ちょこっと行って来る山登り


    No.9 オボコンベ山(595メートル)



       山、高きが故に尊からず

       君はオボコンベ山を知っているか?・・・まあ、よっぽどの山好き、それも地元の山歩きが好きでもないと知りませんよね。
    本日はお日柄が良く無く、青葉区みやぎ台大字山奥字谷底の我が家は朝から時雨れておりまして、高い山は危ないな、と判断致しまして、んじゃぁ何処へ行くべ、と言う事で近所の山を物色してみました。
    「宮城県の山」と言う登山のコース案内書を見まして、オボコンベ山のキャッチコピーに大いに惹かれたのであります。
    それは「楽しい沢歩きで鋭く尖った異色の山頂へ」とありまして・・・異色とな?ほうほう、んじゃぁ確かめなくちゃなるまいね、と言う事で出掛けた訳であります。

    この山は自治体は関与していませんので手作り感一杯の案内板です

     オボコンベ山・・・変な名前でありますが、宮城の方言から生まれた山の名前だそうで、「おぼこおんぶ」が訛って、オボコンベになったそうです。
    おぼこ、とは赤ん坊のことで、山容が赤ん坊をおんぶしているように見えるので付いた名前だそうですが、本日は山頂は雲に隠れており、おぼこをおんぶしているのかどうかは確認出来ませんでした。
    山の系列としては、二口山塊の一番手前、平地寄りで、大昔の溶岩が研ぎすまされて尖った山だと言う事であります。

    水道屋さんの橋ですか?

     さて、オボコンベの登山口は川崎町本砂金川沿いに有ります・・・本砂金ですよ、いかにも何か有りそうな、良い名前じゃありませんか、ねぇ?
    我が家からは勝って知ったる裏道を駆使して僅か30分であります・・・駐車場にはなんと既に3台の車が停まっておりました。
    このクソ寒いミゾレまじりのマイナーな山に、車3台分の先行者が居る訳かぁ・・・すげえ人気の山だったりして、と、ちょっと驚きであります。
    さらさらっと合羽など着て身支度を整え、分りやすい登山道入り口の標識に従って、本砂金川へと下りて行きました。
    で、本砂金川を一目見た瞬間、ええっ?沢じゃ無いじゃんかぁ、正真正銘の川だよこれは、でありまして、とても登山靴で渡れる水量では有りません。
    が、しかし、ちょっと目線を上流にずらすと、そこには何やら、橋のような物が掛かっているでは有りませんか。
    たぶん水道の管理とか、なんとか、とにかく公の物であるぞ、民百姓は通行まかり成らん、と御ふれが掛かっておりましたが、そこはそれ、通りゃんせ等歌いつつ手を合わせて拝みながら渡らせて頂いたのでありました。

    しばらく沢沿いです・・・ガイドブックは沢の中を歩ける、と

     オボコンベ山の標高は595メートル・・・低山のハイキングコースなんだろうな、と言うのが私の読みでありまして、ガイドブックでは山頂まで1時間35分と成っておりました。
    よっしゃ、そんなら本日は山頂で鍋焼きうどんでも喰うか、と言う事で、バーナーなど一式を背負ったのでありました。
    ところが、ひょっとすると晴れ間が出るかも知れないと言う期待を大きく裏切り、歩き始めの雨は、すぐに雪に変わり、辺りの山の稜線を吹き抜ける風の音がゴーゴーとひろみでありました・・・?。
    もっとも歩いているのは本砂金川の支流の沢沿いのため、風はほとんど当たらずで音だけが不気味なんでありますが・・・。

    岩山で表土が薄く、木が育つと重みで倒れるんですかね?沢は倒木だらけです。

     ガイドブックに拠りますと、水量の少ないナメ状の沢を歩いて行くとなっているのでありますが、小沢でも水量が多く、とても歩ける状態では有りませんで、巻き道迂回の連続でありました。
    何度も沢と登山道が交差し、その度に塩梅の良さそうな、徒渉しやすそうな場所を探して渡るのでありますが、この時点で、オボコンベはハイキング程度の山では無い、と認識を新たにした次第であります。
    本日は御日柄が悪く、全行程が泥濘や濡れ落ち葉、濡れ岩で滑りやすかったと言う事も有りますが、徒渉にしても巻き道にしても、それなりに道を見極めて行く能力が必要であり、何度も立ち止まって次はどう行く、と考えながら歩かざるを得ませんでした。
    とは言いましても、標高が低いので、難所のレベルは高くても危険度は意外と低いのでありますが。

    雑木林の向こうに岩峰が見えて参りました

     さて、沢沿いから外れて稜線の登りに掛かりますと、どう言う訳か吹雪模様の風が東側から吹き込んで来るのであります・・・吹雪模様ですから、相場としては北西だと思うのでありますが。
    尾根に入ってからの登りは正真正銘の急登でありまして、一部の場所は蟻の戸渡りで、これが標高595メートルの山ですかぁ?状態であります。
    とにかく、濡れて滑ると言う事を割り引いても、登り難い急登でして、幸いにして程良い感覚で手に出来る立ち木を掴みながら上り詰めて行く訳です。
    しかし、ここでも標高が低いと言う事はそれなりに楽、と言う事でありまして、急登では有っても嫌に成る程長く続く訳では無く、すぐに終わるのでありますが・・・。

    山頂手前のマンモス岩 マッターホルンか槍の穂先か?

     ふうふう言いながら、木や笹竹を掴み、引っ張りながら登り切ると、馬の背になり一息入れられます、が、これも山が小さいのですぐに終わります。
    両側が切り立った、いかにも稜線ですよ、と言う感じの高度感たっぷりの痩せ尾根を行くと前方に、槍ヶ岳か、マッターホルンか、と言う感じの岩峰が現れます。
    ガイドブックに拠れば、マンモス岩と呼ばれているらしく、うーん、ちょっとイメージ違うよなぁ、などと思いつつ進むと、左側に絶壁が現れます。
    僅か595メートルの標高とは思えない高度感を伴って、スッパリと切れ落ちた岩場で、登山靴のサイドエッジ2センチを岩に掛け、3点支持を保ち、ホールドは人差し指が僅かに効いているか、と言う感じで岩場をトラバースする場面に出会します。
    が、しかし、自信の無い人は岩の下を巻いて通過する、普通の道が有りますのでそちらが宜しいようであります・・・いや、この道も高度感は凄いんですよ。
    マンモス岩から山頂まではわずかな距離でありますが、全面的に岩山の様相であります。
    しつこいようですが、595メートルの標高にしておくにはとっても惜しい、ホントーに素晴らしい山でありまして、いつも杖ついて山に登っている爺婆は腰を抜かすかもしれません・・・それ程高度感があり、岩峰を感じさせる山なのであります・・・褒め過ぎかなぁ?

    マンモス岩の先の岩峰です・・・凄い岩山に見えませんか?

    たこおやじが、山頂で気取っております・・・後ろ絶壁です

     さて、何だかんだ言いましても小さな山ですから、登り始めて1時間15分で山頂に届いてしまいました。
    尖り山の山頂らしくとても狭く、本日の隠れた目的、お楽しみでありました、山頂で鍋焼きうどんを喰う、は、あまりの強風と寒さで中断であります。
    で、記念写真を数枚、シャカシャカと撮りまして、たぶんこっちの方で良かったのかな、と言う、看板に拠ると尾根コースなる方へと下り始めました。
    登って来るときは南向きに進んでいましたので、下りは北向きが良いと思うんでありますが、なんだか方向は定まり無し、と言う感じですが、まあ、小さな山だから、間違っていたらまた登ってくれば良い、程度に考えてレッゴーであります。
    下り始めましてから、何やら、雪まじりの強風の中に人間の嬌声のような物が聞こえる気がしたのでありますが、雪女が出るにはまだ早かんべよぉ、と、思ったのでありますが、確かに聞こえます。
    すると、尾根の下の方に色とりどりのヤッケが多数蠢いているのが見えたのでありまして・・・ああ、3台分の車はひとグループか、と、納得であります。
    登りの尾根も急登でしたが、下りはそれにも増して凄いもんであります・・・真っ逆さまに落ちてデザイアー、であります・・・嘘。
    しかし、鎖とトラ模様のロープが無ければ相当にヤバイ場所でありまして、慎重に降りなければ危ない場所で有りました。
    さて、鎖もロープも終わったんでありますが、その先は相変わらずの急下降なのであります・・・予算が無かったんでありましょうか、中途半端な長さです。
    そこで先行のグループ約10名に追いつきましたが、どーも下降に難儀しているようで、蟻の戸渡りにアリの行列状態でありました。
    自分もおっさんになって分ったのですが、年齢に因る平衡感覚の衰えや、身体の堅さなどで、岩場の登降はシルバー世代には厳しいモノが有ります。
    ゆっくり、慎重すぎる位が丁度良いのでありまして、私は上で待つ覚悟で下りました。
    すると、最後尾のベッピンの比較的若い女性が、下の方に「追いついた人が居ますから、先に行ってもらいまーす」と言ってくれまして、パスさせて頂く事に。
    オマケに、安全策を設けてザイルなど張ってありまして、んじゃーザイルお借りして、ゴチになります、とご挨拶してスルスルっと。
    緊張の岩場の下降が終わると、名前が尾根コースですからのんびりした緩く下る尾根を行く訳であります。
    ところどころ踏み跡が不明瞭で、しかも測量で歩いたらしい踏み跡が登山道とは違う方に有ったりして、ちょっと考える所も有りましたが、概ねなんて事の無い楽な下りを小1時間で本砂金川の徒渉点に出ました。

    小型のUFOか?山にもヒトデが居るのか?・・・星の欠片か?

     さて、出発点より1キロ弱下流に出る事になっていたと記憶しておりましたが、いざ辿り着いてみると、何処を見ても徒渉なんてやさしい状態では有りません。
    川幅と言い、水量、水流、どれを取っても立派な渡河であります・・・徒渉と渡河は意味違うよね?
    私は本日、手持ちの中では一番高級なゴアテックス防水の靴を履いている訳でありますが、ここでの出番は登山靴では無く、長靴が必要になる訳であります。
    そんな訳で私は、何処かに塩梅良い徒渉点は無いものかと、上流にに昇ってみたのでありますが、どこも立派な渓流でありまして、ダメであります。
    防水の優秀な登山靴は、雨と雪の道を歩いて来ても未だにドライ状態な訳であります・・・ここでグッチャにするのは嫌だなぁ、と言う事で、んじゃぁ裸足だな、と思い、水に手をつけてみると、こりゃぁ参ったと言う冷たさでありました。
    河原をあっちこっちウロウロしたのでありますが、最初の橋までは遡る事は出来ませんで、しゃぁないなぁ・・・で、意を決してジャブジャブでありました。
    まあ、渡ってしまえばなんと言う事も無い訳で、ただ歩く度に靴の中でグチョッ・グチョッと音がするだけなのでありますが・・・気持ちワルゥ。

    この川を渡るのには長靴が必要だと思うのでありますが・・・

     さて、駐車場まで約10分程歩きまして、さらっと着替えて、山頂で喰いっぱぐった鍋焼きうどんタイムと相成った次第でありますが、鍋焼きのアルミの鍋がリュックの中で変形してヒッ潰れておりまして、水が漏る訳であります。
    うひゃぁー・・・鍋焼きお終いかよぉ、と思ったのでありますが、こんな事も有ろうかと、小さなコッヘルを持っておりまして、鍋焼きは無事美味しく頂きました。

     山高きが故に尊からず・・・オボコンベ山は手軽に、登山で必要な様々なスキルを養う事が出来る素晴らしい山で有りました・・・ビックリです。

     


     この話 完


    まあ、適当に書いてますんで、間違いが有ったらゴメン・・・?


    ご意見ご感想は 承っておりませんが・・・


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