話はちょっと前にさかのぼる。
去年の「ねんまつ」のちょっと前のことだ。
そう「ありまきねん」を控えていた頃だ。
スカイクルー兄さんが「ありまきねん」を走って「いんたい」することが決まって、
まわりにいつもとちょっと違う空気が流れていた。
うまく言えないけど、みんななんだかいつもと違う感じがするね〜。
ボクがそう言うと、大井さんがちょっとしんみりとした口調で言った。
スカイの野郎の引退レースが近いからな。
最後はいい走りで終わってほしいってもんだ。
口には出さねぇが、いつも以上にみんな仕上げに力が入ってるんだろうよ。
おいらもそうだけどな。
まあ、力の入れ方に強弱があっちゃあ、プロとしちゃあ失格かもしれねぇがよ。
しょうがねぇや、人間にゃあ情ってもんがあらぁな。
ふ〜ん、よくわかんないや。
でも、大井さんが言いたいことは、なんとなく伝わってくる。
ねえ、「いんたい」するってどんな気持ちなの?
そう聞くと、スカイ兄さんは笑った。
お前、「いんたい」の意味、よくわかってないだろ。
まあいいや。
そうさなぁ、寂しいというか、ほっとしたというか、いろんな気持ちが入り混じって、
一言じゃあ言えないような気持さぁな。
ふ〜ん。
ああ、ただ、心残りはあるな。
お前の姉ちゃんともう一度走りたかったなぁ。
そう、メリーポピーお姉ちゃんは「じゃぱんかっぷ」っていう「れーす」を走って、
そのままお休みに入ったんだ。
だから「ありまきねん」には出てこない。
兄さんは「じゃぱんかっぷ」は走らなかったんだ。
結局一度も先着できなかったけど、姉ちゃんと走ったレースはとても楽しかったぜ。
兄さんはそう言うとニッと笑った。
最後のレースだ、頑張らねぇとな。