道楽者の成り行き
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1.じょにーは演奏しなかった

2月16日 ヴィーン 

2月16日晴れ

昼過ぎにヴィーンに着く、タクシーでホテル・マリオットに向かう。マリオットのコンシェルジェにチケットが届いているか尋ねると知らないと言う。ともかく、ドブリンガーとザッヒャーに向かう。

ドブリンガーでWant Listをみせたが、すべて無いとの回答であった。仕方が無いのでプロコフィエフのバレエ曲「鋼鉄の歩み」(Boosy & Hawks)のみ購入、急ぎ足で国立劇場そばのザッヒャーに行くも途中のEMIショップでCDを物色、殆ど持っている、聞いたことがあるものばかりで話にならなかった。ザッヒャーでは家族用、会社用のザッハ・トルテを購入。デーメルの物は日本橋高島屋で購入できるが、ザッヒャーのは確か日本では買えなかったと記憶している。

再びホテルに戻りコンシェルジェにチケットが届いていないか確認、来ていないという。仕方が無いのでホテルからエージェントに電話をすると10日には届けたという。再度、強行にコンシェルジェに尋ねるとようやく書類の山の底から探し当てたのであった。一流のホテルと名乗っているがサービスはこの程度のものである、ドレスデンのヒルトンやベルリンのイクセルシオールとは雲泥の差である。

午後3時過ぎから楽友協会にてブーレーズ&ヴィーンpo.の有料ゲネプロが始まった。実は、着くまで普通のコンサートだとばかりに思っていたので、普段着のヴィーンpo.に面食らい、プログラムを読んでようやく納得。まもなくどこにでもいるおじさん風の正直さえない服を来たブーレーズはニコニコしながら登場、客席にも愛想笑いと手を振っておもむろに指揮を開始。ちょっと拍子抜け。因みに私の席は中央通路に面した1階の横の席1列目。演奏を見るにも聞くにもいい席であるが、こうした機会でないと確保できなかっただろう。
1曲目はバルトークの「四つのスケッチ」。まず、全曲通して演奏。正直響きがぼやけてしまい、客数を制限していて余計にこのホールは響くので、全くピンとこなかった。ブーレーズが楽譜をめくりながら次々を指示を出しては再度演奏させているのだが、いかんせん遠くて聞こえづらい、もっとも聞こえたところでドイツ語なので分かるとは思えないが。

2曲目目はヴェーベルンの五つの管弦楽曲。これもまず全曲通して演奏。その後、やたら滅多ら細かく指示を出していた、ビオラはこう弾けとか、グロッケンシュピールは最後の音が伸びすぎないように抱きつけとか。そして、全曲をもう一度演奏させた。一日2度もこの曲をナマで聞けるとは幸せである。因みに、私の耳でも二度目は確かに響きが整えられて、明晰になったのは分かった。

ここまで約1時間半たち、休憩。VPOの話題の女性奏者(ハーピスト)はここで退場。結構美人だった。

3曲目はドビュッシーの「遊戯」、正直いい演奏かどうか判らなかった。

4曲目は期待のストラヴィンスキー「3楽章の交響曲」。ベルリンpo.との演奏と比較すると、なによりも荒っぽく勢いに満ちた演奏であった。細部は塗り込められてしまい、響きは整えられておらず、もっともその分迫力と推進力は感じられたけれども。通しで演奏が終わるとこの日最大の拍手であった。すると、ブーレーズはにっこり笑ってさよならをしたのであった。おいおい修正しなくていいのか?実演ならともかく、録音だったら絶対にOKしない演奏会が終わった。終わってみると午後6時近くになっていた。

直ぐに、ヴィーン名物「ヴィーナー・シュニッツェル」を食べてから、私は懲りないのだ、国立劇場に向かう。演目はブリテンの歌劇「ビリー・バッド」4幕版である。席は1階の10列の左から5番目の席。
昼間にブーレーズにしごかれた?後での演奏の人もいたのか、私的には当初あまりブリテンっぽい響きがしていないなあと
覚めて観ていたが、演奏が進むに連れて結局引き込まれてしまった。ヴィアー役のNiel Shicoffの出来は、演技も含めて苦悩し、後悔する艦長の心の動きをヒタヒタと伝えてとても良かったと思う一方、ビリー役のスコウフスについては、歌が時々かき消されたり、声がかすれたりしたほか、演技も、演出のせいでもあるが、ただの能天気なお馬鹿さん過ぎるように見えてしまい、正直感心しなかった。とはいえ、光と影を使ったの演出は、常套的かもしれないが、幕間ごとのビリーとクラッガートの対立を視覚的に見せるストップ・モーションとも相俟って実に効果的だった。

満足してホテルに帰り寝る。

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