ねえ、真矢ちゃん。
真矢ちゃんはオラ君のことが好き?
鍋井さんが真矢ちゃんに向かって首を傾げた。
夏の昼下がり、外では「せみ」がじわじわうるさく鳴いている。
あの音、ボクちょっと苦手だな。
なんだかせわしなくて、そわそわしちゃうよ。
あれ?話がそれちゃったね。
ええと、なんだっけ。
そうそう、今日は珍しく坂石のおいちゃんと真矢ちゃんが、高木さんのことろに来ているんだ。
たまたまそこに鍋井さんも「しゅざい」にやって来た。
最近の真矢ちゃんは、鍋井さんと一緒にいても大丈夫になった。
相変わらずもじもじはしてるけど、隠れちゃったりはしなくなった。
真矢ちゃんは鍋井さんのほうを見ると、こくり、と頷いた。
そう、他のお馬さんたちはどう?
例えば、そうね、このスカイクルー君は好き?
鍋井さんは唐突にスカイクルー兄さんの方を向いた。
真矢ちゃんはちょっと首をかしげて、また、こくり、と頷いた。
な、ななな、なんでぇ、急に。
て、照れるじゃねぇか。
急に話を振られた兄さんがあたふたした。
そうなんだ、お馬さんは好きなのね。
鍋井さんはそんな兄さんには構わず話を続ける。
それじゃあ、お馬さんに乗ってみたいとか思わない?
それを聞いて、真矢ちゃんはちょっとびっくりしたような顔になった。
あら、お馬さんに乗ることができるの?って顔をしているわね。
お馬さんに乗るって言っても、元司さん達みたいに競馬をするわけじゃないわよ。
乗馬って言ってね、ちょっと練習すれば、人を乗せるように訓練したお馬さんに乗ることができるのよ。
最初はひき馬に乗るって言う手もあるわねぇ。
そう言うと鍋井さんは真矢ちゃんににっこりと笑いかけた。
あら、ちょっと興味があるような顔をしているじゃない?
今度お父さんに頼んでみたら?
真矢ちゃんはちょっと上気したような顔になってボクを見ていた。