オーガ兄様は勝ったのね、さすがね。
オーガお兄ちゃんのデビュー戦以来、メリーポピーお姉ちゃんはボクの顔を見るたびに、
ふふん、と鼻を鳴らして得意げに笑う。
別にお姉ちゃんが勝った訳じゃないのに、なぜか自慢げなんだ。
あら、だって次はあたしの番てことじゃない。
オーガお兄ちゃんとのかけっこで負けたことがないから、当然だって顔してる。
ポピー、お前は「にゅうきゅう」が先だろ。
あんちゃんがお姉ちゃんの体を洗いながら、その背中をぺしりと叩いた。
あたしももうすぐ「にゅうきゅう」なんでしょ。負けないわ。
あんちゃんは何か言いたそうな顔をしていたけど、そうだな頑張れ、って言って笑った。
毎年たくさんの仲間たちがデビューするけど、勝てるのはそのほんの「ひとにぎり」なんだって。
「ひとにぎり」って何?
ほんのちょっぴりってことよ。
メリーフローラ小母ちゃんが教えてくれた。
ほら、あたしだって勝ってないじゃない、おほほほほ。「れーす」で勝つって大変なことなのよ。
あら、そんなこと知ってるわ。でもあたしは勝つわよ。
ボクと小母ちゃんが話している横に、いつの間にかお姉ちゃんがやって来た。
それで、
と言いかけてから口をつぐんで、チラッとサイキョウ小父ちゃんを窺ってから、
小父様のように「だーびー」に出るわ、
とボクらだけに聞こえる声で言った。
あら、あなた、大きく出たわね。出るだけでも大変なのに。
小母ちゃんはそう言うと、夢は大きく持ったほうがいいわ、って笑った。
まあ、あなたはあたしと同じで、勝てなくても多分「はんしょく」に上がれるから、あたしは気が楽よ。
小母ちゃんはそう言うと、また、おほほほ、って笑う。
「はんしょく」って何?
子供を生むお仕事のことよ、お姉ちゃんが自慢げに教えてくれた。
ふーん、そういえば。。。
ボクは、ふいっと不思議に思ったことを口にした。
あのね、「れーす」に勝てないで引退すると、どうなるの?