第23話「萌黄」


ようやく「はる」になった。
みんなが待っていた「はる」だ。

ただ、その「はる」はとっても短いらしい。
やってきたかと思うと、せっせと「しごと」をして、あっという間に駆け抜けて行っちゃうんだって。
ちょっとしかないからこそ大事なんだってあんちゃんが言ってた。
ふーん、よくわかんないや。

でも、確かに「はる」は楽しいな。ボク大好きだよ。
じっとしていた草や木が、いっせいに動き始める感じだ。
いろんな生き物の元気があたりにあふれてくるみたい。
なんかうきうきするよね。

まわりに見える景色もガラッと変わる。
白黒だった景色が、急に色鮮やかになるんだ。目がちかちかしちゃうね。
でも、ボク達ってあまりたくさんの色はわかんないんだけどね。えへへ。

あ、そうそう、忘れてけど、ボクだいぶ前に1歳になったんだ。
ちょっと「おとな」になったんだよ。えへん。
ボク達は「おしょうがつ」になると年をとるんだって。

正確に言うと、年が明けると年をとる、だな。
サイキョウ小父ちゃんが口を挟む。
そうなんだね、ボク覚えたよ。「おとな」だからね。

お前はまだまだ子供だろ。
掃除をするために「きゅうしゃ」に入ってきたあんちゃんが、そう言うとボクの頭をぺしりと叩いた。ちぇっ。

お休みするために帰ってきていたオーガお兄ちゃんは、ちょっと前に「とれーにんぐせんたー」に帰っていった。
痛めていた脚もすっかり良くなったらしい。
たいした事がなさそうで良かったな。
お兄ちゃんが帰っていく日の、おっちゃんとあんちゃんのほっとした顔が妙に頭に残っている。
お兄ちゃん、そろそろ頑張って勝たないとね。




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