第22話「放牧」


長い「ふゆ」がもうすぐ終わるらしい。
あいかわらず時々「ゆき」が降るけれど、積もってもすぐに消えちゃうようになった。
「ほーぼくじょー」の「ゆき」はそうでもないけど、道に積もった「ゆき」は気がつくと消えている。
あんなに白かったのに、とっても不思議だ。あの「ゆき」はどこに行っちゃうんだろう?

実はちょっと前からオーガお兄ちゃんが帰ってきている。
お兄ちゃんはデビューの「れーす」を勝った後、すぐに次の「れーす」も勝って
上のクラスに上がったんだけど、そこからなかなか勝てないらしい。
いいところまで行くんだけど、「かちみにおそい」んだって。
「きれるあし」を「いっしゅん」しか使えないから、「てんかいにちゅうもんがつく」らしい。

え?何を言っているかわからないって?
ボクに聞かれても困るな、あんちゃんが言っている事を真似しているだけで、
ボクも意味はわかんないんだ、えへへ。

まあ、瞬発力があってすごい加速力があるんだけど、ちょっとの間しか加速できないから、
加速するタイミングが難しいってことだな。
サイキョウ小父ちゃんが教えてくれた。
いいところまで行くのに勝てないって、なんかむずむずするね。
おっちゃんなんて、お兄ちゃんのレースを見るたびに、変な声でうーあーうーあー言ってるよ。

悪かったな、善戦マンで。
いつの間にかお兄ちゃんが隣に来ていて、ボクの体をついとつついた。
その脚には布みたいなものが巻かれている。
お兄ちゃんは脚を痛めて、お休みするために帰ってきているんだ。




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