第120話「既視感」


スカイクルー兄さんがいなくなった「きゅうしゃ」はなんか変な感じだ。
火が消えたような感じっていうのかな?
ボクの隣の「ばぼー」でなんやかんや話しかけてきてくれてたもんな、兄さん。

そういえば、オラ君はスカイクルー君がいないのは初めてになるのか。
彼は比較的コンスタントに使っていて、休養の時も在厩していたことが多かったしねぇ。
高木さんがボクを見ながら笑った。

ああ、そうだ。
ボクが「きゅうしゃ」にいる時は、いつも隣の「ばぼー」に兄さんがいたんだ。
なんだかそれが当たり前だって思っていたけど、そうじゃなかったんだな。
もしかしたら、当たり前のことなんてないのかなあ。

ううん、オラ君、柄にもなく哲学的なことを言うねぇ。
高木さんが感心したような顔でボクを見る。
むむ、なんとなくボク失礼なことを言われた気がするぞ。
「てつがくてき」って言うのがなんだかよくわからないけど。
ああ、ごめんごめん、柄にもなくってのは口が過ぎたねぇ。
馬鹿にするつもりじゃぁなかったんだけどね。
微妙に難しい顔をするボクを見て、ぽりぽりと高木さんが頭をかく。
珍しくちょっと困った顔をする高木さんを見ていると、なんだかおかしくなってきた。
ぷぷ。

でもまたすぐにあの変な感じがよみがえる。
ああ、この感じ、前にもあったような気がするなぁ。
ボクはちょっと考えた。
そうだ、メリーポピーお姉ちゃんが「ぼくじょう」を出て行った時と、
なんとなく似た感じだな。
あの時とは何となく違う感じはするけど、そっくりなところもあるな。
そうか、メリーポピー君もオラ君の面倒をよく見ていたんだろうねぇ。
高木さんがいつもの顔になった。

そんなある日、一頭の仔が兄さんがいた「ばぼー」、つまりはボクの隣だ、にやって来た。




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