その日は朝から変な天気だった。
どんよりしていたかと思うと、急にお日様がかっと照りつけたり。
びゅーびゅー強い風が吹いたり。
なんか嫌だなぁ。むむむん。
嫌だといえば、しばらく前からおっちゃん、おっかちゃん、あんちゃんが代わりばんこに、
毎晩「ばぼー」に泊り込んでいるんだ。
しかも一晩中寝ないで起きているんだよ。
なんか落ち着かなくて嫌だな。
フローラの出産が近いんだ、我慢してやれ。
サイキョウ小父ちゃんがボクの頭をこつんとつついた。
なんで出産が近いと「ばぼー」に一晩中いるの?
仔馬がいつ生まれるかわからないからな。出産て大変なんだぞ。
「にんげん」が手伝ってくれないと、ちゃんと出産できない時もあるんだ。
そこまで言うと小父ちゃんは急に黙り込んだ。
そして、ボクのほうをちらりと見てバツの悪そうな顔になって、「ばぼー」の奥に引っ込んじゃった。
多分、ボクに気を使ったんだ。ボクのお母さんが、ボクを生んだことが原因で死んじゃったから。
ああ、そうか。だからあんちゃん達は、余計心配なんだな。
そう考えると、ボクまでなんだかとても心配になってきちゃった。
小母ちゃん大丈夫かな?
その夜、ボクは大きな叫び声と、がたがたっと「ばぼー」に走りこんでくる足音で目が覚めた。
みんなが小母ちゃんの「ばぼー」に集まっている。
小母ちゃんの出産が始まったんだ。