小首をかしげた真矢ちゃんを見て、ボクは不思議だった疑問を口にした。
「ふゆ」になったら「ゆき」は降るのが普通じゃないの?
でも、「ゆき」が降らないところがある、ってあんちゃんがこの前言ってたんだ。
そんなのおかしいよね。
ボクずっと考えたけど、どんな感じか全然わからなかったよ。
真矢ちゃんはちょっと考えこんでいたと思ったら、急に立ち上がってパタパタと「おもや」のほうへ駆けていった。
あら、真矢ちゃんどうしたのかしら?
小母ちゃんは、真矢ちゃんが駆けていった方に頭を向けた。
どうしたのかな?
ボクが小母ちゃんと顔を見合わせていると、真矢ちゃんがパタパタと「おもや」から戻ってきた。
大きな四角い、ご本みたいなものを両手に抱えている。
そしてボクの前にぺたんと座ると、そのご本みたいなものを広げ始めた。
あら、「あるばむ」ね。
小母ちゃんがそれを見て言った。
「あるばむ」?
ええ、「しゃしん」をしまっておくものよ。
「しゃしん」は知ってる。
この前、お兄ちゃんのレースを見た時に、おっちゃんに教えてもらった。
色々なものをあっという間に書き写して、いつまでも残しておくことができるんだ。
「しゃしん」の「にんげん」や馬はじっと動かないから、疲れないのかな?って思ったけど、
別に「しゃしん」の中にいるわけじゃないんだってさ。
真矢ちゃんは「あるばむ」をぱらぱらとめくっていたけど、あるところでぴたりと手を止めて、ボクのほうに「あるばむ」を向けた。
そこにある「しゃしん」はなんだかすごくきらきらしたお花だとかがたくさんあって、
お空みたいな色をした「うみ」と大きな帽子をかぶった真矢ちゃんが写っていた。
それはどこなんだい?
いつの間にか小父ちゃんも顔を覗かせていた。
真矢ちゃんはちょっと困った顔をして、またパタパタと「おもや」のほうへ駆けていった。
そして今度は坂石のおいちゃんを連れて戻ってきた。
おいちゃんの話ではそこは「おきなわ」っていうところで、「ふゆ」でも「こーと」はいらないって言ってた。
へーえ。