなんか飲んで。
    思い返せば一昨年の秋、この雁戸の山頂で鍋焼きうどんを喰おうとしていた爺様たちの事を、冷ややかに笑い、何しに山に登ってんだ、なぁーんて言った私が、この有様です・・・あの時の爺様達、ごめんなさい、と。

     帰り道は同じ道をひたすら下るだけですから・・・しかし、登りがキツイ道は下りもそれなりでありますが、今時は日が長いのでゆっくり行ってもドーって事は無い訳で、気楽であります。

     山頂を1時00分出発、到着は3時10分でありました・・・いやぁ、笹雁新道、好きになりましたぁ。  

          

     この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


    ご意見ご感想は こちらで、承っております・・・


    INDEXに戻る 次のページへ