オラ君、元気ぃ〜。
からからとした声が「きゅうしゃ」の中に響いた。
この声は鍋井さんだな。
メリーポピーちゃんすごいわねぇ、海外挑戦、正式に決まったらしいわよ。
へぇ〜、そうなんだぁ。すごいなぁ。
あら、すごいとか言っていながら、イマイチぴんとしていないような顔をしているわね。
うん、あんまりよくわかんない。すごいなぁ、とは思うけどね。
まあ、そりゃそうよね。
でも、あんちゃんの「はないき」はとんでもないことになっているんだろうなぁ、ってことはわかるよ。
それを聞くと、鍋井さんはくすくすと笑いだした。
わかるわぁ。目に浮かぶようね。
あれ、鍋井さんあんちゃんのこと知ってるの?
ボクが首をかしげると、鍋井さんはうなずいた。
そりゃあそうよぉ。
オラ君の生まれ故郷ですもの、何度か取材させてもらってるわ。
まあ、オラ君じゃ取材費が出ないから、メリーポピーちゃんの生産牧場ってことで取材してるんだけどね。
そう言うと鍋井さんはペロリと舌を出した。
あははは。
ボクは思わず笑っちゃったけど、もしかしてボク失礼なこと言われてるのかな?
その時だ。
「きゅうしゃ」がざわっとした感じになって、あわただしい「けはい」が立ち込めた。
あら、どうしたのかしらね。
鍋井さんが眉をひそめて首を傾げた。
大井さんが血相を変えて駆けていくのが見える。
ただごとじゃないわね。
鍋井さんの顔が曇る。
遠くで誰かの叫び声が聞こえた。
スカイクルーが落馬した!
この声が聞こえた途端、鍋井さんの顔色がさっと変わったのが分かった。