いよいよスタートの時間が迫ってきた。
「ぼうし」をかぶって、ぴしっとした恰好をしたおじさんが、赤い旗を振った。
一頭、また一頭とみんなが「げーと」の方にひかれて入っていく。
と、突然、わっと叫び声が聞こえて、ざわっとざわめきが走った。
見ると「げーと」の前で急に立ち上がって、「じょっきー」の人を振り落した仔がいた。
その「じょっきー」はすぐにまたその仔にまたがって、「げーと」の方に行くんだけど、
すぐ前まで行くとまた立ち止まって立ち上がろうとする。
「げーと」に入るのが嫌みたいだな。
その仔がなかなか「げーと」に入らないので、先に「げーと」に入って待っていた仔たちが、
一旦外に出された。
その仔はようやく入った「げーと」の中でもじたじたしている。
そ、外枠発走に、な、なりそうだね。
ゲンちゃんがつぶやいた。
「そとわくはっそう」ってなぁに?
げ、ゲートで暴れたりする、う、馬を、い、一番外側のゲートに、い、入れることだね。
そう言うとゲンちゃんはクスリと笑った。
す、スタート前にそんなこと気にするなんて、お、オラ君落ち着いてるね。
その仔は、その「そとわくはっそう」っていうのになった。
そこには素直に入って、「げーと」の中でもおとなしくしている。
最初のところは何か気に入らなかったのかな?
かなり時間がかかったけど、いよいよ「れーす」だ。
頑張るぞぉ。
がしゃん。
「げーと」が開くと、さっき暴れていた仔が、ぽんっと一番に飛び出した。
うわ、抜群のスタートだな。
そしてすいすいと気持ちよさそうに先頭を走っている。
そのちょっと後を10番の仔が追う。
ボクはちょうどまんなか位を走っている。
お兄ちゃんの姿は見えない。
多分、ボクより後ろを走っているんだ。
「よんこーなー」を回って、「さいごのちょくせん」に出た。
ボクにはまだ元気が残っている。
お、オラ君、い、行くよ。
ゲンちゃんがボクに合図を送る。
よーし、最後だ、がんばるぞー。