第139話「女王様」


ああ、おいらもそんな感じがするぜ。
大井さんと話している時のことだ。
マリアサンディーちゃんは「だーと」向きだって高木さんが話していたことをふと口にすると、
大井さんがうなずいた。

へえー、なんでそんな感じがするの?
ボクは不思議に思った。
へっ、なんでって言われても困っちまわぁな。
なんてぇ言うのかよ、見た感じとか歩き方とか、なんとなく雰囲気で
そんな気配が伝わってくるのよ。
うまく言えねぇな。

よくわかんないよ。
ボクが首をかしげると、大井さんは肩をすくめた。
そりゃあ、おいらにだってよくわからねぇんだから、そうだろうよ。
ヤマカンって言うんか、格好よく言やぁ長年の感っていうやつかもしんねぇが、
理屈じゃねぇんだろうな。
ふ〜ん、そんなもんなのかな。
ま、そろそろ調教を始めるそうだから、じきにわかってくるだろうさ。

この子は物が違いますね。
サンディーちゃんから降りながら、早さんはそう言った。
たまたま「きゅうしゃ」に用事で来ていた早さんが、
「ちょうきょう」の用意をしているサンディーちゃんを見たんだって。
そうしたら、「ちょうきょう」に乗ってみたい、ってことになったらしい。

体もできてなくて、競走馬としてはまだまだですけど、乗り味は抜群ですよ。
確かにダート向きっぽいですけど、芝でもいいとこまで行けそうですね。
そしてにっこり笑って言った。
僕、デビュー戦に乗りたいです。
今から立候補します。

個人的には期待してたけど、それほどかい?
高木さんが目を丸くしながら聞いた。
僕はそう思います。
早さんが頷いた。
そうですねぇ、多分、女王様になりますよ。




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