第123話「性格」


うーん、やっぱり、併せ馬にならなかったねぇ。
高木さんもゲンちゃんと同じようなことを言った。

さー、調教終わったよぉ、早くご飯に、しようよぉ。
グランツール君はぼーっとした顔のまま、ちょっと嬉しそうな声でそう言った。
高木さんは苦笑いだ。
あ、相変わらず、け、稽古駆け、し、しないですね、グランツール君。
そうだねぇ。
高木さんとゲンちゃんが顔を見合わせている。

そういえば、さっきツール君の横に並んだ時、寒気がしたんだけど、
あれって何だったんだろう?
ボクがそう独り言を言うと、
お、オラ君感じたかい?
と高木さんがにっこりとした。
グランツール君はこう見えて、レースでは並ばれたら絶対抜かせないっていう、
すごい勝負根性を見せる馬なんだよ。
並ばれてからが強いっていう感じかねぇ。

こう見えてっていうのは、失礼、だなぁ。
ツール君がぼーっとしたまま不満の声を上げる。
本番にぃ、強い、って、言って欲しいなぁ。

あはは、ごめんごめん。
高木さんが頭をかく。
並ばれた時に一瞬、メラ、って来た感じだったけど、一瞬だったねぇ。
今度はちょっとため息だ。
ぼ、ぼくも一瞬ゾクッと、し、しました。
ほ、本気出すのかな?って、お、思いましたけど。
ゲンちゃんが後を引き取る。

なんで、かなぁ。
レースだと、なぜかぁ、負けるもんか、って、思うんだよ、ねぇ。
頑張るとぉ、おいしいご飯がぁ、もらえるからかなぁ。
ツール君が首をかしげる。
調教で頑張っても、もらえる飼葉は同じだけどねぇ。
高木さんの苦笑いは続く。
性格なのかねぇ。
まあ、でも併せた方が調教にはなるようだね。




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