第133話「転結」


ああ、せっかく真矢ちゃん、見に来てくれていたのに、
いいとこ見せられなかったなぁ。
夕日を見ながら、ボクはちょっとがっかりした気分になった。
ま、真矢ちゃんに、い、いいとこ、見せられなかったね。
ゲンちゃんがボクが思っていることとおんなじことを言った。

いんや。
それを聞いて大井さんがかぶりを振った。
そんなこたぁねぇ。
誰が見ても致命的な不利を受けた中から、最後まで頑張って追い上げたんだ。
十分、いいところを見せられたと思うぜ。

わわわ、憎まれ口なしで普通に褒められちゃった。
大井さんも自分で柄にもないと思っているのか、ぽりぽりと頭をかきながらちょっと微妙な顔をしている。
うん、僕も十分にいい競馬を見せられたと思うよ。
競馬は思うようにいかない方が多いしね、その中でどう最善を尽くすかが大事だよ。
真矢ちゃんにもそれは伝わったんじゃないかなぁ。
ま、勝てれば一番いいんだけどね。
高木さんがにっこりと笑いながらボクの首をぽんと叩いた。

後で坂石のおいちゃんに聞いた話だと、真矢ちゃんはボクの「れーす」を見た後、
うれしそうににっこりと笑っていたらしい。
そうか、いいとこ見せられてたのか。
良かった、喜んでくれていたんだな。
よーし、ボクもっと頑張らないとな。

球節に若干ですけど腫れがありますねぇ、ちょっと熱もあります。
大事ではないですが、少し運動は控えた方がいいでしょうね。
「おいしゃさん」が高木さんにそう言っている。
ボクはしばらくお休みすることになっちゃった。
ありゃりゃ。




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