第110話「グランプリ」


話はちょっと前に戻る。
ボクがまだ「ぼくじょー」に帰っている頃の話だ。
メリーポピーお姉ちゃんとスカイクルー兄さんが、また同じ「れーす」で一緒に走ったんだ。
「たからづかきねん」っていう「じーわん」だ。
お姉ちゃんは去年3着だったけど、今年はそれほど人気ではなかったらしい。

今年はあまり調子が上がらないのか、成績はいまいちだからな。
あんちゃんがそんなことを言っていた。
ま、でも怪我なく元気が一番だ。
ポピーはどこも悪いところがなさそうだし、順調にレースにつかえているから、
生産者冥利に尽きるな。
とかなんか難しいことも言ってたな。

逆に兄さんの方は最近調子がよかったこともあって、そこそこ人気だったらしい。
オラと一緒のスカイクルー号は近走全部勝ち負けに絡んでいるし、
調子良さそうだなぁ。
馬体もびかびかで絶好調って感じだ。
これは結構いいところまで行きそうだぞ。
あんちゃんは「てれび」を見ながらしきりにうなずいていた。

でも、ポピーも今日はいい感じで歩いているわよ。
おっかちゃんも「てれび」を見ながらそう言った。
そうだなぁ、毛づやがいまいちだから見栄えはそれほどでもないけど、
今日は脚の運びはよく見えるな、うん。
おっちゃんがおっかちゃんに相槌を打った。

ボクにはよくわかんない。
でもふたりとも頑張ってくれればいいなぁ、って思ってた。
結果はお姉ちゃんが3着。
兄さんが4着だった。
「ごーる」の近くはおっちゃんとあんちゃんが大騒ぎだった。
おっかちゃんはいつものように手を合わせて目をつぶっていた。

上位4頭の最後の叩き合いはしびれたなぁ。
あんちゃんがしばらくしてほうっと息をついて言った。
鼻差の大接戦だ。見ごたえあったぞ。
おっちゃんがにっかり笑った。
ポピー頑張ったわねぇ。
おっかちゃんもにこにこしてた。

最後は交わして3着に上がったと思っただけどなぁ。
そこから姉ちゃんに差し返されちまった。
やっぱ根性あるなぁ、あの姉ちゃん。
「きゅうしゃ」に帰った後、兄さんがそんなことを言っていた。




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