今度転厩でうちの厩舎に来ることになったグランツール君だ。
しばらくはオラ君の隣だからよろしくね。
高木さんがボクに笑いかける。
ボク、オラ。よろしくね。
そう挨拶するボクを気にする風でもなく、その仔はぼーっとした顔をして
あさっての方を向いている。
あれ?ボクの声聞こえてないのかな?
ああ、ごめぇ〜ん、よろしくねぇ。
聞いてなかったわけじゃないんだよぉ。
あそこに見える飼葉、おいしそうだなぁ、って思ってさぁ。
グランツール君って仔は、もっさりとした感じでボクの方を向いて、
にぃっと笑った。
グランツール君はオラ君と同い年だよ。
仲良くしてあげてね。
そう話す高木さんに構わず、ツール君はまたあさっての方を向く。
そんなことよりさぁ、お腹すいたなぁ。
ご飯にぃ、しようよぉ。
あははは、飼葉の時間はもうちょっと先だよ。
いやぁ、しかし君は聞きしに勝る食いしん坊さんだねぇ。
高木さんはちょっとあきれたような顔で苦笑いしてた。
ツール君はボクから見てもぼーっとした感じだけど、
見た目はすごくかっこいいんだ。
背もおっきいし、「きんにく」ももりもりっとしていて、
それでいてシュッとしてるんだ。
でもご飯を食べている時以外は、いっつもぼーっとした顔をしている。
けっ、お前ぇにぼーっとしてるって言われちゃあおしめぇだな。
そんな風に毒づいていた大井さんも、
しばらくツール君の世話をするうちに、
お前ぇの言うことももっともだな、チビ助。
こつぁほんとに筋金入りでぼーっとしてやがる。
いやぁ、逆に大したタマだな。
そんな風にあきれたように感心する始末だった。
そんなある日、ボクはツール君と「ちょうきょう」を一緒にすることになった。