第143話「空中散歩」


いよいよ「しゅっそう」の時間になった。
さ、さあ、き、今日も、走るのを、た、楽しんでね。
も、目標は、楽しく、は、走ることだよ。
そう言うと、ゲンちゃんはボクの首筋をやさしくなでてくれた。
よーし、ボク、今日も頑張るもんね。

い、良いスタートだよ、お、オラ君。
「げーと」が開いた瞬間、ボクはタイミングよく、ぽーんと「げーと」を飛び出すことができたんだ。
あはは、最初から褒められるといい気分だな。
ボクはいい気分のまま走り出した。
先頭を走るのも気持ちいいな、そんなことを考えた時、
他の仔が2頭ボクの横を勢いよく走り抜けて行った。

最初からあんなにシャカリキに走って疲れないのかなぁ。
ボクが思わずつぶやくと、ゲンちゃんがこたえた。
あ、あの仔たちは、に、逃げたい口だからね。
あ、脚を、つ、使ってでも、ハナを切りたいん、だ、だよ。

ふ〜ん、大変だね。
ボクがそう言うと、ゲンちゃんはくすくす笑った。
お、落ち着いて、い、いるね。
つられて、い、一緒に行っちゃわないか、し、心配したけど。
そう言うゲンちゃんも落ち着いているな。

うん、確かに、一緒になって走っていって、あははー、ってのも楽しそうだけど。
でも、今日は、このペースで走っているのが気持ちいいな。
前の仔2頭はちょっと先を走っているし、他の仔たちはボクの後ろを、
これまたちょっと離れたところを走っている。
ちょうどボクのまわりだけ誰もいなくて、ひとりだけで走っているみたいだ。
これはこれで、なんか気持ちいいぞ。うふふ。
そう、まるでお空をひとりで飛び回っているようだ。
今までにない心地よさだな。
うわー、楽し〜。

いやあ、レース中のオラ君、とっても気持ちよさそうだったねぇ。
こっちも思わず顔がほころんじゃったよ。
「れーす」が終わってみんなのところに帰った時、高木さんがそう言って笑っていた。
結果、ボクは2着だったんだ。




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