ファーゴ




服部弘一郎
E-mail: hattori@in.aix.or.jp
http://pweb.in.aix.or.jp/~hattori

『ファーゴ』は狙いがミエミエのところが鼻に付くんですよ。確かに上手いんだ けど、彼らは自分たちの上手さという枠の範囲内だけで、今回『ファーゴ』とい う映画を作っているでしょ。冒険がないんだよな。コーエン映画のタッチを突き 崩すような、新しい何かが何もない。
僕はコーエン兄弟の作品を、『ブラッド・シンプル』以外全部観ているんですが、 今回の映画にはちょっとがっかりでした。前作『未来は今』の方が、素材と格闘 してますよ。『ファーゴ』と180度反対のファンタジーですけど、すごく面白 く観ることができた。
僕はコーエン兄弟の映画に対して、ファンタジックな何かを求めているのかもし れませんね。『赤ちゃん泥棒』にも『ミラーズ・クロッシング』にも『バートン ・フィンク』にも、もちろん『未来は今』にも、印象に残るファンタジックなシー ンってのが幾つかありました。『ファーゴ』にそれは皆無です。そこがコーエン 兄弟の映画としては意外なんだけど、コーエン兄弟が日常をきちんと描けるなん てことは前からわかっていたことだから、そこに新しさはないんです。
コーエン兄弟の映画は常に芝居も演出も一級品だし、その面に関して言うことは ありません。ただ、そうした映画の中から、コーエン兄弟が何を観客に伝えよう としているのか、それが『ファーゴ』の場合は不明確でした。僕から見ると、ど うも自分たちのテクニックが見せたいだけのような気がしてしまう。
「追い詰められた人間の滑稽さ」なんてものは、『赤ちゃん泥棒』で既に描かれ ていますし、『ミラーズ・クロッシング』も『バートン・フィンク』も同じよう なテーマを扱ってましたからね……。

パンちゃん(★★★★★)
殺人事件にも日常はある。その日常を「妊婦」の時間の流れ(食事は必ずきちんと食べる。走らないetc.)といった視点から、しっかりと描いている。犯人の日常も、きわめてゆったりしている。その細部の時間の乱れがないところが、とてもおもしろい。 もう少し長い批評が批評欄にあります。
Haruhiko Ishii(10月9日)
ishii@binah.cc.brandeis.edu
僕は「ファーゴ」はブラックコメディとして笑いながら見ました。
登場人物たちの行動は当人にとっては深刻なのに凄く滑稽です。
それから英語の訛がめちゃくちゃおかしい。ストーリーも演出も隙が無い傑作だと思います。
確かに服部さんの言うようにコーエン兄弟が何を伝えようとしているかは不明瞭かもしれませんが僕はエンターテイメントとして楽しみました。
僕は「バートンフィンク」は今一つユーモアに欠けていて好きになれませんでしたが、「ファーゴ」は文句無く面白かったです。


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