第113話「見栄え」


やあ、オラ、久しぶりだな。
オーガナイトお兄ちゃんは、奇しくもボクの隣の「わく」に入った。
だから「ぱどっく」でボクの前を歩いているよ。
たまにくいっと頭をボクの方に向けて、にっと笑いかける。

お前ぇの兄ちゃん、調子良さそうだな。
毛づやもびかびかだし、体も絞れてる。
皮膚も薄くて、小柄だけど筋肉もすごい盛り上がりだな。
大井さんが感心したような声を上げる。
それに比べると、チビ助、お前ぇも調子はいいはずなんだが、なんか見劣りするよな。

な。大井さん、何気なく失礼なこと言っているぞ。
でも、まあしょうがないかな。
確かにお兄ちゃんは、なんか、すごいって感じがするもんな。
くそー。

いや、お前ぇもいい見栄えだぜ。
調子がいいのが表に出てる。
ただ、あの兄ちゃんと比べると、って話だ。
ありゃぁ他と比べても抜けてるな。
あとは。。。
そう言いながら大井さんはちらりとうしろの方に目をやった。
人気はねぇが、あの10番の馬が、目立たねぇながらいい仕上がりだ。
このレースの一番の強敵は、お前ぇの兄ちゃんとあの馬だな。
ま、お前ぇはお前ぇの走りを頑張るこった。
そう言うと大井さんは、ぺんぺんとボクの首を叩いた。

お、オラ君、今日は、見るからに、ち、調子良さそうだね。
ゲンちゃんが来て、ボクにまたがりながら言った。
うわ、ま、前のオーガナイト号も、す、すごい仕上がりだね。
で、でも、あの10番の馬が、い、一番手強そうかな。
ゲンちゃんがぼそぼそとつぶやいた。
ま、まあ、そんなことよりも、ぼ、ぼく達は、自分の走りに、し、集中だ。
お、オラ君、頑張ろうね。
ゲンちゃん、大井さんと同じことを言っている。




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