第18話「寂寥」


毎日寒い日が続く。ぶるぶる。
時々ボクの体から白いふわんとしたものが出る。ちょっと「くも」みたいだけど、もっと薄い感じだな。
「ゆげ」ってみんな言ってる。息を吐くともっと濃いのが出てくる。
なんだかおもしろい。うふふ。
はっはっ。もわもわ。うふふ。

「ふゆ」は長く続くんだって。
でも、「ふゆ」なのに「ゆき」が降らない所もあるらしい。
それにそんなに寒くないんだって。
どんな感じか考えてみたけれど、ぜんぜん想像つかないや。

そんなある日、久しぶりに坂石のおいちゃん達がやって来た。
この時期にいらっしゃるのは珍しいですね。
おっちゃんがおいちゃん達を出迎えて言った。
最近仕事のほうが忙しくて、ご無沙汰でしたからね。
坂石のおいちゃんは傍らの真矢ちゃんの頭をそっとなでた。
真矢がオラ君に会えなくて寂しそうにしているもんで。
おいちゃんの言葉を聞くと、おっちゃんはちょっと驚いたような顔をして、真矢ちゃんを見た。
そして、寂しそうに?ってつぶやいてから、おいちゃんの顔を見返して、
それは良かったですね、ってにっこり笑った。
ありがとうございます。坂石のおいちゃんもにっこりと笑い返した。

寂しくて良かった?ボクはちんぷんかんぷんだった。
だって、ボクはお姉ちゃんが「にゅうきゅう」した時、寂しくてとっても悲しかったよ。
全然良かったって気持ちじゃなかったけどな。
ボクが不思議そうな顔をしているのを見て、おいちゃんは僕の耳にそっと口を近づけてささやいた。

真矢は寂しいって気持ちも無くしていたんだよ。ありがとう、オラ君。




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