ボクは次の「れーす」に向けて、「れんしゅう」を頑張っている。
一人で走ることが多いけど、たまに他の仔と一緒に「かけっこ」をしたりするんだ。
ちょっと楽しい。
うーん、かけっこじゃないんだけど、ってもういいか、かけっこでも。
高木さんが苦笑いしている。
なんで苦笑いなんだろう。
うん、ちょっと調子は落ち気味だったけど、だいぶ戻って来たみたいだね。
これならそろそろ次のレースを具体的に考えはじめてもいいかな。
何度か頷きながら高木さんがにっこりする。
ただ、こいつの調子の良さはあてにならねぇところがありやすからね。
その横で大井さんが首をすくめる。
まあ、体に悪いところがないことだけは保証できますよ。
そうだね、最近は走っている時、とっても気分がいいよ。
「れんしゅう」が終わってボクは「きゅうしゃ」に帰った。
大井さんはボクを「あらいば」に連れて行った。
大井さんが体を洗ってくれている間、ボクはいい気持ちになって来て、
ふんふんと鼻歌を歌いだした。
お前ぇ、調子に乗って来てるんじゃねぇだろうな?
大井さんがじろりとボクを見る。
ち、ちち、違うよ。
気持ちがいいだけだよ。
けっ、冗談だよ。
大井さんが笑いながらボクの体を、ぺし、と叩く。
もう、大井さんの冗談は、冗談に聞こえないんだよなぁ。
それから数日後のことだ、高木さんがボクの「ばぼー」にやって来て言った。
オラ君、次のレースを決めたよ。
高木さんの顔がちょっと微妙だ。
そのレースなんだけど、どうやらオーガナイト君も出走を予定しているようだねぇ。
え?そうするとボク、お兄ちゃんと一緒に走ることになるのか。
楽しみなような、そうじゃないような。
うーん、ちょっと複雑な感じだぞ。