第136話「去る者」


スカイクルー兄さんは「ありまきねん」で4着だった。
その「ありまきねん」は4頭が「しゃしんはんてい」になるほどの大接戦。
兄さんももしかしたら勝っているかも、っていうくらいきわどい「しょうぶ」だったんだって。
兄さんすごいや。
結構頑張ったんだな。

せめて馬券には絡みたかったなぁ。
「れーす」後、兄さんはそうぼやいていたらしい。
大井さんも隣で同じことを言っていて、お互いに顔を見合わせていたんだって。
なんだかおかしいや、ぷぷ。

最後にレースで出し切れて楽しかったぜ。
「きゅうしゃ」を出ていくとき、兄さんはボクに向かってそう言いながら、ニッと笑った。
怪我してやめるわけじゃねぇ、最後まで走り切って終われたんだ、
おいらは幸せもんだよ。
しみじみした口調でそう言うと、またボクの方を向いてニッと笑った。
お前もやめる日まで頑張れよ。
うん、ボク頑張るよ。
あと、お前には最後まで楽しんでいて欲しいもんだなあ。
兄さんが最後にそう独り言のようにつぶやいていたのが、妙に頭に残っている。

兄さんがいなくなったあとの「きゅうしゃ」は、やっぱりちょっと寂しい感じがした。
そうだなあ、メリーポピーお姉ちゃんが「ぼくじょう」からいなくなった時と、おんなじかな。
ボク、どっちにもかわいがってもらってたんだなぁ、っていなくなってからよくわかった。
お別れって言うのは寂しいものなんだね。
ボクよくわかったよ。
でもそれにも「なれる」んだね。
そうでもなきゃ、やってらんねえだろ。
大井さんがそう言ってたけど、そういうものかな。
不思議だね。




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