別れがあれば、出会いもあるんだよ。
高木さんがそんなことを言っていた。
今日は新しい仔が「にゅうきゅう」してくるんだ。
ぶるる。
あ、化け物の音がした。
「ばうんしゃ」がやって来たんだ。
と、言うことは、新しい仔が「とうちゃく」したのかな。
ご名答。
高木さんがにっこりと笑いながらやって来た。
「きゅうしゃ」の外で大井さんの声がしている。
やがて一頭の仔を連れて「きゅうしゃ」に入ってきた。
ほっそりとして、ちょっと背が高い女の子だ。
マリアサンディー君、3歳だからオラ君の二つ下だ、これからよろしくね。
高木さんがボクに向かって言った。
よろしくねっ!
サンディーちゃんがちょっと高い声でそう言った。
うん、よろしく。
サンディーちゃんは物珍しそうにあたりをきょろきょろしている。
これが話に聞いていたトレセンの厩舎ってやつなのね〜、すっごーい。
ちょっとうきうきしたような口調だ。
ね〜、あたしって、いつデビューするのぉ。
もう楽しみぃ。
げ、元気な仔だな、ちょっと調子狂うぞ。
高木さんは苦笑しながら口を開いた。
まだまだ先だよ。
君はなかなか身が入らなくて、その上脚元がもやもやしてて入厩が遅れたんだ。
これからじっくり体を作らないとねえ。
ねえ、もやもやってなあに?
ボクが首をかしげると、サンディーちゃんがぷっと頬を膨らませた。
あっ、ずっる〜い、それ、あたしが聞こうと思ったのにぃ。
お前ぇは、なんとなくなぁなぁですませていることをいちいち聞いてきやがるな。
まったく、そう言うところが嫌らしいぜ。
そのうえこの娘っ子まで同じことを聞こうとしているなんて、なんてぇこった。
ええと、なんて説明すりゃぁいいんかな。
大井さんが毒づきながら首をかしげた。
そうだねぇ、う〜ん、怪我とか病気とかそういうはっきりした不調じゃないけど、
万全ではない、っていうことかなぁ。
高木さんもちょっと困った顔をしながら首をかしげる。
ふーん、なんとなくわかったようなわからないような、中途半端な気分だ。