グランツール君はこの前「れーす」で走ったんだ。
え?結果はどうだったかって?
えーとね、それは「いわぬがはな」ってやつだったみたいだよ。
ボクがどうだったの?って聞いた時に、大井さんにそう言われたんだ。
どういう意味なんだろうね。
それはぁ、さっぱりだったって、ことだねぇ。
ツール君がまるで他人事のように口を開いた。
いつものようにご飯のバケツに頭を突っ込んで、口をもぐもぐさせながらだ。
ゲートを出る時にぃ、ちょっともたついちゃって、ねぇ。
出遅れ、ちゃったんだぁ。
結局ぅ、そのまま後ろの方にいてぇ、ゴールしちゃったんだよぉ。
さっぱり、見せ場ぁ、なしってやつだねぇ。
まったく、他人事みてぇな口叩きやがって。
お前ぇ、あれだろ、ゲートの中で飼葉のことでも考えてやがったんだろ。
「ばぼー」の掃除にやって来た大井さんが、あきれたような声を上げた。
あれぇ、よくわかったねぇ。
けっ、本当かよ。
大井さんが首を振った。
それはそうと、次はお前ぇの番だぜ、チビ助。
相変わらず調子はいいんだ、頑張ってくれよ。
そうなんだ、ボクの次の「れーす」がもうすぐ先なんだ。
だから今は「さいしゅうちょうせい」って奴を頑張っているんだ。
すごく調子が良くて、走るのがとっても楽しい。
ご飯もすごくおいしいよ。
問題は、あいつだな。
大井さんがちょっと顔をしかめた。
弱虫の野郎が、なんでか知らんが絶不調だ。
柄にもなく力が入って、乗り方がぎこちねぇ。
怪我でもしてるんじゃねぇか?まったく。
大井さんは大きなため息をついた。