第100話「落鉄」


あれぇ、困ったな。
ボクは思わず頭を抱えた。
あ、いや、頭に手を持っていくことはできなんだけどね。
っていうか、そもそも手はないんだけど。
ああ、そんなこと考えている場合じゃないな。
今は「れーす」を走っているんだ。
ど、どうしよー。

ら、落鉄しちゃったかな。
ゲンちゃんが、ボクの背中でバランスを取りながらつぶやいた。
スタートしたすぐ後に、となりの子がよろけてぶつかってきた拍子に、
ボクのお靴、「ていてつ」が脱げちゃったんだ。

うん、「ていてつ」とれちゃったみたい。大変だ。
は、はだしはつらいね。
で、でも、無くなっちゃったものは、しょ、しょうがないね。
と、とりあえず、一旦、お、落ち着こうか。
ゲンちゃんって頼りない感じなんだけど、こういう時って、すごく頼もしいんだよね。

と、とれちゃったのは、み、右の後ろの脚かな?
うん、そう。
あ、脚は少し滑る、か、感じかな?
そうだね、うん。ちょっとだけね。
お、落ち着いたかな。
あ、うん。本当だ、もう全然大丈夫だよ。

でも、まただいぶ後ろのほうになっちゃったね。
ちょっと追いかけたほうがいいかな?
い、いや、このまま、じ、じっとしていよう。
変にじたばたしても、む、無駄に脚を、つ、つかうだけだからね。
こ、ここぞという時まで、ち、力をためておこう。
あ、この間のセキトごうみたいに、最後にみんなをぶっちぎるんだね。
まかせて。
あ、い、いや、わ、悪いけど、オラ君は、せ、セキト号ほど強くないから、そ、そこまでは。。。
ゲンちゃん、しれっと結構ひどいこと言ってるぞ。
で、でも、よ、よく出遅れちゃうから、い、いつも通りってとこかな。
うーん、やっぱりひどいこと言ってる。




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