だんだん寒くなってきて、「ゆき」も何回かちらちら降ったりしてきた。
この前の「たいふう」の「ひがい」からある程度回復するまで、何ヶ月もかかったんだって。
今でもまだ「ひがい」が残っているところがあるらしい。
でも、ボクには関係ないから、毎日楽しく遊んでいた。
そうこうするうちにメリーポピーお姉ちゃんの「にゅうきゅう」が近づいてきた。
相変わらずお姉ちゃんはボクに向かって得意げに鼻を鳴らしている。
見ていなさい、他の仔達になんて絶対に負けないんだから。
うん、ボク一生懸命応援するよ。
そうよ、しっかり応援するのよ。
そう言うとお姉ちゃんはボクの首を軽く噛んで笑った。
ある日、あのとんでもない化け物がまたやって来た。馬運車だ。
ぶるぶるって大きな音を立ててやって来た。
いよいよお姉ちゃんが「にゅうきゅう」するんだ。
後ろの大きなお口を開けたって、もうボク驚かないぞ。
お姉ちゃんがあんちゃんに曳かれて「ばぼー」から出てきた。
いよいよ「にゅうきゅう」なんだね。
そうよ、たくさん勝ってくるわね。
そう言うとお姉ちゃんは、ふふん、と笑って耳をぴくぴくってさせた。
そうしてボクをじっと見ると、かぷってボクの首に噛み付いた。
いたたたた。
いつもより力が強かったからボクは思わず悲鳴をあげた。
もう、お姉ちゃん痛いじゃないか。
文句を言うボクを尻目に、元気でいるのよ、とだけ言い置いて、お姉ちゃんは僕に背中を向けた。
その目から涙がポロリとこぼれていたのを見たボクは、なんだかとっても悲しい気持ちになった。
そして、ボクの目からもぼろぼろと涙があふれてきて止まらなかった。