第144話「移り気姫」


あったかい日が多くなってきた。
もう寒い朝の日はない。
すっかり「はる」だね。
うふふ。

あ、そうそう、いよいよ、マリアサンディーちゃんが「でびゅー」することになったんだよ。
ええ〜、あたし、もうデビューするのぉ。
ちょっと早くなぁい〜?
「でびゅー」が決まったって話を高木さんから聞いた時、
サンディーちゃんはそう言ってぷっと頬を膨らませた。
あれ?「にゅうきゅう」初日に、「でびゅー」が楽しみみたいなこと言ってなかったっけ?
ボクが首をかしげると、サンディーちゃんはますます頬を膨らませた。
え〜、そうだけどぉ、あたし、全然早く走れないじゃなぁ〜い。
こんなんじゃ、みんなに笑われちゃう〜。
もー、そうなったら、さいあくぅ。
まあ、まあ、とりあえず今回はレースに慣れることが目的だからね。
君の場合は、レースを使うことでピリッとしそうな気がするんだよねぇ。
そう言ってサンディーちゃんをなだめていた高木さんが、なんかちょっと面白かったな。

たからっ、たからっ。
「きゅうしゃ」の入口から、はずむようなリズムの足音が聞こえてきた。
サンディーちゃんが「れんしゅう」から帰って来たんだな。
なんだかすごくご機嫌みたいだぞ。
サンディーちゃんって、足音でその時の気分が分かるんだ。
(最近それに気が付いたボクってすごいでしょ、えへん。)

案の定、サンディーちゃんは、んふふ〜、って鼻歌まじりに「ばぼー」に入ってきた。
ご機嫌だね。
ボクがそう声をかけると、サンディーちゃんは、ぱあーっと顔を輝かせた。
あ、わっかるぅ?
そうなのぉ、今日ね、あたしとーっても早く走れたのよ。
すっごいでしょぉ。
早くデビュー戦にならないかしら〜。

な、なんだか、えらい変わりようだね。
目を白黒させるボクをしり目に、近くにいる大井さんを見つけて、
サンディーちゃんは声を張り上げた。
あ、大井さーん、ご飯まだぁ。
あたしもう、おなかぺっこぺこ〜。
い、いつも通りだな、サンディーちゃん。




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