オラ君痩せちゃいましたぁ?
鍋井さんの声に、大井さんが渋い顔で頷いた。
見ての通りよ、元気はいいし、食欲もいつもと変わらねぇ、稽古も順調だ、
けどなんでか知らねぇが、飼葉が身につかねぇ。
ただでさえ、小せえのに、ガレちまっちゃあ、競馬になんねぇや。
実際、調教の時計もいつもより良くなって来ねえと来やがる。
せっかくこいつ向きの番組があるってぇのに、このままじゃ予定を変えなくちゃあなんねぇや。
え〜、でもボク元気だよ?
元気がいいのだけが救いだがよ、そもそもお前ぇはいつでも元気だろうがよ。
うん、それは確かにそうだな。
オラ君から元気を取っちゃったら、なぁんにも残らないですよぉ。
鍋井さんが失礼なことを言いながらからから笑う。
まあ、元気だけが取り柄って言っちゃぁ、取り柄か。
大井さんも失礼だな。
あ、でも、血統は折り紙付きですよぉ。
ああ、そうだったな。
こいつを見てると、ついそいつを忘れちまわぁ。
鍋井さんにつられて、珍しく大井さんがけらけら笑った。
なんだか、いつの間にかいいコンビになっちゃってるぞ、このふたり。
むーん。
いずれにせよ、原因がわからねぇんじゃあ、手の打ちようがねぇや。
おいらはこいつの世話を頑張るしかねぇやな。
大井さんが肩をすくめたところで、高木さんがやって来た。
あ、先生、オラ君の次走どうするんですか。
そうだねぇ。
鍋井さんの問いに、高木さんは首をひねった。
とりあえずは予定通りだねぇ。
体調自体は問題ないしね。
ただ、これ以上ガレるようなら取りやめかなぁ。
これほどオラ君におあつらえ向きな番組はそうそうないからもったいないけどね。
そして、ボクの首をポンポン叩きながらニコッと笑った。
悩みは尽きないねぇ。